火山灰
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柏木由紀フレンチ・キス)の楽曲については「ロマンス・プライバシー」をご覧ください。
クリーブランド山の火山灰の雲(2006年5月23日、国際宇宙ステーションから撮影)

火山灰(かざんばい、: volcanic ash[1])とは、火山の噴出物(火山砕屑物)の一つで、主にマグマが発泡してできる細かい破片のこと。木や紙などを燃やしてできるとは成分も性質も異なる。

細かく軽いため地球の大気中に舞い上がって遠方にも降り(後述)、一部は成層圏まで達して気候にも影響を与える[2]
地質学上の火山灰


火山灰の光学顕微鏡写真(左)と電子顕微鏡写真(右)

火山から噴出されたもののうち、直径2mm以下の大きさのものを火山灰という。粒子の大きい順に「火山砂」(かざんさ)から「火山シルト」「火山粘土」へと呼び分けられることもある。物質としては火山ガラス鉱物結晶、古い岩石の破片などがある。
火山ガラス
火山が噴火する時にマグマが地下深部から上昇してくると圧力が下がるため、マグマに溶解していた水などの揮発性の成分が火山ガスと呼ばれる気体となって、マグマは発泡する。これにより、残っていた液体のマグマが粉砕され微粒子となる。これが空気中に噴出されると、結晶になる暇もなく急冷されてガラスとなる。このガラスの成分は元のマグマの成分によって異なる。
鉱物結晶
マグマが地下深部から上昇してくるまでに、マグマの中で既にいくらか鉱物の結晶ができていることが多い。マグマが上昇して発泡する時に結晶自体が粉砕されることは少なく、1個ずつ分離された状態で噴出される。
古い岩石の破片
噴火が始まる時は火口を塞いでいた土砂等が吹き飛ばされる。また爆発的な噴火水蒸気爆発など)の場合、火口上だけでなく周辺の山体を形成する岩石も破砕され、噴火の際共に放出される。そうして放出された岩体の内、細かいものについては火山灰に含まれる。

火山灰が堆積して固まった岩石(堆積岩)を凝灰岩という。

巨大な噴火によって大量の火山灰が空高く噴出すると、その火山灰は広範囲に同時かつ均一に堆積する(広域テフラ)。そのため地層が形成された年代を特定する際の鍵層として利用される。たとえば日本列島においては約6,000年前まで、噴出した火山灰が日本全土を覆うような大規模な噴火が度々発生しており、遺跡の発掘調査や活断層の活動時期の推定において重要な目安となっている。また、南極大陸などの氷床の中にも火山灰の層が薄く含まれており、氷床コアを利用した研究を行う際に、氷の形成年代決定の重要な役割を担っている。
火山豆石新潟県佐渡市佐渡博物館入口に展示されている火山豆石。佐渡島内では「ぶどう石」とも呼ばれている。

主に火山ガラスからなる火山灰の噴出途中や降下途中で水が混ざると、火山ガラスの粒子どうしが凝集して直径1?2cm程度の状になることがある。これを火山豆石(かざんまめいし、: accretionary lapilli)という。火口湖などの水中で噴火が起こった場合や、噴火中に雨が降っていた場合に見られる。最近では、雲仙平成新山を形成した噴火の際、雨の日に火山豆石が降った記録がある。
特徴的な火山灰層を形成した火山活動

姶良カルデラ(約3万年前) - 姶良Tnシラス台地を形成した入戸火砕流と同じ噴火によると推定されている)

鬼界カルデラ(約7,300年前) - 鬼界アカホヤ火山灰

自然界の降灰

自然界では火山灰は雨と風によって移動し、陸上では植物によって土壌に固定される[3]。過去の巨大噴火では、大気圏上層に達した火山灰が日光を弱め、地球規模で気候の寒冷化をもたらしたと推測されている。大規模な降灰になると火山灰の土壌への固定のプロセスも非常にゆっくりで、火山灰の浮遊は数か月から数年に及ぶこともあるため居住地域では人の手で火山灰の除去が行われる[3]
火山灰と人間鹿児島市内の火山灰集積所

人間の生活圏に降る火山灰は、人間にとって困りものである。日常生活にも大きく影響し、火山灰が多く降り注ぐ日は視界も悪く洗濯物も外には干せない。多量に降ると農作物に被害が出る場合もある。ひどい場合は家が埋まってしまう場合もある。詳細は「火山の冬」を参照
悪影響
人体

火山噴火による火山弾火砕流の到達圏外であっても、火山灰だけでも健康被害が発生し得る。

火山灰を吸入してしまうと呼吸器に影響を与え、慢性気管支炎肺気腫喘息を悪化させるおそれがある[4] 。火山灰は眼球を傷つけるおそれもあり、コンタクトレンズを着用している場合は角膜剥離を引き起こすおそれもある[4]。清掃時にはゴーグルや防塵マスクの着用が望ましい[4]
インフラストラクチャー

火山灰の飛散や堆積は人間生活や経済活動に大きな支障をもたらす。量が多ければ農業生産ができなくなったり、建物が倒壊したり、自動車や鉄道、航空機が運行できなくなったりする。土壌や凝灰岩として安定する前の火山灰は、山などの斜面や川岸・川底に積もった後に大雨が降るなどすると、土石流や河川・水路の氾濫を引き起こすこともある。

上下水道では、給水施設に大量の火山灰が混じっていると水道水が濁り、食器洗い機洗濯機などに影響を及ぼす[3]。火山灰の清掃のため水道使用量が大きくなると公共給水施設の水が少なくなり水不足になることもある[3]。また下水設備では火山灰が雨樋や排水溝を詰まらせることがある[3]。火山灰を排水口に流して処理しようとするのは、下水道を詰まらせるため禁物である[5]。下水処理施設に影響を与えることもある[3]

屋根に降り積もった火山灰は水を含むと荷重が大きくなるため建物を押しつぶすおそれがある[3]。火山灰で滑りやすくなるため屋根の清掃中に転落する事故も発生している[3]

飛散した火山灰はテレビ、コンピュータ、カメラなどの機器に入り込み故障を引き起こす[3]。火山灰は水に濡れると導電性を持つため、電力や情報通信に依存する現代文明は、近代以前の火山灰災害になかった被害を受ける可能性が高い。

火山灰は通常のほこりとは違い結晶質の構造であり、掃除のとき床、ガラス製品、陶磁器、木製家具、電化製品などの表面を傷つけることがある[3]

降灰の多い地域では取り除いた火山灰が通常のごみと分別されていないと、ごみ収集車が故障し、ごみ処理場のスペースがすぐに埋め尽くされてしまうため、ほとんどの場合に区別して指定されている[3]
交通機関と火山灰「火山灰による飛行制限(英語版)」を参照

地上に積もった火山灰は自動車や鉄道など陸上交通機関に支障を及ぼす。山梨県富士山科学研究所などの実験結果によると、火山灰が12センチメートル積もると二輪駆動車は動けなくなり交通渋滞を引き起こすため、避難は徒歩による必要がある[6]

火山灰が空気中を舞っている状況では、エンジンの吸気口に防塵フィルターを付けた軍用ヘリコプターなど、対策を行っている航空機を除いて運行できない。エンジンに吸い込まれた極細粒の火山灰は、内部の熱で融解して付着し、部品を腐食あるいは破損させるためである。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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