無整流子電動機
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フロッピーディスクドライブのモータを分解した状態、右が回転子

無整流子電動機(むせいりゅうしでんどうき、英語: brushless direct current motor)は、整流子の代わりに制御・駆動用の電源回路が組み込まれた、永久磁石同期電動機と同じ構造をもつ直流電動機である。直流電動機に分類されるが、簡単に言うとDC/AC変換回路(インバータ)を付けたPMSM(すなわち交流)モータであり、直流整流子電動機とは根本的に異なる構造である。ブラシレス直流電動機、ブラシレスDCモータ、BLDCモータ、DCブラシレスモータ、電子整流式モーター(ECMモーターまたはECモーター)や同期式DCモーターとも言う。

販売促進や宣伝など一般向けに「DCモーター」と言った場合は多くの場合、無整流子電動機を指す。


目次

1 概要

1.1 ブラシ付モータとの比較

1.2 用途


2 特徴

2.1 長所

2.2 短所


3 特性

4 分類

4.1 構造による分類

4.2 駆動電流による分類

4.3 相数による分類

4.4 磁極検出による分類


5 歴史

5.1 整流子の役割

5.2 ブラシ整流子

5.3 整流子の短所

5.4 ブラシレス化


6 脚注

7 関連項目

8 外部リンク

概要
ブラシ付モータとの比較

無整流子電動機と整流子電動機との比較名称回転子固定子制御機構固定子位置検出起動速度調整正転逆転制御性摩耗部品振動電気的ノイズ効率価格
無整流子電動機永久磁石巻線転流回路必要制御必要電圧/周波数比例制御順番を逆にする良なし静かで低振動電源回路良制御回路が高価
整流子電動機巻線永久磁石または巻線整流子ブラシ不要容易電圧比例極性逆転良ブラシブラシ良安価

整流子電動機は、電圧を変えることで可変速運転ができ、小型化が可能で比較的安価である。しかし、回転子巻線に回転する整流子ブラシとで電力を供給する必要がある。ブラシは摩耗による寿命があり、大型モータではブラシの点検や交換といった保守が必要であり、小型でブラシ交換が出来ない場合は、ブラシ寿命がモータの寿命となる[1]

これに対してブラシレスDCモータでは、回転子側は磁石であり、電気を供給する必要がない。巻線回路は固定子側にあり、転流は電子回路によって行われる。電子式の閉ループ制御装置を用いて直流電流をモーターの巻線に切り替え、空間内で効果的に回転する磁界を発生させ、永久磁石のローターを追従させ回転させる。転流には回転子の磁極にあわせたタイミング検出転流が必要であり、回転角度の検出はホール素子などにより磁極の角度を検出している。転流回路のスイッチングの素子には、トランジスタFETIGBTが使用される。コントローラーは、直流電流パルスの位相と振幅を調整して、モーターの速度とトルクを制御する。この制御システムが、従来の電気モーターの多くに使用されている機械的な整流子(ブラシ)に代わるものとなる。
用途

高速、高効率で小型で大きな出力を得られ、速度(回転数)とトルクをほぼ瞬時に制御できる、保守部品がない、といった特徴から幅広い用途で使用されている。コンピュータ関係では冷却ファンフロッピーディスクHDDCD-ROM装置、プリンターなどのモータとして、家電関係では扇風機掃除機ビデオテープレコーダのヘッド用、電動工具として使用されている。大型のものでは、ダイレクトドライブタイプの洗濯機や、トヨタ・プリウスホンダ・インサイトなどのハイブリッドカー用モーター、シーメンス製の新交通システムなど、また近年はRCカーにおいてもブラシ付きモーターに変わって使用されている。最新の洗濯機では、ブラシレスDCモーターの採用により、ゴムベルトやギアボックスの代わりにダイレクトドライブ方式が採用されている。
特徴 ファンモータのモータ部拡大(4スロット、矩形波駆動) ファンモータのブラシレスDCモータ(アウターローター構造)
長所

整流子・ブラシが無く、その保守が不要で寿命が長い。

ブラシ
磨耗粉による外部への汚染がない。

接触部品がないため高速運転が可能である。

短所

電子回路を内蔵するため、周囲温度などの耐
環境性能は電子部品に左右される。

スイッチング素子のスイッチング時にノイズが発生したり、そのノイズが音となることがある。

ブラシ付直流電動機に比べると高価である。特に電流が大きい場合、スイッチング用半導体素子が高価である。

特性

電流とトルクや、電圧回転数比例関係である点など直流電動機と同じ特性を持っている。また、起動トルクが高く、速度制御も電圧変更で容易に行うことが出来る。電子回路を使用しているため、プラスとマイナスを逆に接続しても逆回転しない。マイクロコントローラーと組み合わせることにより意図的に低速域でのトルクを高めたり、用途に応じて出力特性を一定の範囲内で任意に設定する事もできる。
分類
構造による分類

回転子の形状により、以下のように分類される。
インナーローター
内側にローターがあるタイプ。惰性が小さいため、回転速度を変化させる用途(走行用モーターなど)に適する[2][3]
アウターローター
外側にローターがあるタイプ。惰性が大きいため、一定速度で回転させる用途(ディスクドライブや冷却ファンなど)に適する[2]
アキシャルギャップ
ローターとステーターが軸方向(アキシャル=同一方向)に並ぶタイプ。
駆動電流による分類
矩形波駆動方式
矩形波交流駆動に最適化された電機子巻線を使用したものである。制御回路が単純で、回転子(ロータ)回転角度の検出も磁極切り替え部の検出のみである。
正弦波駆動方式
ロータの回転に合わせて適切な正弦波波形をモータ部に供給する回路を備えたもの。矩形波駆動よりも低騒音かつ高効率にすることが可能であるが、より細かい回転角度検出が必要となる。
相数による分類


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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