焼畑農業 (やきはたのうぎょう、英: slash-and-burn)、または単に焼畑とは、森林や草地を開墾および整地する手段として火を放ち、焼け跡を農地として施肥を行わずに農作物を育て、地力が低下したら休耕して別の土地に移動することを繰り返す農業形態を指す[1][2]。移動農業(shifting cultivation)の一種[3][4]。営農上の労力が小さく、古くから行われていた原始的な農法の1つである。農地の休耕を要し、また施肥を行わないことから生産能力は低く、現代においては廃れており、地方で伝統文化としてわずかに行われている程度となっている[5][6][7]。
日本で焼畑という場合は、先述の定義に該当しない、単なる営農上の一般廃棄物である藁や籾殻、剪定枝、雑草などの作物残渣を廃棄物として焼却処分する行為(野焼き(英: stubble burning))や、開発(農地確保)のために森林を焼き払うだけの行為を焼畑と表現するケースも多く、報道機関などでも混同されている[8][9][10][11]。「ヘイズ (気象)」および「アマゾン熱帯雨林#環境破壊」も参照
概要焼き畑を行う農民を描いた絵画。エーロ・ヤルネフェルト作
現代の農法との大きな違いは、耕耘・施肥を行わず、焼却灰および休耕中に蓄えられた地力を利用する点にある[12][13]。
焼畑にはいくつかの機能があると指摘されている。火を使うことについては
熱帯の土壌は栄養塩類の溶脱が激しく、やせて酸性のラトソルが主体のため、作物の栽培に適していない。そこで熱帯雨林に火を付けて開拓することで、灰が中和剤や肥料となり、土壌が改良される。
焼土することで、土壌の窒素組成が変化し、土壌が改良される[14]。
熱による種子や腋芽の休眠覚醒。
雑草、害虫、病原体の防除。
また休閑することによって耕作期間中の遷移途中に繁茂する強害雑草である多年生草本が死滅するので、常畑を営む場合に大きな労働コストとなる除草の手間を省くことができる。近年の研究では、このことが一次生産力の高い(雑草がはびこりやすい)湿潤熱帯において焼畑が農法として選択される有力な理由であることが示唆されている[15]。
灌漑を利用しない天水農業である。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}また、広域の山林における人間活動が、野生動物の里地への侵入を低下させる可能性も指摘されている[要出典]。
焼畑で育てる作物は様々で、地域によってはここでキャッサバ、ヤムイモ、タロイモ、料理バナナ(プランテン)などの根栽系(栄養繁殖)作物、あるいは、モロコシ、シコクビエ、トウモロコシ、陸稲などを栽培して主食とする。現在[いつ?]でも、焼畑で栽培されるのは主に自給用作物である。
熱帯の気候に適した農法で区画を決めて焼畑を行い、栽培が終わると他の区画へと移動する。焼畑農業は元の区画が十分な植生遷移を経た後に再び耕作する持続可能的なものである。集落ごと移動し新規の土地を求めることもあるが、これは農地の不足によるものというよりは他の様々な社会的理由によるものであることが示唆されている[16]。