無効電力
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この項目では、一般用語について説明しています。企業全般については「電力会社」をご覧ください。

電力
electric power
量記号P
次元L2 M T−3
種類スカラー
SI単位ワット (W)
CGS単位エルグ (erg/s)
FPS単位フィート・パウンダル毎秒 (ft pdl/s)
MKS重力単位重量キログラムメートル毎秒 (kgf m/s)
FPS重力単位フィート重量ポンド毎秒 (ft lbf/s)
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電力(でんりょく、英: electric power)とは、単位時間電流がする仕事(量)のことである[1]国際単位系 (SI) においてはワット W が単位として用いられる。

なお、電力を時間ごとに積算したものは電力量 (electric energy) と呼び、電力とは区別される。つまり、電力を時間積分したものが電力量であり、量の次元としてはエネルギーに等しい。

なお、消費電力あるいは「電力系統における電力」とは、単位時間に発電機等によって発電され、送電線によって送られ(送電)、そして電気器具[注 1]によって消費される、単位時間あたりの電気エネルギーを言う[2]
概要屋根にソーラーパネルを設置して自家発電している家家庭で用いられることのある小型風力発電機(英語版)

専門用語では、「電力」とは単位時間電流がする仕事(量)のことである。単位はW (ワット) であり[1]、電圧Vの電源から電流Iが流れているとき、電力はV・Iという数式で表せる[1]。つまり電力は、電圧電流である[3](物理学概念の分類体系で言うと、仕事率 (power) に分類される)。→#定義と公式

なお、一般用語(非専門用語)では、「電力」が、電気の形で伝えられるエネルギーを指していることも多い。なお専門用語ではこのエネルギーに関しては「電力量」と呼び分けて区別している。

電力は電池(← 化学エネルギー)、発電機(← 運動エネルギー)、太陽電池(← 光エネルギー)などにより、それぞれのエネルギーから電気エネルギーに変換される。これを総称して発電と呼ぶ。

発電された電力はそのまま使うか(自家使用、または自家発電)、または電力系統に投入して遠隔地に送り、需要のあるところで使われる。電線により、発電するところと電力を消費する負荷とを、電力網を介して繋ぐだけで電力の利用ができ、また様々なエネルギー形態、例えば光エネルギー(白熱電球発光ダイオードほか)や運動エネルギー(電動機ほか)、熱エネルギー(電熱・冷暖房)そして、化学エネルギー(二次電池電気分解電気めっきほか)などなど、他のエネルギーに容易に変換できる優れた特性を持つのが、電力の大きな特徴である。
電力の蓄電

電力を貯蔵する方法は多数ある。

近年では、世界各国の政府により「脱炭素」を推進することは至上命題となっており、再生可能エネルギーである太陽光発電風力発電を増やしつつ、その日の天候による発電量の変動や、昼間と夜間の差や生じるという性質を補うために蓄電システムの活用ならびに増強が重視されている[4]。太陽光発電や風力発電と蓄電システムとを組み合わせることで、脱炭素と電力の安定供給を両立するシステムを構築することができる。その一方で電力網の運用の現場では従来の回転機による発電機でない、太陽光発電システムや系統連系用蓄電池が用いるインバータ電源が系統に増え過ぎるとブラックアウトの危険性が増すことも危惧されている[5][6]
二次電池による蓄電

二次電池を使った電力の貯蔵も小規模から大規模なものまで実用化されている。リチウムイオン二次電池を利用した家庭用や電気自動車用の小規模蓄電から、大規模なものは送配電会社の変電所、太陽光発電所や風力発電所に併設されている、チタン酸リチウム二次電池[7]ナトリウム・硫黄電池(NAS電池)またはリチウムイオン二次電池による蓄電設備に至るまで、数々のものが実用に供されている。なお日本においてはリチウムイオン蓄電池設備は消防法上の蓄電池設備の規制のほか、可燃性の電解液が法に基づく危険物(第四類 第二石油類)とされるため危険物施設としての制限を受けることがネックとなっており[8]、内閣府としても規制緩和を求めている[9]

