煉瓦造
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イギリス積みの煉瓦の壁(アルチザンスクエア

煉瓦(れんが)は、粘土頁岩を型に入れ、で焼き固めて、あるいは圧縮して作られる建築材料。通常は赤茶色で直方体をしている。焼成レンガは原料中の鉄分量および焼成時の酸素量によって色が変わる。日本においては一般的な製法を用いた場合赤褐色となる。耐火レンガは炉材にも使われる。

日本において煉瓦建築の技術は、近代化とともに導入された[1]が、構造材として用いる場合は地震に弱いという難点があり、関東大震災では多くの被害を出したことから、煉瓦建築は小規模な建物を除いて激減した。ただし、建材には煉瓦風のタイルも様々な種類が存在し、仕上げ材としては現在でも多く用いられる。これは洋風の雰囲気を出すため、木造や鉄筋コンクリート造の表面に張り付けるものである。
目次

1 煉瓦の歴史

2 積み方(組積法)

3 寸法・規格

4 煉瓦と環境問題

5 日干し煉瓦

6 煉瓦建築

6.1 世界

6.2 日本

6.2.1 煉瓦造の代表的建造物

6.2.2 ホフマン窯

6.2.3 煉瓦造風建造物


6.3 ギャラリー

6.4 ギャラリー(国産黎明期の代表的煉瓦の刻印)


7 主な生産地

8 出典・脚注

9 関連項目

10 外部リンク

煉瓦の歴史 レンガを使った大聖堂(聖ソフィア大聖堂

煉瓦が建築材料として使用されるようになったのはメソポタミア文明の時代からである。チグリス川ユーフラテス川にわたる広大な範囲で煉瓦建築が発展していった。紀元前4000年からの約1000年間は、乾燥させただけの日干し煉瓦が使用されていた。紀元前3000年頃からは、焼成煉瓦が使用され始め、この頃には大型の建造物の外壁の仕上げに焼成煉瓦が使われている。内部の壁には一番厚い日干し煉瓦を使用し、焼成煉瓦はそれを保護するために使われていた。紀元前1600年から1000年の間には金型を使って表面に様々な細工を施した焼成煉瓦も見られるようになる。紀元前700年頃から湿式法を用いて焼成されたレンガで多くのモニュメントや重要な作品が作られ始めた。その時代にはまだ全ての工程が手作業で行われていたにもかかわらず、広範囲にわたる地域で多数使用されており、その生産量は驚くほど多い。

エジプトにおける煉瓦を使用した建築物は、メソポタミア文明より後のものであり、エジプトから煉瓦技術が地中海沿岸やインド、中国に伝わっていったと考えられている。最も古いピラミッドの中には、内部の壁に乾燥煉瓦を使い、外側を石で仕上げてあるものもある。また、その頃エジプトで使われていた煉瓦の寸法は、現在使用されているものに大変近い。

ヨーロッパでは数世紀間、煉瓦の生産技術(採砂、準加工、乾燥及び焼成方法)はローマより取り入れられてきた。古代ローマでは、建物の品質を確保するためにレンガごとに製造業者の刻印を押すことが義務づけられており、結果的に高い品質が維持されることとなった。この刻印の制度は周辺地域に波及し、古い時代のレンガの製造地や製造業者の特定が可能となっている[2]。煉瓦建築は19世紀まではあまり変化を遂げず、乾燥はそれに適した時期だけ日干しし、焼成は野外に煉瓦を山積みにして作った釜で行われていた。

今からおよそ100年ほど前に発動機(蒸気による機械)が導入されるようになってから、煉瓦生産の技法が変わり始めた。この機械の導入によって、準加工と成形工程を機械化させることが可能になり、生産力及び工場設備(機械)の作業能率が高まった。また、この発動機をとりいれた焼成システムによって、生産が合理化され同時に熱の消費が大幅に減った。

日本で建物用煉瓦の生産が始まったのは長崎の海軍伝習所1855年安政2年)開所)で、1861年文久元年)落成の長崎鎔鉄所の建設に使われたが、現在のものより薄く、その形から「こんにゃく煉瓦」または作製者の名前から「ハルデス煉瓦」と呼ばれた[3]
積み方(組積法)

建築構造としての積み方にはフランドル積み (Flemish Bond[4])、イギリス積み (English Bond) などがある。

正面から見たときに、一つの列に長手と小口が交互に並んで見えるのがフランドル積み。一つの列は長手、その上の列は小口、その上の列は長手、と重ねてゆくのがイギリス積みである(下図・濃淡は小口と長手の区別のため便宜的につけたもの)。イギリス積みは厳密には角にあたる部分の手前にようかん (Quarter) が入るが、この部分に七五を用いて処理している場合にはオランダ積みと呼ぶこともある[5]

このほか、長手積み (Stretcher Bond) とは全ての列に長手だけが見えるように重ねる積み方で、小口積み (Header Bond) とは全ての列に小口だけが見えるように重ねる積み方である。歩道などにレンガを敷く時は、市松模様や網代模様も見られる。

表面に化粧煉瓦を置くこともあり、必ずしも躯体が煉瓦積みの構造体ではないもの(鉄筋コンクリート構造体や鉄骨ラーメン構造体など)がある。

小口積み

イギリス積み

フランドル積み

寸法・規格 日本の規格レンガの大きさ比較。“さいころ”は“半ます”より5mm短くなっている

レンガの寸法は、職人が持ちやすい大きさで慣習もしくは規格によって統一されている場合が多い。国・地域・時代によって違いがあり、たとえば現在のアメリカでは203mm(8inch) x 102mm(4inch) x 57mm(2-1/4inch)、イギリスでは215mm(8-15/32inch) x 112.5mm(4-7/16inch) x 75mm(2-15/16inch)、日本では210mm x 100mm x 60mmのものが広く使われている(日本ではJIS規格が定められるまで、様々な寸法のレンガがあった)。この寸法を標準とし、各辺を1/2、1/4、3/4などの単純な分数倍したものを組み合わせて用いる。たとえば、日本で建築用に使われているものには以下のような寸法がある(単位:mm)。

全形(210 x 100 x 60)

ようかん(210 x 50 x 60)

半ようかん(105 x 50 x 60)

半ます(105 x 100 x 60)

さいころ(100 x 100 x 60)

また、JIS(日本工業規格)には、以下のものが定められている。

普通レンガ(JIS R1250)

建築用レンガ(JIS A5213)

耐火レンガ(JIS R2204?2206、JIS R2213) … 炉材として使われる。

煉瓦と環境問題

煉瓦を焼く燃料として薪を得るために無計画な森林伐採が行われ、砂漠化を招く場合がある。インダス文明メソポタミア文明の衰亡の原因であるとも推測されており、中世ドイツなどでも森林の過剰伐採が行われた。燃料の選択肢も少なかった時代、煉瓦は環境破壊につながる建材だったのである。しかし現代では燃料も多様化しており、逆に型枠として木材を用いるコンクリート造よりも木材が節約できる。コンクリートの打ち込み型枠としてブロックを利用し、そのまま取り外さずに躯体として一体化する型枠ブロック工法も確立され、煉瓦もそのひとつとして使われることがある。
日干し煉瓦「アドベ#アドベレンガ」も参照

日干し煉瓦は、粘土を固めた後に天日乾燥させて造る煉瓦である。よく成形して乾燥させた日干し煉瓦は、見かけ以上に耐候性に優れ、普及している地域には希な規模の集中豪雨や長雨に晒されない限り、建設資材としての機能を保持し続ける。


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