この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
災害派遣で東北に出動するため嘉手納基地で上官の指示を受ける第15旅団団員達壊滅・水没した被災地で被災者を背負って移動する陸上自衛官達。東日本大震災時の亘理町で活動する第10師団
災害派遣(さいがいはけん)とは、地震、水害その他の自然災害、人命又は財産の保護のため必要がある災害や事故等の発生に際し、地方公共団体、消防、警察などの能力だけでは対処しきれない事態において陸海空自衛隊の部隊を派遣し、救助活動・予防活動などの救援活動を行うことである[1]。自衛隊において、防衛出動および治安出動に並ぶ重要な任務のひとつとされる。「災派(さいは)」と略称されることもある。 災害派遣は災害等により当該地域や地方公共団体の保有する防災・災害救助の能力では十分な対応が出来ない時に行なわれるもので、自衛隊法第83条に定められている自衛隊の行動である。自衛隊の主任務は自衛隊法第3条第1項に規定されている「外国の侵略からの国土防衛」であり、災害派遣は同法第3条第2項の主たる任務に支障ない範囲で行われる、本来任務の中の“従たる”任務にあたる[2]。災害派遣を実施するにあたっては、緊急性、非代替性、公共性の三要件を考慮するものとなっている[3]。 災害救助という緊急を要する場面が想定される活動であるため、その場に警察官がいない場合に限り、警察官職務執行法が準用され、私有地への立ち入りや建築物・車両などの除去など私権を合理的な範囲で制限する権限が認められている[4]。 災害派遣は、その活動内容が専ら国民の生命および財産の保護であり、2021年現在、1度も実施されていない防衛出動および治安出動ならびに3回しか実施されたことのない海上警備行動と異なって、すでに32,000回以上の出動実績がある。 なお、大東亜戦争以前の帝国陸軍では、師団司令部條例第6条において府県令および後の知事の要請により師団長の命令で出動することが可能とされていた。また、戦後と異なり要請が無くても師団長の判断で出動させることが可能であった。詳細は「師団司令部令#師団長の権限」を参照 災害派遣により出動した自衛隊の部隊等が行う活動は非常に幅広い。自衛隊が災害派遣において発揮する最大の特性かつ長所は、他組織の支援を得られなくとも自力で任務遂行を可能とする、高度な自己完結性にある。 自衛隊に対する期待の主要なものはインフラの破壊された被災地に対する、ヘリコプターなどによる空輸能力を活用した早期展開による人命救助活動であり、基本的には遠隔地から派遣されるため困難が伴うが、航空機や初動要員の24時間待機などの体制が整えられている[5]。
概要
活動内容
行方不明者の捜索
建物など構造物から自力で脱出できない被災者の救出(出動した時点で特別救助隊などだけでは到底手が足りない状況になっていることが明白な場合。災害現場での捜索救助は消防の専門であり自衛隊の専門ではないため)
負傷者の治療(診療所や病院、個々の医師達だけでは手に負えない状況)
遺体の収容・搬送
堤防や道路の応急復旧
支障物の撤去
人員・物資の輸送
空中消火
平成30年7月豪雨被災地(岡山県倉敷市真備地区)