激流_(柴田よしき)
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激流
著者
柴田よしき
イラスト牧野千穂(装画)
鈴木正道(装丁)
発行日2005年10月31日
発行元徳間書店
ジャンルサイコサスペンス、ミステリー
日本
言語日本語
形態四六判上製本
ページ数554
コードISBN 978-4-19-862079-0

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『激流』(げきりゅう)は、柴田よしきによる日本小説

問題小説2003年5月号から2005年9月号に連載されたものを大幅に加筆・訂正した上で刊行された。
書籍情報

単行本:
徳間書店、2005年10月31日発行、ISBN 978-4-19-862079-0

文庫:徳間文庫、2009年3月6日発行、[上]ISBN 978-4-19-892943-5、[下]ISBN 978-4-19-892944-2

あらすじ

学級崩壊寸前だったK中学3年A組の中でも、2班はまだまとまっている方だった。しかし京都での修学旅行での班別の自由行動中、バスに乗り込んだ時には確かに7人いたにもかかわらず、一人の少女がバスから忽然と姿を消した。同じバスに乗っていた同じ班のクラスメイトたちは、彼女・小野寺冬葉がいなくなったことにしばらくして気が付き、引率の教師らに連絡する。突然の単独行動に驚き戸惑いつつも、いずれ宿に戻ってくるだろうと楽観視した他のメンバー達。しかし警察の捜索でも見つからず、思春期という多感な時期ということもあり、悩みを抱えた冬葉の自発的な家出ではとの大方の見方をよそに、冬葉はその日、戻って来なかった。そして東京にも学校にも家にも戻って来なかった。その日以来、冬葉の姿を見た者は誰もいない。同じ班だった三隅圭子、秋芳美弥、御堂原貴子、東萩耕司、鯖島豊、長門悠樹ら6人は冬葉をいじめていたのではないかと学校中から白い目で見られ、マスコミにもあらぬ噂を書き立てられ、辛い思いをさせられた。

