潮汐
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「引き潮」はこの項目へ転送されています。ポピュラー音楽のスタンダードナンバーである楽曲については「引き潮 (曲)」を、松山千春のシングルについては「ひき潮」をご覧ください。

「潮流」はこの項目へ転送されています。アントニオ・カルロス・ジョビンのアルバムについては「潮流 (アルバム)」をご覧ください。


カナダのファンディ湾 (Bay of Fundy)。満潮時。同地点での干潮時の写真。ファンディ湾の最奥部あたりは潮の干満差が世界最大であり、干満差が最大15メートルにもなる。この湾の潮汐を数十年ほど研究している研究者によると、湾の一番奥に海水が流れこむのにかかる時間がちょうど3時間あまりとなる大きさの湾のため、湾内で潮汐の共振現象が起きており、結果としてこの地点では潮汐が増幅され、世界一となっている、とのこと。


東京都港区台場の海。この日(2007年5月17日)は新月で、満潮時最高潮位は192センチメートル。18時19分撮影。同日、同地点の干潮時。この日の干潮時最低潮位はマイナス18センチメートル。10時48分撮影。

潮汐(ちょうせき)とは、主として太陽引力によって起きる、海面の昇降現象[1]。海岸などでみられる、1日に1?2回のゆっくりした海面の昇降[1]。「潮の干満(しおのかんまん)」、「潮の満ち干(しおのみちひ)」、「潮の満ち引き」とも。大和言葉で「しお」ともいう。漢字では潮と書くが、本来は「潮」は「のしお」、「汐」は「夕方のしお」という意味である。原義としてはこれだが一般には海に関するいろいろな意味で「潮」が使われる。

それ以外の要因でも起きており、気圧差やによるものを気象潮という。代表的な気象潮は高潮(たかしお)である。気象潮と区別するため、潮汐力による潮汐を天体潮・天文潮ということがある。

潮汐にともない、表面が下がるところから上がるところへ流体が寄せ集められるために流体の流れが生まれる。これを潮汐流という。日常的な表現としては「潮汐」という言葉がこれを指していることもある。

海面の潮汐である海洋潮汐・海面潮汐が最も認知されているが、実際には湖沼などでも十分に大きなものであれば起こる。地球以外の天体でも、周囲の天体の引力の影響を受け天体の表面の液体が上下する現象は起きうる[注釈 1]
主要な周期
日の周期

地球の場合、自転に従い上下動は約半日周期で変動する。海水面が最も高くなる時を高潮(こうちょう)・満潮(まんちょう)・満ち潮(みちしお)、海水面が最も低くなる時を低潮(ていちょう)・干潮(かんちょう)・引き潮(ひきしお)といい、これらの現象をあわせて干満(かんまん)という。

高潮や低潮の際には海面の昇降が停止したように見えるが、この現象を停潮(ていちょう)という[2]。高潮時と低潮時との水位差を潮差(ちょうさ)という[2]

ある地点での干満は通常1日2回ずつあり、干潮から次の干潮までの周期は平均約12時間25分ある。よって、干満の時刻は毎日約50分ずつ遅れてゆくことになる。したがって1日1回の日も年に数回ある。1日にそれぞれ2回ずつ高潮と低潮がある場合を1日2回潮、それぞれ1回ずつの場合を1日1回潮という[3]。そして1日2回潮の場合に午前と午後それぞれの高低潮の差を日潮不等といい、高い方の高潮を高高潮、低い方の低潮を低低潮と呼ぶ[3]

干潮、満潮の時刻は、海洋や港湾の海水の固有振動のため、月や太陽が最大高度になって潮汐力が極大になる時刻とは一致しない。

潮汐の周期[2]解説
高潮(こうちょう)潮汐により海面が最高に至った時点の状態。記号は「H.W.」。
落潮(らくちょう)高潮から海面が下降して低潮に至るまでの期間。下げ潮ともいう。
低潮(ていちょう)潮汐により海面が最低に至った時点の状態。記号は「L.W.」。
漲潮(ちょうちょう)低潮から海面が上昇して高潮に至るまでの期間。上げ潮ともいう。

月の周期

潮の満ち干の周期、並びに大きさの表記については、2011年現在いくつかの定義が併用されている。スポーツ新聞や釣り雑誌などに掲載される潮見表でもどの方式を採用しているかはまちまちのため、同じ日・同じ地点の潮がある新聞では「大潮」なのに別の新聞では「中潮」と表記されることも珍しくない。
旧暦方式

その名の通り旧暦すなわち太陰太陽暦で採用されている方式で、月齢を元にしたサイクルで潮の満ち干の大きさを定義する。日本気象協会では現在もこの方式による潮見表を提供している。