定置型蓄電装置には電気自動車ほどの急速充放電特性は求められないため、役目を終えた電気自動車の廃棄バッテリーによる蓄電設備が普及しつつある[10]。また次世代電池として注目されている全固体電池による蓄電も検討されている。ただ送電網向けのリチウムイオン蓄電池ともなると未だに高コストであり、MITテクノロジーレビューによれば、アメリカ合衆国エネルギー省 エネルギー情報局の報告として2018年現在、資本コストは 1 kWhあたり625米ドルの数値を挙げ、2015年に比べてコストは3分の1以下となったものの、まだまだ高価である[11]としている。
揚水による蓄電(揚水蓄電)

たとえば日本では古くから、水の位置エネルギーとして電力を保存する方法が活用されている。(このシステムは本当は蓄電システムなのだが、なぜか発電のほうに焦点を当てた名称「揚水発電」と呼ばれている。)昼間の需要時には起動に数分間[注 2]あれば良いため、発電(蓄電)効率は 70 % 程度に留まるとは言え[12]、急激な需要増加に対応可能な、実用的な大規模蓄電装置である。なお日本の揚水発電は約40箇所あり、その設備容量はおよそ26 GW (2,600万キロワット)に達する[12]。1回あたり5時間発電するとして、発電量は 1回あたり130 GWh (13,0000万キロワット時)の充放電容量を持つ計算である[12]。設備利用率を17 %と仮定すると、日本全体で年間 40TWh もの蓄電量を持つことになる[12]。ただ揚水発電は発電コストが他の発電方式より高価であるため、実際の設備利用率は 3 %と低い[12]。またもう日本には揚水発電に適した地点は、もうほとんど無く、機動的に揚水発電を蓄電手段として使用するには中小規模の揚水発電所を数多く建設する必要がある[12]

科学技術振興機構が2019年に出した炭素社会実現に向けた政策立案のための提案書[12]の試算によれば、揚水発電の設備コストは48,200円/kWh(耐用40年)、発電コストは22.6円/kWh、一方で蓄電池は設備コストは11,000円/kWh(耐用10年)、発電コストは16.5円/kWhとなり[12]、設備の寿命を考え、かつ土木工事のコストダウンを図れば蓄電池と同等のコストで実現できるとしている[12]
水素による蓄電

トヨタ自動車が、様々な企業と連携して他の多くの企業と手を携え、推進しているプロジェクトである。大規模な水素システムは、『水素』という物質の形で行う電力の蓄電手法である[13][14]は、電気分解すると水素と酸素とに分解できる。逆に、「水素」という物質の形でそれをタンクなどに貯えておけば、安定したエネルギーの保存ができ、電力を必要とするときは「燃料電池」と呼ばれる、水素と酸素の反応装置を使い、貯えておいた水素と、我々の周囲にある空気中の酸素とを反応させて電力を得られる(2H2 + O2 → 2H2O + 電気エネルギー)。また水素は内燃機関などで単純に燃やしても水が生じるだけであり、水素システムはとてもクリーンだという優れた性質がある。ただ水素の難点として軽く密度が低いこと、空気と混合したときの爆発範囲が 4 - 75 % と幅広く極めて爆発しやすい(燃速も速い)問題があり[15]、このことと金属の水素脆化の問題から水素配管には他のガス配管以上に設計・施工・維持管理に係る安全性確保が必要である。さらに他の気体よりも高圧にして運搬しないとコスト的に引き合わないこと、液体水素の取り扱いが難しいことから、水素単体のまま運搬せず、アンモニアやメタンなど水素を含む化合物に変換して運搬・利用する動きもある[16]
蓄熱システム

