漫画評論
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「漫画学」はこの項目へ転送されています。スコット・マクラウド(英語版)作画の理論書については「マンガ学 マンガによるマンガのためのマンガ理論」をご覧ください。

漫画評論(まんがひょうろん)は、漫画を対象とする評論である。他に漫画批評、漫画研究、漫画学、漫画表現論とも呼ばれる。
日本
歴史

日本では漫画家自身が作品について言及することはあったが、漫画が流行し始めた大正時代中頃に漫画評論がなされるようになったとみられ、1920年(大正9年)に雑誌『日本一』で「漫畫化號」と題して特集が組まれ北澤楽天岡本一平のような漫画家や美術評論家の河野桐谷、英文学者の厨川白村ら10人あまりが評論を執筆、昭和に入ると1928年(昭和3年)に雑誌『美術新論』の特集「漫畫號」で漫画家の岡本一平、下川凹天細木原青起、評論家の内田魯庵仲田定之助が評論を行い、先の「漫畫化號」と同じく西洋との比較で歴史的に鳥獣戯画大津絵との関係が重点だった[1]。漫画文化への関心は表現より歴史に向けられ、細木原青起は日本初の本格的な漫画史『日本漫画史』(1924年、雄山閣)で漫画の源流を鳥獣戯画の他に狩野派狂画北斎漫画、そして明治、大正の戯画と辿り、昭和では仲田勝之助の『浮世絵襍記』(1943年、二見書房)における「日本漫画略史」などや戦後の漫画史本に受け継がれた[2][3]。昭和初期には『のらくろ』の登場や中村マンガライブラリーの刊行など[1]子供向け漫画が増えたことで教育面や心理的な議論がなされるようになった[4]。戦時中になると漫画は子供の心を損なうとして出版統制が敷かれ、戦後には風刺画を対象とした宮尾しげをの『日本の戯画』(1967年、第一法規)がまとまった著作だが、複数のジャンルに行き届かせたものとして須山計一の『漫画100年』(1956年、鱒書房)や『漫画博物誌・日本編』(1972年、番町書房)など一連の著書が群を抜き、清水勲の『[日本]漫画の事典』(1985年、三省堂)、『漫画の歴史』(1991年、岩波書店)などが続いた[4]。須山計一は漫画史研究の第一人者で、須山は元々風刺画などを描いていた漫画家だったが逮捕、起訴、収監され、保釈後は漫画の描き方の指導や漫画史研究が主となり、『現代世界漫画集』(1931年、日本漫画研究会)の出版を機に漫画評論の新進気鋭として注目された[5]。彼の『漫画博物誌・世界編』(1972年、番町書房)は当時、一番詳しい世界漫画通史で日本と世界の漫画史に通ずる者は他におらず、総論的であったが須山の著作に啓発された者は多かった[6]。戦後はストーリー性のある漫画が論じられることが多く、竹内オサムはそれだけストーリー漫画がメディアを覆っていった証でもあるだろうとしている[4]

1950年代から1960年代には教育、心理、言語といった学問における雑誌で特集され[7]、それ以外では作田啓一多田道太郎津金澤聰廣の『マンガの主人公』(1965年、至誠堂)が社会学的な関心で今までの漫画を世間に広く知らしめたが[3]、本格的な漫画評論は少部数発行された同人誌で有志が行い、石子順造権藤晋梶井純らの『漫画主義』(1967年創刊)、米澤嘉博亜庭じゅんら漫画批評集団迷宮の『漫画新批評大系』などを始めとして、坂育夫の『えすとりあ』(1981年創刊)、清水勲の『風刺画研究』(1992年創刊)などが続き、情報誌でも多くの冊子が発行され評論の底辺を広げた[7]。研究で先行した漫画史では漫画家によって論じられることが多く次に教育者や社会学者、そして心理学者哲学者、映画評論家など既に他の分野で知られていた人物によるものが増えて規制の科学による検討例なのが漫画であり、そのため知的解釈の装いを多分に内在させがちだった[3]。漫画評論や研究は学問の外の人たちや鶴見俊輔や津金澤聰廣のような学者、菅忠道滑川道夫ら教育者によって細々と地道に続けられた[7]。60年代に漫画の青年化によって貸本劇画からガロへの流れに焦点を当てて藤川治水、尾崎秀樹、鶴見俊輔、佐藤忠男、石子順造ら文芸、思想、映画、美術といった専門分野がある人たちが共通して白土三平ら思春期以降の読者を支持者とする若者文化と位置付ける傾向があり、漫画評論が教育的影響論から脱し、白土の存在は漫画評論の成立の大きな影響を与えた[8]。60年代以降から作品論や作品を総体として捉えた漫画家論が書かれるようになり、戦後の漫画家がよく取り上げられ一番多いのは手塚治虫だった[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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