無投票当選
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2017年に兵庫県伊丹市の市長選挙が無投票当選となった旨の掲示(伊丹市立伊丹小学校前)

無投票当選(むとうひょうとうせん)とは、選挙において立候補の届出者数が定数以下となった場合に、投票が行われずに候補者全員が当選する状態を指す。

英語では、競争・競合のない選挙という意味で「Uncontested election」と称するほか、「Walkover」(ウォークオーバー、日本語の「不戦勝」と同義)とも称される。
概要

日本公職選挙法では、立候補者数が定数以下である場合は投票を行わずに立候補者全員が当選となる。民間の団体の総代ないし代議員選挙や役員選挙等においては、選挙で行うと規定していてもおおむね無投票となることが通例となっている場合も多い。

一方、アメリカ合衆国では州ごとに制度の詳細が異なるものの、立候補者数が定数以下でも投票用紙に候補の選択肢が存在し、形式上は無投票とはならないことが一般的である。通常、当該投票項目に関しては集計を行わずに当選が宣言される。なお、アメリカの選挙では連邦議会議員から地域の図書館役員に至るまでの多数の選挙が一つづきの投票用紙でまとめて行われることが多いため、全ての投票項目において定数以下の立候補者しかいないことはあまりない。また、記号式投票が原則となっている投票用紙に印刷されている候補者以外の投票先を自書式投票ができる追記投票(英語版)の選択肢が設けられることもあり、その場合は別の人物が当選する可能性が残されている。

かつてのロシアでは、立候補者数が定数以下であるか否かを問わず、候補者が1人でもいれば「全ての候補者に反対」という投票項目が設けられ信任投票となる制度があったが、廃止された。

選挙を実際に行っていないため、本当に民意が反映されているといえるのか疑問視する声もある。インドネシアではスハルト1968年から1998年にかけて大統領に多選(7選)を重ねた際も、当時の国政の最高意思決定機関である国民協議会(インドネシア語:Majelis Permusyawaratan Rakyat、MPR)ではスハルトを選出する際に投票は行わず、無投票かつ満場一致拍手によって選出していた。またシンガポールでは国会の選挙において現在も無投票で決まる選挙区が多く、人民行動党によるヘゲモニー政党制を支える装置として機能している。このように、無投票は制度上は民主主義であっても実際には自由自由権市民権が制限されているような、権威主義的な非自由主義的民主主義の表れと考えられることが多い。また不正選挙ゲリマンダーの結果である場合もある。
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この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

法律

公職選挙法第100条で、以下の要件に該当したときに「投票は、行わない」すなわち無投票当選とすることを規定している。

衆議院小選挙区選出議員の選挙及び地方公共団体の長の選挙において、立候補の届出のあった候補者が一人であるとき又は一人となったとき

衆議院比例代表選出議員の選挙において、立候補の届出に係る名簿登載者の総数がその選挙において選挙すべき議員の数を超えないとき若しくは超えなくなったとき、立候補の届出をした名簿届出政党等が一であるとき若しくは一となったとき

参議院選挙区選出議員若しくは地方公共団体の議会の議員の選挙において、立候補の届出のあった候補者の総数がその選挙において選挙すべき議員の数を超えないとき若しくは超えなくなったとき

参議院比例代表選出議員の選挙において、立候補の届出に係る名簿登載者の総数がその選挙において選挙すべき議員の数を超えないとき若しくは超えなくなったとき

要件該当により無投票となった場合は選挙長が直ちにその旨を告示し、選挙会において立候補届出者(又は名簿に記載された者)をもって当選人と定める。公職選挙法第151条の2・第171条の規定により、無投票当選となった場合は、政見放送選挙公報配布は行われない。

地方自治法第84条では地方自治体におけるリコールは通常の選挙による当選の場合は選挙後1年間はリコールができないという規定があるが、地方自治法第84条但し書き規定により無投票当選の場合は当選翌日からでもリコールが可能である。

なお、衆議院議員総選挙と同時に行われる最高裁判所裁判官国民審査については最高裁判所裁判官国民審査法第25条の規定により、衆議院議員総選挙が無投票当選となっても審査対象の裁判官がいれば行うことが規定されている。
実情

無投票当選となる主な場合として、地方の県議選や市町村長選などで、現職に対する有力なライバル候補が不在という場合を中心に起こっている(まれに2007年高松市長選のように、新人候補しか出馬せず無投票となったケースもある)。また、小規模な町村においては集落ごとに事前に候補者調整が行われることにより、結果として無投票となることも多い。ある程度の得票が見込まれる新人が立候補の動きを見せても、現職が事前に立候補を抑え込んでしまう事例もある。直近の都道府県議選では、47都道府県で無投票当選が全くなかったのは2017年東京都議会議員選挙だけであった。東京都議選では伝統的に無投票当選が少なく、これまでに1951年の伊豆七島選挙区(現:島部選挙区、定数1)と1963年八王子市選挙区(定数2)、そして2021年都議選小平市選挙区(定数2)の3例しか発生していない[1]

その一方で、ライフワーク的に「無投票阻止」を叫び、神出鬼没的に出馬する政治運動家(例:辻山清、田島正止、影山次郎)が活動する地域では、無投票当選は起こらないが、極端な無風選挙が連続することとなり、有権者の士気はさほど上がらない。2023年鳥取県議会議員選挙、鳥取市選挙区では「無投票阻止」を公約に挙げた平井伸治(鳥取県知事平井伸治とは同姓同名の別人)が出馬したが、無投票阻止のための出馬であるから私に投票しないようにという本人の主張に反して当選し、鳥取市長や参議院議員を務めたことがある竹内功が1人だけ落選する結果となった。

都道府県知事選挙や衆議院・参議院の選挙区では2000年代までほぼ全ての選挙ないし選挙区に日本共産党が候補を擁立して来た経緯もあり、無投票となることはごくまれである。戦後の国政選挙では、1947年参議院通常選挙岐阜県選挙区で起こった(ただし、第1回の全員選出の選挙であるため、1位当選と2位当選で任期が6年と3年と異なり、どちらを1位候補とするかで抽選が行われ、1位が伊藤修で2位が渡辺甚吉になった)。また1951年5月21日を投票日に指定した参議院愛媛県選挙区補欠選挙で起こり、玉柳実が当選となった。衆議院選挙では戦前の1944年12月に佐賀2区の補欠選挙で起こり、保利茂が当選した例が最後であり、戦後は衆議院選挙で無投票の例はない。2009年第45回総選挙では、共産党が大幅に候補を減らして共産空白区が増える中で、与党の自由民主党を離党した渡辺喜美栃木3区で、与党が代わりの候補を擁立できない与党空白区となり、民主党など他の有力政党も軒並み擁立を見送った。しかし、初参戦の幸福実現党が候補を立てたため、戦後初の無投票当選は起こらなかった。

都道府県知事選における無投票当選は、民選となった戦後では20例[注 1][2]ある。なおこの中で滋賀県知事の武村正義と高知県知事の尾ア正直と山形県知事の吉村美栄子の3人は連続で無投票当選している。


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