無名祭祀書
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無名祭祀書(むめいさいししょ、: Unaussprechlichen Kulten、: Nameless Cults)は、クトゥルフ神話作品に登場する架空の書籍。著者は架空の人物フリードリヒ・ヴィルヘルム・フォン・ユンツト。

この魔道書はロバート・E・ハワードが創造したものであり、『夜の末裔』を初出とする[1]
名前

当初はNameless Cultsという英語題名のみであった。そこに、ドイツ語の原題をつけることを思い立ったハワード・フィリップス・ラヴクラフトオーガスト・ダーレスの助言を得て、Unaussprechlichen Kultenと命名した。また、姓だけしかなかった『無名祭祀書』の著者にファーストネームを与えたのもラヴクラフトだが、ラヴクラフトもハワードもその設定を作中で使うことはなかった[2]

これに際してNameless Cultsの直訳としてはUnnennbaren Kultenのほうが妥当であるという意見がE・ホフマン・プライスから出されたが、ラヴクラフトは語感を優先してダーレスの案を採用した[3]

「Unaussprechlichen Kulten」「Unnennbaren Kulten」どちらもドイツ語文法としては間違っている。ドイツで刊行されているクトゥルフ神話書籍ではUnaussprechliche Kulteに修正されている[4]。正しい文法は、3格ではなく1格。

無名祭祀書は一般的な邦訳題名。設定面では、1839年の初版本は黒革装丁と内容から「黒の書」とも異名される。
概要・来歴

著者は19世紀前半のドイツ人オカルティストであるフリードリヒ・ヴィルヘルム・フォン・ユンツト(Friedrich Wilhelm von Junzt, 1795年-1840年)。彼が生涯をかけて世界中を巡って見聞したオカルト研究の集大成。

ハワード設定:
ハンガリーのシュトレゴイカバール村の「黒の碑」や、ホンジュラス密林の「蟇蛙の神殿」、ブラン・マク・モーン崇拝についての記述がある。

ラヴクラフト設定:ムー大陸の邪神ガタノトーアについての記述がある[注 1]

フォン・ユンツトは出版直後に旅に出て翌年帰国した直後に、密室で怪死している。製本されなかった未発表の草稿があり、友人のアレクシス・ラドーが読んだが、ラドーは即これを焼却しカミソリで喉をかき切って自殺する。

本書には三つの版が存在するとされる。

ドイツ語の初版(無削除版・黒の書):1839年にデュッセルドルフで刊行されたクォート判(四つ折り版)の本。黒革に鉄の留め金という装丁。発行部数が少なかったこと、出版後ただちに発禁処分とされたこと、著者フォン・ユンツト怪死の噂に恐怖した購入者達が軒並み破棄したことで、残存部数は非常に少ない。

第二の版:1845年ロンドンのブライドウェル社から出版された英訳の海賊版。初版と同じく、出版されてすぐに発禁処分となっている。翻訳者不明だが誤訳が多いとされ、多くのグロテスクな木版画が収められている。初版よりは多く残存している。

第三の版:1909年ニューヨークのゴールデン・ゴブリン・プレス社(金の鬼社)から出版された英訳の削除版。削除版ということで、内容が減っている。装丁だけはゴージャスな一般書籍。

初版(黒の書)の状況が何冊か判明している。『黒の碑』と『屋根の上に』の登場人物が所持し、2冊。無名祭祀書はミスカトニック大学付属図書館にも収蔵がある。

エイボンの書」をアブドゥル・アルハザードが読み[5]、アルハザードが「アル・アジフ(ネクロノミコン)」を書き、「ネクロノミコン」をフォン・ユンツトが読み[6]、フォン・ユンツトが「無名祭祀書」を書いた、らしいことが言及されている。

1839年刊行という設定は、(1920-30年代を舞台とするクトゥルフ神話の作中時を踏まえると)禁断の書物の中では100年にも満たない新しいもの。さらに1931年に刊行されたジェームズ・チャーチワードの『失われたムー大陸』よりも遥かに先駆けてムー大陸に言及していた、という設定になっている[4]。ムー大陸のゾス三神の情報源でもある。「ロバート・E・ハワードのクトゥルフ神話」および「クトゥルーの子供たち」も参照

日本人作家の朝松健の設定では、火の邪神クトゥグアについての記述があるとされる。
登場作品

ロバート・E・ハワード夜の末裔黒の碑屋根の上に

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト永劫よりヘイゼル・ヒールドへの代作)

リン・カーター陳列室の恐怖

朝松健邪神帝国(狂気大陸、夜の子の宴)、聖ジェームズ病院

関連項目

ジャスティン・ジョフリ - ハワードが創造した詩人。1926年に21歳で死去。無名祭祀書と共に、しばしば言及される。『
黒の碑』などに登場する。

脚注[脚注の使い方]
注釈^ ラヴクラフトは他作家の設定を自作に織り込むことを頻用した。


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