潤滑油
[Wikipedia|▼Menu]

潤滑油(じゅんかつゆ)(Lube ルーブ、Lubricant ルブリカント)とは、機械歯車などを効率よく潤滑するための潤滑剤として使われるであり、時には冷却にも益する。エンジンオイルもこの一種。 また、この化学的性質を例えとして、物事が円滑に運ばれるための仲立ちとなる物や人を指す言葉。
概要

油は分子量が大きく、液体としてはなどに比べ粘性が高く皮膜が丈夫で、物体間の摩擦を軽減させる。このため多くの機械装置の潤滑には油が利用される。また機械装置に利用する上では、電気的性質が中性で金属(酸化)を誘発させないなど都合がよい。絶縁の性質も強いものが多い。

潤滑油は、機械の機械要素間に働く摩擦を軽減するために利用される油全般を指す表現で、一般には機械油とも呼ばれるが、機械油自体は切削油伝熱材としての利用など、潤滑以外に利用されている油も含まれ、潤滑油を含む概念である。

こういった油の多くは、特に機械装置内を潤滑する場合に於いて長期間粘度が変わらないことが求められ、そのためには酸化し難いことや温度変化で極端に粘性が変化しないことなどが求められる。特に内燃機関では高温の環境下で変質したり燃焼しないよう、高い沸点のものが利用される。また難燃剤や添加剤などを加え、沸点を押し上げることも行われるが、この添加剤によっては有害なものもある(カドミウムなど)。
潤滑油の作用

潤滑油は以下の作用が生じる[1]

摩擦の軽減 : 面どうしに油膜を形成することで摩擦を低下

摩耗の低減 : 面どうしが直接接触するのを防ぎ、摩耗を小さくする

冷却 : 摩擦熱を吸収し、焼付きを防止する

密封 : 形成された油膜によって外部に物質などが出入りするのを防ぐ

錆止め : 金属表面に吸着することで発錆を防ぐ

異物の除去 : 外部からの異物を排除する。特に内燃機関では煤が凝集することを防ぐ。

潤滑油(基油)の種類.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節の加筆が望まれています。

潤滑が必要な場所や性質によってさまざまな種類があり、また鉱物油(石油を原料とする)から動植物より得られるものまでさまざまな油が利用されてきた。
鉱物油詳細は「鉱油」を参照

鉱物油(鉱油)とは、石油の精製により得られる油分である[2]。潤滑油の90%以上は鉱油である。その成分によって、パラフィン系、ナフテン系などに分けられる[3]。一般的に、環分析(n-d-M法)でパラフィンの炭素数が50以上をパラフィン系、その中でも分子結合が直鎖状のものをノルマル・パラフィン、側鎖を持つものをイソパラフィンという。ナフテンの炭素数が30?45をナフテン系と呼ぶ。潤滑油としては粘土指数が高いパラフィン系が最も安定しており、ナフテン系がそれに次いで安定している[3]

安価である。粘度範囲は広く、さまざまな粘度の鉱油が存在する。

精製では不純物を完全に除去することはできない。また一般に、不純物や分子構造により熱安定性が低く、流動点が高い。低くとも-20℃で凝固する[4]。このため、不純物がなく高い粘土指数を持つ合成油に比べると性能や使用温度範囲は狭いが、最近は高度な水素添加異性化などにより合成油に近い特性をもつ高度精製鉱物油もある。
合成油

一般的に合成油系潤滑油とは、化学合成により生産された潤滑油である。製造工程ではまず石油原料を分解し、目的物質に応じて各種精製や合成を行う。潤滑油用途に限っても、合成油の種類と製造法は非常に多岐にわたる。

鉱油と比べ高価で、条件によっては性質が劣る問題点がある[3]。鉱油で十分に代替できる場合は鉱油系潤滑油が用いられることが多い。鉱油系潤滑油では能力面で問題がある場合にこの種類の潤滑油が用いられる[5]。例えば、低温潤滑、高温潤滑、高速剪断、対樹脂、対ゴム、真空などである。
炭化水素系
ポリアルファオレフィン
粘度指数120?140、流動点-50.0以下と広い温度範囲で使用できる。自動車エンジン油、駆動系油、ギヤ油、真空ポンプ油、グリースなどに使われる。
ポリブデン
製品の粘度範囲が広く、耐熱性と耐薬品性に優れている。絶縁油、コンプレッサ油、2サイクルエンジン油などに使われる。
アルキルベンゼン
低温流動性と熱安定性に優れている。絶縁油、コンプレッサ油、コンデンサ油などに使われる。
シクロアルカン類
熱安定性と酸化安定性に優れトラクション係数が高い。トラクション油などに使われる。
エステル系

