無効
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無効(むこう)とは、法律行為意思表示があったものの、その有効要件を満たさないため最初から効果を生じない状態をいう。
概説

無効な法律行為とは、法律行為の外形はあるものの、そこから法律的な効果が生じないものをいう[1]
取消しとの差異

無効と類似の概念としてよく比較されるのが取消しであり、以下の点で無効と異なるとされる[2]
意思表示の必要性・主張適格者
無効は当然に効力を生じないのに対し、取消しは効力が一応生じている法律行為につき法律で認められた取消権者が取消すことによって行為時に遡って効力を失うことになる点で異なる。無効は原則として誰からでも誰に対しても主張できる[1]
時間の経過
無効は原則として何時でも主張できる[1]。無効な法律行為は時間が経過しても法律上の効果を生じることはないが、取り消すことができる法律行為は取消権が時効期間除斥期間にかかって消滅すると取り消すことができなくなる。
追認による効果
無効と取消しは追認による効果も異なる。無効な行為は追認によってもその効力を生じないが、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときには新たな行為をしたものとみなされて追認時から効力を生じることになる(民法119条)。これに対して、取り消すことができる行為は、法律で認められた追認権者が追認したときは法律行為の時から確定的に有効なものであったことになり以後は取り消すことができなくなる(民法122条)。

特定の法律行為を無効にするか取り消すことができるとするかは立法政策の問題である[3]。通常、無効とされるのは、客観的・社会的理由から個人の意思を問題にすることなく、その法律行為の内容を裁判所によって実現することを否定すべき場合である[3]

一個の法律行為が無効の要件も取消しの要件も満たすときは、原則としてどちらを主張することもできる[3]

このほか無効と類似の概念として、撤回解除解約などがあるが、それぞれの概念については各項目を参照。
無効の人的範囲の制限

無効を第三者に対しても対抗できるかどうかは無効行為の態様ごとに異なり、取引の安全を害することがあっても無効の趣旨を貫徹すべきか、第三者の取引の安全の保護を優先して第三者に対しては無効を対抗できないとするかによる[4]
無効の主張権者の制限

ローマ法では無効は裁判で宣言すれば足りると考えられていた[5]。そのためローマ法やフランス法には取消しの概念が生じず、誰からでも主張できる絶対的無効と相手方や第三者からは主張できない相対的無効が存在した[5]。一方、ドイツでは形成権の概念が発見され、絶対的無効は無効、相対的無効は取消しに整理された[5]。日本では明治時代の立法過誤により錯誤を無効と規定したため無効と取消しを区別する立法でありながら相対的無効も存在する状態になっていたが、2017年の民法改正で錯誤が取消しに改正されたことで解消された(ただし意思無能力無効については論点が残されている)[5]#絶対的無効・相対的無効・取消的無効を参照。
一部無効

無効の効果に関する理論の一つ。法律行為の内容の一部に無効原因がある時に法律行為全体が無効になるか、無効原因がある部分のみ無効になるかが問題になる。
日本法における無効.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

無効行為の態様
法律行為の無効

法律行為の一般的有効要件を満たさない場合、すなわち確定可能性の欠如(内容の不確定)、実現可能性の欠如(原始的不能)、適法性の欠如(強行法規違反)、社会的妥当性の欠如(公序良俗違反、90条)である[6]
意思表示の無効

意思表示おいて表示に対応する意思が存在しない場合、すなわち意思無能力(意思能力の不存在)、心裡留保虚偽表示である[6]。なお、2017年の民法改正により錯誤の効果が無効から取消しに変更された[7](2020年4月施行予定)。
無権代理無効

無権代理無効については本来の無効とは異なり効果不帰属として処理される[6]#確定的無効・不確定的無効の不確定的無効(未確定無効)を参照。
無効の種類
不成立無効・成立無効

法律行為が形式を欠いて成立していない場合を不成立無効(要物契約において目的物の交付がなされていない場合など)、形式を満たしてはいるが実質的要件を欠く場合を成立無効(公序良俗違反の契約)という[8]
絶対的無効・相対的無効・取消的無効

絶対的無効・相対的無効・取消的無効は無効主張の認められる者の範囲という点からの無効の分類である。

絶対的無効
法律行為の当事者間のみならず当事者以外の者にも主張できる無効。民法上の無効行為は原則として絶対的無効である(例えば、
公序良俗違反の法律行為や強行法規違反の法律行為は絶対的無効である)。

相対的無効
法律行為の当事者間のみで主張でき、当事者以外の第三者に対しては主張できない無効。第三者を保護する要請がある時は原則に修正をかけ相対的無効とする。例えば、通謀虚偽表示は善意の第三者には主張できない(94条2項)ので原則として相対的無効である。なお、「相対的無効」の概念は多義的であり[8]、後述の「取消的無効(片面的無効)」と同義に用いられることもある。

取消的無効(片面的無効)
法律行為の当事者のうち一方当事者のみが主張でき、相手方や第三者は主張できない無効。無効主張を許される一方当事者が無効を主張することで遡及的に無効となる。当事者のうち一方の当事者のみを保護する要請がある時には取消的無効とされる。取消的無効は取消しに近いものとなるが、期間制限や方法の点で両者はなお異なる[9]。なお、「相対的無効」がこの意味で用いられることもある。2017年の改正前の民法では錯誤(95条)による無効は意思表示をした者(表意者)を保護するための制度であるとして、判例は錯誤による無効主張は原則として表意者のみが主張できるものとし、例外的に第三者に債権保全の必要があり表意者自身が要素の錯誤を認めている場合にのみ第三者の無効主張は許されるものとしていた(最判昭和45年3月26日民集24巻3号151頁)。2017年の民法改正により錯誤の効果は取消しに変更されている[7](2020年4月施行予定)。
一般的無効・特殊的無効

民法総則における無効を一般的無効、民法の親族法相続法において特別に認められる無効を特殊的無効という[8]
当然無効・裁判上無効

裁判上の手続によらなくとも当然に無効とされる場合を当然無効、訴えによらなければならない場合(訴えの当事者や期間に制約がある場合を含む)を裁判上無効という[10]
確定的無効・不確定的無効

確定的無効・不確定的無効は追認など事後的に一定の事由があった場合に有効なものに転換するか否かという点からの無効の分類である。

確定的無効(確定無効)
他の要素を変更しても有効になる事はない無効のこと。公序良俗違反の法律行為は追認や他の要素を変更しても有効とはならないので確定的無効である。民法上の無効行為の原則は確定的無効である。

不確定的無効(未確定無効)
他の要素を変更すると有効となりうる無効のこと。無権代理無効は無効(本人に効果不帰属)だが、本人の追認によりその代理行為は有効となり本人に効果帰属する。この点で無権代理無効は不確定的無効である。無権代理無効のほか
他人物売買も不確定的無効に含まれる。
無効行為の基本的効果

以下に述べるのは無効行為の基本的効果である。


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