この項目では、岡山県と香川県を結ぶ橋について説明しています。熊本県天草市にある橋については「天草瀬戸大橋」をご覧ください。
瀬戸大橋(せとおおはし)は、本州の岡山県倉敷市と四国の香川県坂出市を結ぶ[1]10の橋の総称である。瀬戸内海をまたぐ本州四国連絡橋の児島・坂出ルートにあたり、橋の大部分は香川県に属する。1988年(昭和63年)に全線開通。それにより初めて四国と本州が陸路で結ばれた。
橋には道路と鉄道が通り、鉄道道路併用橋としては世界最長で「世界一長い鉄道道路併用橋」としてギネス世界記録(2015年)にも認定されている[2]。2017年(平成29年)に日本の20世紀遺産に選定。完成したのはレインボーブリッジができる前のことで、海に架かる長大橋はそれまでサンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジなど海外のものがよく知られ、海峡部10 km近く、主塔の高さ200 m近いものとしては国内初だった。完成時は同じ1988年に開通した青函トンネル(約1か月早く開業)と合わせて大々的に報道され、当時一大観光スポットになった。
概要瀬戸大橋全景
1978年(昭和53年)の着工から9年6カ月を経て1988年(昭和63年)4月10日供用開始され、総事業費は1兆1,338億円である。
塩飽(しわく)諸島の5つの島の間に架かる6つの橋梁と、それらを結ぶ高架橋により構成されており、橋梁部9,368メートル (m) 、高架部を含めると13.1キロメートル (km) の延長を持つ[2]。日本ではそれぞれ単独の橋とみなされる連続する10の橋を合わせた合計の長さは、鉄道道路併用橋としては世界最長で、瀬戸大橋は「世界一長い鉄道道路併用橋」として、ギネス世界記録に認定されている[2]。橋梁は吊橋・斜張橋・トラス橋の3種類を併設。
道路建設は国道2号と11号を結ぶ国道30号の改築事業として行われた。鉄道は宇野線茶屋町駅で分岐し、予讃線宇多津駅に接続する本四備讃線の一部である。
工事の際には当時世界最先端の技術が導入された。また、気象条件や荷重による変形が著しいこの規模の吊橋への鉄道の敷設は世界初の事例であり、橋梁の変形から線路を保護するための技術が新規に開発された[注 1][3]。
橋梁部構造は上部に4車線の道路(瀬戸中央自動車道)、下部に複線の鉄道(四国旅客鉄道〈JR四国〉本四備讃線〈愛称:瀬戸大橋線〉)[注 2]が通る2層構造となっており、用途が2通りある「鉄道道路併用橋」である。下部の鉄道については、新幹線・在来線合わせて4線を敷設できるようになっているが、現在は在来線用に中央寄りの2線分のみが暫定的に敷設され、使用されている。計画中の四国横断新幹線が建設される際には2線増設され、東側2線を在来線に、西側2線を同新幹線として使用する予定である[注 3]。
設計最高速度は上部の道路が100 km/h(第1種第2級)、下部の鉄道が130 km/h(在来線部分)または160 km/h(新幹線部分)。新幹線用のスペースには何も設置されていないが、一部スペースに建設当初想定されていた新幹線用設備分の死重が設置されている。
1994年(平成6年)に、瀬戸大橋を経由して本州と四国を結ぶ特別高圧電線(50万ボルト (=500 kV))「本四連系線」が電源開発株式会社(現・電源開発送変電ネットワーク)によって敷設された(鉄道部と同レベル)。
供用開始後、倉敷市下津井田之浦の一部住民や橋下の各島民から、瀬戸大橋線の騒音やライトアップによる光害の訴えが相次いだ[4][5]。元々は橋梁の保守・点検用の橋梁のライトアップが、事前に決められた日にしか行われないのは、光により「明るすぎて眠れない」「漁業に影響が出る」といった光害に対し、沿線住民に配慮したものである。
かつては、西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)のことである「瀬戸内海大橋」と混同を避けるため、瀬戸大橋を「備讃瀬戸大橋」と呼ぶこともあった。
鉄道部 下津井瀬戸大橋〜南備讃瀬戸大橋 (7Aアンカレイジ) までの約9.3 kmに使われたコンクリートは200万 m3、鋼材47.3万 t(鉄筋9.3万 t、構造鋼材30.5万 t、PC鋼材1.0万 t、ケーブル6.5万 t)。工期9.5年、延労働時間は7004万時間[6]である[7]。 瀬戸大橋の海中基礎17基の内、既存技術で対応できたのは6基、残りの11基のために大規模な基礎向けの設置ケーソン工法が開発された。対象は、櫃石島橋2基 (2P・3P)、岩黒島橋3基 (2P・3P・4P) と南北備讃瀬戸大橋6基 (2P・3P・4A・5P・6P・7A)[8]。計11基に使われた海中コンクリートは54万m3[9]で、そのなかでも南北備讃瀬戸大橋の7Aアンカレイジ (海中・気中コンクリート量それぞれ23万 m3、18万6000 m3) と4Aアンカレイジ (同、3万7200 m3、25万3500 m3) は大きく、全体工程のクリティカルパスになった[10]。
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