電力の用途は、その約3分の1が冷暖房の熱源である。したがって電力をその用途である熱エネルギーにあらかじめ変換した状態で蓄えてもよい。

フィンランドの電力会社バタヤンコスキは、ポーラー・ナイト・エナジー社の特許技術に基づく大量の砂に熱を蓄える蓄熱システムの運用を2022年に開始した。再生可能エネルギーで発電した電力を、地域暖房ネットワークで使用する『熱』に変換して、砂に蓄える世界初の商用ソリューションである[17]。「砂電池」と呼ばれる蓄熱槽は、幅4メートル、高さ7メートルの大きさの断熱された鋼タンクの中に100トンの砂が入れてあり、その中央に熱交換器が埋め込まれているシンプルな構造である。タンク中央に埋め込まれた熱交換器を電力で加熱し、蓄熱槽の砂を500?600 ℃程度の高温まで加熱することで、8 MWh(公称出力100 kW)という大量の電力に相当する熱エネルギーを蓄えることを可能にした。蓄熱媒体に砂を使う理由は、砂は素材として丈夫であり、おまけに極めて安価、さらに高熱に耐えられるためである。高温で蓄熱することで、より小さな体積で多くの熱エネルギーを蓄えることを可能にした。設置費用は1 kWhあたりわずか10ユーロ(1300円)と安価である[18]。なお日本においては、一番求められる熱源が夏場の冷熱であることから、深夜電力でヒートポンプを動かして蓄熱槽に氷を貯める氷蓄熱空調装置[注 3]の設置が盛んである。このシステムは「エコアイス」の商品名で知られ、東京スカイツリー[19]や、赤坂・六本木アークヒルズ[20]など、地域冷暖房にまで蓄熱冷暖房を行う例もある。ごく小さな例では自動販売機の商品を蓄熱槽代わりに使うピークシフト自販機だけでなく、自販機自体に蓄熱槽を設け、冷暖適温の商品をより低電力で提供できるようにしたものもある[21][22]
エネルギー管理システム

日本の中小企業の、大半が契約する電力料金体系は「年間最大電力」の大きさを基準にして電力基本料金が決まる仕組み(デマンド料金制)である。このため、電力単価も電力使用量も大きな夏場・冬場のピーク需要を抑えることが、年間を通しての電力料金節減の鍵となる。このことを利用して最大電力を常時監視し、設定した契約最大電力に近づいたらアラームを鳴らし、人の手で消費電力を節減する簡易なサービス[23]から、ビルまるごと人の流れ等を監視し冷暖房を必要なところに絞ったり、ピーク時間を避けて冷暖房の電源を入れ、ピーク時は冷暖房を止めることで最大電力を抑えるビル管理システム[25]のようなスマートグリッドもある[注 4]。このようにして『節電』された電力はネガワットと呼ばれ、実質的に蓄電や発電をしたとみなせる。また時々刻々のネガワットを取引する市場での売買対象になる[26]
電力の消費
電力消費量

全世界の電力消費量は、2000年時点では13兆2380億 kW·hであったが、2010年時点では18兆704億 kW·hとなり、2015年は21兆279億 kW·h、2018年は23兆398億 kW·hであった[27](つまり右肩上がりに増加している)。
国別

電力の消費量が多い順に国を挙げると次のようになる。

2015年時点の資料では、中国アメリカ合衆国日本ロシアインドの順であった[28]。それが2021年では、中国、アメリカ合衆国、インド、日本、ロシアの順となっている[29]

一方、国民一人当たりの電力消費量の多い順に挙げると、2021年でアイスランドノルウェーバーレーンクウェートカナダの順になり、日本は19番目となる[29]。アイスランドの一人当たりの消費電力は1位であるが、地熱発電が20 %、他が水力発電と、ほぼ100 %が自然エネルギーで賄われている[30]。カナダは、湖や河川など豊富な水資源に恵まれていて電気料金が安いので一人あたりの消費量が特に多いのである[28]。一方、中国は一人当たりの電力消費量は世界平均ほどだが、国民の人数が大きいので国全体の電力消費量が大きくなっている(なお中国は急速に経済成長しているので電力不足が深刻化している)[28]

世界の消費電力ランキング(資料年不明)[29]順位1位2位3位4位5位6位7位8位9位10位
総消費電力中華人民共和国アメリカ合衆国インド日本ロシアドイツカナダ大韓民国ブラジルイギリス


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