満月のころには、月・太陽・地球が一直線に並び、月による起潮力と太陽による起潮力とが重り合うため、高低差が大きい大潮(おおしお)となる。

上弦下弦のころには、月・地球・太陽が直角に並び、太陰潮と太陽潮とが打ち消し合うため小潮(こしお)となる。

小潮の末期の、上弦・下弦を1 - 2日過ぎたころには、干満の変化がゆるやかに長く続くように見える。これを長潮(ながしお)という。

長潮を過ぎると、次第に干満の差が大きくなってゆく。この状態を「潮が返る」と言い、長潮の翌日のことを若潮(わかしお)という。

大潮と小潮の間の期間を中潮(なかしお)という。

黄経差を用いた方式

潮の大小は、月と太陽の位相でほぼ決まる。位相差と月齢は、月の運行が一定ならば比例関係にあるが、実際には月の運行は一定でないため、若干の誤差がある。加えて、旧暦の日付を使う場合は、単位に1日の精度しかないことによる誤差もある。そのため、位相そのものを使った方が、より正確に潮の大小を表せる。

現在、気象庁日本水路協会がこの方式による潮見表を発表しているが、両者は黄経差と潮名の対応が微妙に異なる。日本水路協会のものについては、日本水路協会海洋情報研究センターの略称を用いた「MIRC方式」と呼ばれることが多い。

この2つの差異は1点のみである。陸地の沿岸では潮汐波の速度が落ちるため、大潮の中心が0度・180度、小潮の中心が90度・270度とはならず、少し遅れている。この遅れは、緯度や地形により異なるが、どちらの方式でも一定におかれ、MIRC方式は7度、気象庁方式は12度としている。差は5度で、たとえば、気象庁方式で「36 - 72度」の場合、MIRC方式では「31 - 67度」になる。

以下にMIRC方式による定義を示す。

潮名黄経差
大潮343 ? 031度
中潮031 ? 067度
小潮067 ? 103度
長潮103 ? 115度
若潮115 ? 127度
中潮127 ? 163度
大潮163 ? 211度
中潮211 ? 247度
小潮247 ? 283度
長潮283 ? 295度
若潮295 ? 307度
中潮307 ? 343度

原因
天体運動地球上の各場所は異なる重力を受ける(紺色)。地球から見ると、地球中心との差分が残る(オレンジ)。このような楕円形を潮汐バルジと呼ぶ。月と地球の自転と公転の同期によって、潮汐バルジは月の真下から若干のずれが発生する。

潮汐は、潮汐力によって引き起こされる[4]。潮汐力は、重力場の強さが場所により異なることで生まれる二次的な力である。

海洋潮汐の原因となる潮汐力は、月や太陽などの天体によって地球のまわりの重力場に勾配が生じることで起こる。つまり、天体との距離の2乗に反比例して引力が弱まることと、地球上での場所が違うと天体からの引力の方向も異なることに起因する[4]

地球は重力場の中を自由落下している。そのため、外部の重力と逆向きの慣性の力が生まれ、地球全体としては重力場を感じない。しかし、地球の重心から離れた地点の重力場が地球の重心と異なる場合、その差分に応じた重力場があるように見える。

つまり、月の真下の海面では、月に近いため、地球の重心より強い重力場が働いており、より強く月にひきつけられている。逆に、月の反対側の海面では、地球の重心より弱い重力場しか働いていない。そのため、残りの地球のほうがより強く月にひきつけられ、海は取り残される。これらの位置では、上向きの潮汐力となる[5]

また一方で、その中間、つまり月から90度離れた位置の海面は、月から見て斜め方向であるため、重力場はわずかに地球中心向きの成分を持つ。このため、下向きの潮汐力が生まれる。この潮汐力の大きさは、月の直下および反対側で受ける潮汐力のちょうど半分である[5]

月のある側の海水面が上昇することは理解できても反対側の海面が盛り上がることは理解しづらいが、直感的には次のような説明で納得できる。一直線に並んだ月-海水の塊-海水の無い地球塊-海水の塊を考える。回転運動では地球は常に月側に自由落下しているから、落下速度は月側の海水塊が最高で、地球塊が中間、月の反対側の海水塊が最低となる。仮に地球が静止した系で考えると、月の真下とその反対側では地球の重力が弱くなり、月が水平線の近くに見える場所では重力が強くなると見なせる[6]。よって地球塊から見ると、月側とその反対側の海水塊は共に地球塊から遠ざかることになる。地球塊は重力で海水塊を引き付けているので海水が地球から離れることはないが、その分海水が盛り上がる。

月の公転軌道は地球の赤道に対して傾いているため、同じ日の干潮・満潮でも午前と午後で同じ場所に働く潮汐力は異なり[7]、日潮不等が生じる[8]。さらに月の公転軌道が地球の公転軌道に対して傾いていること、また月や地球が楕円軌道を描いて公転しており、地球や太陽との距離が一定ではないことなどによっても、干満の差や日潮不等の大きさは変化する[9]

引力は天体からの距離の2乗に反比例するので、その差分で決まる潮汐力は距離の3乗に反比例する。


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