火薬
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加薬」とは異なります。

本記事では火薬や火薬類について解説する。
用語

火薬(かやく)とは、や衝撃などをきっかけにして、急激な燃焼反応をおこす物質

火薬類(: explosives[注釈 1])。燃焼速度が速いものも低いものも含む広義の用法。燃焼速度が速いものは爆燃や爆発を起こし、衝撃波を発生させ、爆薬として使える。

発射薬、推進薬(: gunpowder ガンパウダー)。火薬類のうちで、爆薬よりは燃焼速度が低く、特に、銃や大砲などの発射薬やロケットの推進薬などとして用いられる物質のこと。弾丸の発射に使え、衝撃波までは発生させないので銃や大砲を破壊しない。狭義の火薬。

日本では江戸時代には焔硝(えんしょう)の語がよくつかわれ、昭和30年代頃までは、玩具に使われる火薬を「焔硝」と言う地方も多かった。
概説

「火薬」は古くからある用語で、爆燃や爆発する物質全般を指すが、漠然と広く指す場合は「火薬類」ともいう(意図的に作った、学問的な意図で広い範囲を指すために用意された)用語のほうを用い、その上で「火薬」を銃や砲の推進薬・発射薬を限定的に指すのに用いる、ということが行われている。

「火薬類」とは、利用価値のある爆発物であり[1]、「火薬 low explosive」、「爆薬 high explosive」、「火工品 pyrotechnics; explosive device」に分けられる[1]

(「火薬類」の下位分類の「火薬」)狭義の「火薬」は、燃焼を利用するものであり、「爆薬」のほうは爆轟を利用するものである[1]。狭義の「火薬」のほうは、爆燃による急激なガスの発生・膨張を利用して 弾の発射などに利用するものであり、それに対して「爆薬」のほうは、火薬よりもさらに速い速度の燃焼(爆発)による衝撃波で何かを破壊するために利用するものである。「火工品」は、火薬または爆薬を使用目的に応じて加工したものである。

火薬類というのは、一般に不安定な固体や液体で、その一部に加えられた熱または衝撃によって急速な化学変化を引起こし、多量の熱とガスを発生させ、局部的に急激な高圧高温を出現させ、それが他の部分にも急激な化学変化を起すものである[1]

「火薬」には、銃砲用発射薬やロケット推進薬などがある[1]。銃砲用発射薬には黒色火薬、無煙火薬などがある。爆薬のうち特に敏感で、わずかな衝撃,摩擦または点火などによって容易に爆轟を起すものを「起爆薬」といい[1]、(化学的には)アジ化鉛、アセチレン銀、ジアゾジニトロフェノールなどがある[1]。それ以外の爆薬にはダイナマイトトリニトロトルエンなどがある。

火薬類は、「火薬」と「爆薬」に下位分類し、その上で、「火薬」は推進薬や発射薬、「爆薬」は炸薬起爆薬、爆破薬に分類する、ということも行われる。日本以外の国では、容易に爆発しない安全な爆薬を「爆破剤」と分類することもある。 また、火薬類の中に、発光剤という分類を用意することもある。
GHSでの分類

GHSにおいても、「explosives 火薬類」という概念があり、下位分類がある。
日本の火薬取締法での「火薬類」の分類

日本の火薬類取締法上では「火薬類」を扱っており、「火薬」は「推進的爆発の用途に供せられるもの」、「爆薬」とは「破壊的爆発の用途に供せられるもの」と区別している。同法では、火薬や爆薬を加工したもの(雷管導火線花火銃砲弾爆弾など)は火工品(かこうひん)としている。
軍事での呼び分け

軍事において、「火薬」は装薬(=発射薬)を指し、破壊用の火薬(類)は一般に、「爆薬」もしくは「炸薬」と呼ばれる。
科学的な分類

科学的な分類では、火薬とは燃焼速度が音速以下のもの、爆薬とは燃焼速度が音速以上のもの(結果として衝撃波が発生するもの)。
歴史

最初に実用化された火薬(類)は黒色火薬である。英語では「gunpowder ガンパウダー」と呼ぶが、この名の通り、gun ガン(=)の弾(玉)を打ち出すための粉として用いられ、戦争の歴史に革命をもたらし、勢力地図を塗り替え、また剣や槍や弓ばかりで戦っていた時代とは比べものにならないほどの数の人々を死なせる悲惨な結果も生みだした。→#歴史
火薬類の成分による分類

火薬類について、その成分や化学構造による分類を解説する。黒色火薬
黒色火薬
硝酸カリウム(硝石)75%、硫黄10%、木炭15%を混合したもの。火薬・爆薬としては原始的なもののひとつで、前近代?近代初期においては火器にも多用された。現代ではおもに花火の揚げ薬や大玉の割薬、導火線の心薬に用いられる。静電気や衝撃に敏感なため爆発事故が多い。以前は製造工場で原料を撹拌するローラーが容器の底と衝突して爆発する事故が多発したが、現在は容器の底と直接接触しないような懸架式ローラーになっているため、製造段階での爆発事故はほとんどない。花火をほぐすと、中に入っている黒色火薬が静電気や摩擦などで発火する場合があるため、花火には注意書きがされている。吸水性が高いため湿気に弱いものの、乾燥させれば再使用できる。化学的に安定しているため、長期保管に耐えるという利点を持つ。通常の黒色火薬より燃焼速度、破壊力が共に大きい火薬を作るには、硝酸カリウムの代わりに、過塩素酸カリウムを使用する。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}塩素酸カリウムは大変危険な薬品であるため、扱いに注意が必要である。[疑問点ノート] また、エタノール漬け炭素を使用することで、燃焼速度を上げることが出来る。化学肥料などから精製されたこともある。
アミドプルバー
木炭を使うなど、原理としては黒色火薬に類似した火薬。19世紀に黒色火薬の発展型として発明され、ドイツ、オーストリアで多く用いられた。性能としては黒色火薬と無煙火薬の中間にあり当初は画期的な発明とされたが、たった半世紀で無煙火薬が発明されたため、すぐに世の中から姿を消した。無煙火薬
綿火薬
セルロース(脱脂綿等、主に植物性繊維)を濃硝酸濃硫酸の混合物により、硝酸エステル化することでニトロセルロースが得られる。爆発威力は小さいが、燃焼時の発煙が少ない「無煙火薬」の原料として銃弾や砲弾の装薬に使われる。太平洋戦争末期には、民間から「ふとん」を供出させ、綿火薬を製造した。
下瀬火薬
成分は純粋ピクリン酸である。大日本帝国海軍砲弾炸薬として実用化し、日露戦争における大戦果の一因とされた。詳細は「下瀬火薬」を参照
硝安油剤爆薬
硝酸アンモニウム(硝安)94%と軽油灯油6%を混合した爆薬。非常に爆発しにくいが、それゆえに安全性は高い。また安価という利点もあり、20世紀半ば以降に普及した。硝安爆薬や AmmoniumNitrateFuelOil explosive からANFO(アンホ)爆薬とも呼ばれる。
スラリー爆薬
硝安と水の混合物を主体とする爆薬。含水爆薬、エマルジョン爆薬とも呼ばれる。いろいろなタイプがある。泥状で流し込むタイプは鈍感で強力な起爆薬が必要である。ゴム状で、やや感度を上げて雷管で起爆できるタイプもある。耐水性が強くANFOより起爆しやすいが低温に弱い。たくさんの気泡を含ませることにより爆発しやすくなるので、中空のガラスビーズを混ぜる。
カーリット
過塩素酸アンモニウムを主体とする爆薬。日本では成分の違いにより黒、紫、樺、藍、青等に分けられている。カーリットの名前は発明者のスウェーデン人O・B・カールソンにちなむ。
ダイナマイト
ノーベルが発明した爆薬。ニトログリセリンは爆発感度が大きいため、取扱に危険が伴うが、珪藻土に滲みこませる、あるいはニトロセルロースと混合してゲル化するなどして固化すると爆発感度が下がり、雷管を用いないと爆発しなくなる。日本では「松」「桐」「榎(えのき)」などのグレードに分けられている。
ペンスリット
四硝酸ペンタエリスリット。ペンスリットの他、ニペリットとも呼ばれる。白色の結晶性粉末で化学式はC(CH2ONO2)4である。爆発威力が大きい、熱に対して鈍感、自然分解を起こしにくい、など優れた特徴を持つ爆薬である。プラスチック爆薬の材料として用いられる。TNTのフレーク
TNT
TNTとは2,4,6-トリニトロトルエンの略称である。衝撃や熱に対してきわめて鈍感、毒性が少ない、金属を腐食しない、など優れた特性を持つため、爆薬として広く用いられている。火薬の代表として、核爆弾の威力を表す単位「TNT換算」に使用されている。TNT火薬は前述のとおり衝撃や熱に対し鈍感であるため、導火線では爆発せず、爆発させる時はTNT本体に雷管を埋め込んで起爆させる。


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