災害時応援協定
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災害時応援協定(さいがいじおうえんきょうてい)とは、災害発生時における各種応急復旧活動に関する人的・物的支援について、地方公共団体(以下、「自治体」)と民間事業者や関係機関との間で、または自治体間で締結される協定のことである。
概要阪神・淡路大震災での消防活動。現地の消防だけでは人手が足りなかった。

大規模災害発生時には、ライフラインや情報通信網の途絶、パニックの発生、庁舎や公共施設の損壊、職員の負傷などにより、被災自治体の災害対応能力は著しく低下する。このため、被災自治体(特に市町村)単独では、多岐の分野に渡り、かつ膨大な量の応急復旧活動を満足に遂行できないという事態が生じる。

このような事態に対処する手段の一つとして、物資の供給、医療救護活動、緊急輸送活動等の各種応急復旧活動について被災自治体をサポートする旨の協定が、多くの自治体と民間事業者や関係機関(以下、「民間事業者」)との間で締結されている。民間事業者は、自治体にはない専門的な技術や知識、資機材などを有していることから、様々な分野の民間事業者と協定を締結することで、広く的確な応急復旧活動が期待できる。

また、自治体間での相互応援協定も全国的に締結されており、自主的・積極的な応援出動、被災自治体への応援に関して必要な調整を行う幹事自治体の事前決定など、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえたスムーズな応援を達成するための体制整備が図られている。

これらの動きは、迅速な応急復旧対策について多くの教訓を残した阪神・淡路大震災後から特に顕著である。
自治体と民間事業者との協定炊き出し

自治体と民間事業者との応援協定の内容は、締結事業者の所掌分野に応じ、医療救護、物資の提供、輸送業務や情報通信など、多岐にわたる。

自治体と応援協定を締結する民間事業者は年々増加しており、都道府県と災害時の協定を結んでいる民間事業者は2004年の2332から、2005年は2442に増えている。
主な応援内容

主な応援の内容とその応援主体は、以下のとおりである。

主な応援協定の内容分野応援内容応援主体
医療救護

負傷者の応急手当

医療救護活動の提供

医薬品の供給


各都道府県医師会

各都道府県歯科医師会

各都道府県薬剤師会 など

物資供給

食料品の供給

飲料水の供給、
災害対応型自動販売機[1]の設置

日用品の供給

建設材の供給

ガスの供給

炊き出しの実施


食品業者

清涼飲料水販売業者

小売業者

建設・土木業者

エルピーガス協会各支部 など

緊急輸送

物資輸送

輸送用車両の提供


全日本トラック協会各支部

全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会 など

避難収容

帰宅困難者の避難収容

災害時要援護者の避難収容


大規模小売店舗

ガソリンスタンド

社会福祉施設 など

災害広報

災害情報の放送

避難命令等の伝達


地元ケーブルテレビ会社

地元ラジオ放送局 など

ライフライン復旧

ガス施設の復旧

水道施設の復旧

電気施設の復旧


管工事協同組合

電力会社

ガス事業者 など

し尿収集運搬

し尿の収集運搬・処理


し尿処理業者


締結のメリット

応援協定を締結することは、受援自治体と応援民間事業者の双方にメリットを生む。自治体においては、被災時に応急対策活動に関する様々な援助が受けられるだけでなく、平常時の物資備蓄にかかる空間的および金銭的コストを抑制することができる。特に、非常食や飲料水などの消費期限を有する物資の提供を受けることは、金銭的コストへの削減効果が大きい。

また、協定が締結された際には企業名および団体名と共にその旨が広報されることが多いことから、民間事業者側の主なメリットとして、当該民間事業者のイメージアップが挙げられる。応援内容の多くは当該民間事業者が通常業務で取り扱っている物品や役務の提供であり、協定の締結にあたって民間事業者側で特段の準備が必要ないことも魅力となっている。

特に建設業の場合、自治体もしくはそれに準ずる公的機関(災害拠点病院など)との防災協定は社会貢献となり、経営事項審査の加点として評価される。実際の防災協定は大企業は単独で、中堅中小は業界団体で締結していることが多い。

医療機関側でも病院機能評価の際、ライフライン事業者(建設業を含む)、医薬品食料品の納入業者との防災協定は必須となっている。
自治体間の相互応援協定

広域的な災害対策を効率的に展開することを目的とし、市町村間、都道府県間などのさまざまなレベルで自治体間の相互応援協定が締結されている。

各自治体では、応援受入れに備え、地域防災計画等により緊急輸送道路や広域応援受入施設を定めている。
市町村間の相互応援協定

市町村では、都道府県内の全市町村を対象とした統一応援協定の締結など、相互応援協定締結への積極的な取り組みが見られ、全国で1,457もの市町村が広域防災応援協定を締結している(平成18年4月1日現在)。また、姉妹都市関係にある市町村間で相互応援協定が締結されることも多い。

2004年の福井豪雨では友好姉妹都市の熊本市福井市を支援し、2016年熊本地震では福井市が熊本市に支援物資を被災地に届けた[2]
大都市間の相互応援協定


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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