20年の時が過ぎ、あの時のメンバーは35歳となっていた。歌手や小説家として人気を得ながらも薬物に手を出してしまい落ちぶれていた秋芳美弥は、自身の小説が原作の映画の主演と主題歌担当という再起をかけた一大プロジェクトのために動き始めていた。誰からも美人と憧れられていた御堂原貴子は、ごく平凡なサラリーマンと結婚し家庭に入っていたが、夫がリストラされ、ローンの支払いや娘の学費に困り、主婦売春に手を染めていた。出版社で文芸雑誌の副編集長を務める井上圭子(旧姓:三隅)は、浮気をした夫との離婚調停が暗礁に乗り上げていた。東大を卒業し一流電機メーカーに就職した鯖島豊は、社内の派閥争いの影響で出世コースを外れ冷や飯を食わされていた。各々の人生を歩み、会うこともなかった6人だったが、美弥と貴子の元に「わたしを憶えていますか? 冬葉」というメールが届いた。冬葉は生きているのか?だとしたら、今頃になって何のためにこんなメールを送ってくるのか?バラバラだったあの時のメンバーが、再び連絡を取り合って集結し、運命という名の激流が再び流れ始める。
登場人物
主要人物(墨田区K中学3年A組2班)
井上 圭子(いのうえ けいこ)〔旧姓:三隅(みすみ)〕
班長。あだ名:サンクマ(隅と隈が似ているため)。
文芸部所属。真面目で頑張り屋、世話焼きタイプでクラス委員や生徒会の役員もこなし、教師の前では優等生で通っている。怖いもの知らずなところがあり、感性は美弥と少し似ている。高校は都立の進学校に進学した。大学在学中に学生結婚して井上姓となったが、現在は夫の浮気が原因で離婚調停中(夫が離婚を拒んでいる)。子供はいない。神保町にあるS出版で宣伝部→JOY-JOYの編集部→文芸編集部に異動し、副編集長として働いている。後にシニア層向け雑誌「暮しと健康生活」編集部へ異動。理知的で独立心が強く、男を頼らない。男が嬉しがるような化粧や服装は意地でも選ばないタイプ。
秋芳 美弥(あきよし みや)
典型的な優等生だが圭子とはまた違うタイプ。いつも冷静で、人と自分は違うという雰囲気を出していたため、良く思っていないクラスメイトも多かったが、ナガチとは仲が良かった。父親がイギリス留学の経験があり教えてもらっていたため、小学校から英語が得意だった。高校で軽音楽部に入り、部内オーディションで3年生が組んでいたバンドのボーカルになる。16歳の時、ライブハウスでセミプロバンドに誘われ、ベーシストの男と肉体関係を持ち、同棲・家出。18歳の時にインディーズバンドのボーカルとして話題になる。しかし足踏み状態が続き、何でもいいから自分にある才能を形にしたいと小説を書き始める。それがA文学賞の候補になり、それがきっかけでバンド活動がクローズアップされ、メジャーデビューを果たしてシングルヒットを数曲続けた。しかし妻子持ちの俳優と不倫騒動を起こしバンドは解散状態に。ソロで活動する傍ら、俳優との性生活を暴露した私小説を書き、ベストセラーとなる。その後も音楽と小説と性遍歴で話題になり続け、文学賞をいくつか獲ったがコカイン所持で逮捕され、執行猶予判決を受けた。美弥のコカイン所持騒動と、リードギタリスト・AKIRA(本名:高木あきら)の脱退により事実上解散状態となっていた音楽事務所A&A所属のバンド「サイレント・ムーン」だったが、最近になってほとぼりがさめたので4年ぶりに新曲が出ることが決まっている。小説の方も、美弥の全作品の中でもっとも評価が高い「棘と罠」がM文学賞を獲り、映画化が決定した。美弥自身が主役をやることになっている。現在、事務所が貸りてくれている南青山のマンションに住んでいる。
河野 貴子(かわの たかこ)〔旧姓:御堂原(みどうはら)〕
あだな:おタカ。軟式テニス部所属。人並はずれた美貌の持ち主で、同性でも見とれてしまうほど美しい顔をしている。人なつこい、無垢な笑顔が魅力で誰からも好かれ、学校中ほとんどの生徒や教師たちから愛される存在。虫、爬虫類、オバケが嫌い(目で見て信じられて、綺麗で自分に危害を加えないものしか認めないため)。読書家で、アガサ・クリスティを愛読している。羅列している数字を記憶するのが得意。バンビーナ・コンテストという美少女コンテストで優勝し、高校生の時に短い期間であるが、御堂貴子という名前でモデルをしていたことがある。短大の国文科を卒業し、現在は結婚し用賀に住む専業主婦。娘・華がいる。若さと美貌は保ち続け、35歳の今でも20代前半に見える。「世間体こそが人生のすべて」と公言しており、毎回の食事をデパートで買い、子供にはブランド服を着せるなど虚栄心の塊。主婦売春組織〈カトレア会〉(裏に暴力団の関与は無く、会員は現役モデルや元モデルの主婦で、買い手は50歳以下で年収1000万円以上のヤングエグゼクティブのみで会員の推薦がなければ会員になれない。)に在籍しており、会員からの人気も高い。夫が失業中だが、娘に最高の環境を与えたいという強い思いから、売春に走ってしまう。〈カトレア会〉は同じ会員とは一度しか会えない決まりだが、大林隆之とは夫の再就職の斡旋と引き換えに個人的に会う約束を了承した。
東萩 耕司(ひがしはぎ こうじ)
あだな:ハギコー。鉄道同好会所属。豊といつも一緒につるんで電車の話ばかりしていて、その仲の良さは女子達からホモではないかと噂される程。表裏がなく、誰に対しても飄々とした態度をとる。クラスの中?下の成績でお調子者だが、困っている人間には優しいタイプ。中学を卒業した頃に両親は離婚している。弟と妹がいる。高校卒業後、パン工場に就職。1年遅れで私立大学の二部・法科に進み、現在は警視庁の刑事。独身。世田谷主婦殺人事件の捜査班に入っており、被害者のメモを頼りに、美弥に事情聴取に訪れる。
鯖島 豊(さばしま ゆたか)
あだ名:サバ。鉄道同好会所属。耕司とは無二の親友。記憶力も成績も抜群に良く、入試偏差値が区内でもトップクラスの進学校に進学し、一浪して東大に入った。現在、一流企業であるD電機に勤めている。入社3年で社長賞をとり、開発室のホープと呼ばれていたが、女性関係で味噌をつけたことをきっかけに社内の派閥争いに巻き込まれ、その犠牲者となって出世コースから外れた末に、出張が多い営業職に異動となった。近頃は自分の「稼ぐ能力」には限界があったと感じているが、その一方で実は新事業の立ち上げを考えている。恋愛結婚していたが一連の出来事が原因で去年離婚し、娘の養育費月5万と、妻に譲った分譲マンションのローン7万を払い続けている。自身はワンルームのマンションでぎりぎりの生活。ミステリ作家・柏木太郎のファン。他人に対していつも冷静で、どこかさめていて、場合によっては冷たいと思えるような印象も与えてしまう。しかし本質的には血生臭いことや残虐なことが嫌いな、育ちのいいおとなしい男。
長門 悠樹(ながと ゆうき)
副班長。あだ名:ナガチ。ESS同好会&バスケットボール部所属。中3ですでに身長が170cmを超えている。理数系が得意で飛行機のメカ等機械類が好き。器用。航空関係の高専進学を希望していたが、医師である父に反対され鯖島と同じ進学校に進学するも、3年の時に中退。それ以後は音信不通。サイパンへ渡航した榎と談笑している姿を観光客に写真に撮られる。
小野寺 冬葉(おのでら ふゆは)
音楽部所属(副部長)でフルートの上手さは学校中で有名。「アルルの女」をいつも練習していた。口数が少なくおとなしい性格で、自分の意見をはっきり口にしない。成績は中くらい。背は低い。京都での修学旅行で班行動中、バスから忽然と姿を消し行方不明となる。
学校関係者
旭村 正隆(あさひむら まさたか)
実は学級崩壊寸前だった3年A組の担任教師。覇気が感じられず、いつもおどおどびくびくしている。20代後半。背はすらりと高くて長身、銀縁の眼鏡をかけていていくらか髪を長めに伸ばしている。一部の生徒を贔屓していたため、A組生徒からは嫌われていたが、顔立ちは女子が好むいわゆる
ジャニーズ系の少女漫画に出てくるインテリの優男風で、他のクラスの女子からは人気があった。圭子たちが卒業してから数年後に世田谷の中学に転勤。その後も数度転勤し、その間に結婚。妻も小学校の教師。最後に勤めていたのは豊島区の中学で、鬱病を理由に自分から退職した。退職後2年間働かずに家にいたが、ある日突然失踪する。
毛利 佳奈子(もうり かなこ)
音楽の非常勤講師で音楽部の顧問。音楽の才能を持った子を探して育てることに熱心で、冬葉の才能にもいち早く気づいていた。30代。美人だがヒステリックな面がある。独身だったが、実は旭村と付き合っていた。40歳になるまで音楽教師を続け、その後は厚木市に小さな家を建てて自宅の一部をピアノ教室にしている。現在も独身。
世田谷主婦絞殺事件関係者

東萩耕司が担当している事件。
中谷戸 秀美(なかやど ひでみ)
世田谷区
太子堂に住む専業主婦。30歳。


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