焼肉ドラゴン
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焼肉ドラゴン
作者
鄭義信
日本
言語日本語
ジャンル戯曲
初出情報
初出舞台公演
刊本情報
収録『鄭義信戯曲集 たとえば野に咲く花のように/焼肉ドラゴン/パーマ屋スミレ』
出版元リトルモア
出版年月日2013年5月16日
初演情報
場所新国立劇場小劇場
初演公開日2008年4月17日
演出鄭義信・梁正雄
受賞
第16回読売演劇大賞 大賞、最優秀作品賞
第8回朝日舞台芸術賞 グランプリ
第12回鶴屋南北戯曲賞
ポータル 文学 ポータル 舞台芸術
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『焼肉ドラゴン』(やきにくドラゴン)は鄭義信の作による戯曲日本新国立劇場韓国芸術の殿堂のコラボレーション作品として日韓共同制作され、鄭と梁正雄演出により2008年に両劇場で初演された。リトルモアから2013年に刊行された『鄭義信戯曲集 たとえば野に咲く花のように/焼肉ドラゴン/パーマ屋スミレ』に収録された。高度経済成長1970年昭和45年)に時代に翻弄されつつ必死に生きる焼肉屋を営む在日コリアン一家の姿を通じて、日韓の過去、現在、未来を描く。第16回読売演劇大賞大賞および最優秀作品賞、第8回朝日舞台芸術賞グランプリ、第12回鶴屋南北戯曲賞受賞作。

2011年に日韓両国で再演され、2016年にはキャストを大幅に入れ替えて上演された。韓国での上演タイトルは『焼肉ドラゴン 龍吉さんちのホルモン屋』[1]

2018年に鄭の著により小説化、また鄭の脚本・監督により映画化され公開された[2]
執筆背景

東京新国立劇場10周年とソウル芸術の殿堂20周年を記念し、両劇場による合同公演第二弾を催す事が決まり[3][4]在日3世鄭義信は戯曲の制作を打診された[5]。韓国内で戯曲集が出版され、作品も上演されていた事などから、特に韓国側から強い要望があったという[3]

鄭はそれまでに映画血と骨』や『月はどっちに出ている』、演劇『たとえば野に咲く花のように?アンドロマケ?』などの中で在日コリアンを描いており、本作品で初めて作品のメインテーマとして在日を取り上げる事にした[6]。『GO』や『パッチギ!』などの映画が登場して在日コリアンに対する社会の理解度が高まっており、観客に関心を持ってもらう土壌があるという判断もあったという[7]。自身が日韓両国を祖国と確信できない「棄民であり、マイノリティー」だという自覚を持って制作にあたり[6]、在日は貧乏か大金持ちの両極端という先入観がある韓国で、「在日が笑って普通に暮らしていた事を観客に伝えたい」と考えていた[6]

大阪万博の開発にともなう変化を題材に決め[3]、「日本の共同体そのものが崩壊を始めた時代」と捉えていた1970年前後を作品の舞台として[6]、1年間かけて戯曲が執筆された[8]。この時代を描いて当時ヒットしていた『ALWAYS 三丁目の夕日』のアンチテーゼとする事を意識したという[6]。また「在日のコミュニティーは世代を重ねて失われつつあり、遠からず滅びるかもしれない」と考えていた事から、コミュニティーの一つの記録にもなれば、と鄭は語っている[9]

執筆に先立って万博の開発で消えていった集落なども取材し、実際に訪れた大阪国際空港横の伊丹市中村地区がモデルとなり「I空港そばのN地区」を舞台とした[10]。焼肉屋を題材にした点については「寄せ屋(くず鉄屋)、ヘップ(サンダル工場)、焼肉屋は在日コリアンの三大職業のようなもので、小さな焼肉屋を通じて彼らの一端を描ければ、と考えた」と鄭は語っている[3]姫路城の外堀の石垣にあった鄭の実家が強制撤去された体験なども作中エピソードのベースになっている[11][6]

キャスティングについては、企画が始まった直後に高秀喜(朝鮮語版)にオファーを出す事を決め、鄭自身が韓国に渡って出演を依頼している[7]。また、高と同じ劇団に所属していた朱仁英にも同時に依頼をした[7]。出演した韓国人俳優は5人中4人が有名な演劇賞を受賞しており、高い演技力のあるメンバーを集めたという[12]。通訳を介して指示を出すため通常の2倍の時間がかかり、1ヶ月半の稽古期間中はキャスト・スタッフにストレスがたまった[7]。しかし日本人への指示も韓国人に向けて全て翻訳することにより、結果として演出への理解の共有などを深めることができたという[13]

また、本作の取材過程において、九州の廃鉱になった炭坑から流れて来た労働者が数多く大阪国際空港の滑走路建設に従事していたのを発見したことが、1960年代の九州の炭坑町を舞台にした鄭の次作『パーマ屋スミレ』(2012年)の執筆に繋がっている。[14]
ストーリー

金龍吉は第二次世界大戦に従軍して左腕を失い、四・三事件で故郷の済州島を追われて来日した高英順と再婚する。龍吉は長女・静花と次女・梨花、英順は三女・美花をそれぞれ連れており、二人は国有地を不法占拠した集落で焼肉店「焼肉ドラゴン」を開業し、やがて長男の時生が生まれた[15]

作中では1969年春から物語が始まり、中学生となった時生が「僕はこんな町大嫌いだ!」と屋根の上で叫ぶ[16]。梨花は李哲夫と結婚パーティーを挙げようとしていたが、区役所の窓口で担当者と哲夫がケンカして婚姻届を提出できなかった[16]。夏になると国有地から立ち退くように一家は通知を受け、有名私立中学に通う時生はいじめにあって不登校となる[16]。哲夫が働かないこともあって梨花は立腹し、かつて付き合っていた静花の事をまだ好きなのではないかと責める。これを気にした静花は尹大樹と付き合うが哲夫はそれでも好意を捨てず、梨花も常連客の呉日白と関係を持つようになった[16]

いじめが続いて時生は失語症となり、美花は勤め先のクラブの支配人の長谷川との不倫が明らかになる[16]。冬になり静花と大樹は婚約したが、そこに哲男が現れて静花に一緒に北朝鮮帰国事業で移住する事を求め、静花はこれに応じる[16]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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