一般に熱安定性が高く潤滑性に優れるが加水分解しやすい欠点がある。
モノエステル
単体で潤滑油として用いられることはない。油性剤として鉱油に10?20%混合される。
ジエステル(DOS)
潤滑性、低温流動性と粘度温度特性に優れているが、ベータ位の炭素上の水素原子のため加水分解に対する安定性に劣る。エンジン油、耐寒用グリース基油などに使われる。使用温度範囲が非常に広い一部のジエステルはジェット機用のエンジンオイル(使用温度範囲は-55?+220℃)に使われる。
ポリオールエステル
原料はネオペンチルグリコール(NPG)、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトール(PE)などの多価アルコールとC5-C18の直鎖または分岐脂肪酸である。ベータ位の炭素上の水素原子が無いためジエステルより加水分解されにくい。原料の組み合わせで非常に多くの種類があり、用途に合わせた合成ができる。一般的な特性としては
[6](1)低流動点かつ高粘度指数で使用温度範囲が広い(2)引火点が高く、また蒸発量が少ない(3)熱・酸化安定性が優れている(4)潤滑性が良い(5)清浄分散作用がある(溶解力がある)(6)生分解性がある。特に、有機酸とアルコールの一部の水素基をアルキル基に置換したものを原料とするヒンダードエステルは、熱・酸化安定性に優れる。しかし一方で、ポリオールエステルの一部はゴム、シール材、樹脂類、塗料での使用を制限されている。ポリオールエステルはジェットエンジン油、作動油などに使われる。
リン酸エステル
原料はオキシ塩化リンとアルコール、フェノール類である。アルキルタイプとアリールタイプがあり、いずれも難燃性(自己消火性)と潤滑性、耐摩耗性に優れている。一方で、加水分解安定性や粘度温度特性に劣る。アリールタイプの粘度指数は低い。難燃性作動油、圧縮機油などに使われる。
ケイ酸エステル(シリケート)
アルキルタイプとフェニルタイプがある。低流動点かつ高粘度指数であり、使用温度範囲は広い。
エーテル系
ポリグリコール
粘度指数が高く、劣化を受けてもスラッジを生成しないが吸湿性がある。自動車用ブレーキ液、不燃性作動液、金属加工油などに使われる。
フェニルエーテル(mpm-5P4E)
耐熱性や耐放射線性に優れているが低温流動性に劣る。超音速ジェットエンジン油、耐放射線性原子炉用作動油などに使われる。
シリコーン系

性質が安定しているため、広い範囲で使われる。
ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン)
低温流動性、粘度温度特性、熱安定性、酸化安定性、電気特性に優れているが、鋼の潤滑用途に不適である。絶縁油、離型剤、グリース基油などに使われる。
シリケートエステル
誘電特性や熱安定性に優れているが、酸化安定性や水分解安定性は低い。航空作動油、高温用熱媒体油などに使われる。
フッ素系
ハロカーボン(トリフルオロエチレン)
耐薬品、熱安定性、酸化安定性に優れている。一部は低温流動性と粘度温度特性が非常に低い。コンプレッサ油、難燃性作動油、真空ポンプ油などに使われる。
植物油

植物由来の潤滑油。植物由来の潤滑剤は概して液体である。

植物油はまた代表的な油性剤でもある。また、種々の化学反応で処理することにより、基油や油性剤、極圧添加剤、乳化・分散剤になる。このように、原料のままでも加工したものでも潤滑剤用の添加剤として用いられている。

一般に生分解性であり、環境中に放出されても早期に消失する。また、人体に対して無害である。このため、農業用や食品工場用の機械に用いられている。環境汚染防止や環境保全の観点から、鉱油や合成油から動植物油への代替が進んでいる。例えば、低公害車燃料にパーム油のメチルエステルや菜種油の活用が欧米やマレーシアなどで開発されている。ナタネ油の脂肪酸メチルエステルはヨーロッパにおいて自動車や農機具、チェンソー用の潤滑油に利用されている。
植物油脂

トリグリセライド構造により、鉱油にない潤滑特性をもっている。また、鉱油より潤滑性は高い。圧延油の基油に用いられる。また、油性向上剤でもあり、圧延油、切削油、研削油、プレス油、引抜油、伸線油に使用される。
パーム油
パーム油の主要な生産国はマレーシアとインドネシアである。近年、インドネシアではパーム油の潤滑油利用の工業分野の発展が盛んに行われており、液固体脂の分別、油脂分解、脂肪酸誘導体の開発が行われている[7]
菜種油
食用油の代表格だが、日本では照明にも使われ、比較的広い範囲で菜種が栽培され得やすかったため、築城などの折に大きな石の運搬で、ソリの潤滑にも使われた。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:48 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef