漂流教室
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漂流教室
ジャンル
ホラー漫画
漫画
作者楳図かずお
出版社小学館
掲載誌週刊少年サンデー
レーベル少年サンデーコミックス
発表号1972年23号 - 1974年27号
巻数全11巻
全6巻(文庫版)
テンプレート - ノート
プロジェクト漫画
ポータル漫画

『漂流教室』(ひょうりゅうきょうしつ)は、楳図かずおの漫画。『週刊少年サンデー』(小学館)にて1972年から1974年にかけて連載された。
作品解説

荒廃した未来世界に校舎ごと送られてしまった主人公の少年・高松翔ら、小学校児童たちの生存競争を描いた作品。

担当編集者の「のっけから、ドーンと盛り上がるモノにしてほしい」という要望を快諾した楳図かずおは、以前から考えていた「『十五少年漂流記』を学校ぐるみでやる」という構想を元として、「時間を越えた母子の愛」と当時問題となりつつあった公害をテーマに盛り込んだ。以前からの構想やアイデアがあったため、冒頭からラストまでのかなり細かい部分を頭の中で作り上げてから書き始めたという[1][要ページ番号]。楳図は、本作においての編集者との会話は、先述の一言と、膨大な量のメモを見たときの「もうそろそろいいんじゃないの」だけであったと述べている。

作品名は編集会議で決まったが、楳図はもう一つの作品名として「ただいま」を挙げている。ミュージシャンでもある楳図は、後に「ただいま」という曲を発表している[2]

こうして『週刊少年サンデー1972年23号から1974年27号まで連載された本作は、1974年に刊行が始まった少年サンデーコミックスに初めて収録された作品でもある。楳図の元々の持ち味である恐怖漫画のテイストに加え、意表をついた物語の展開も読者に衝撃を与え、楳図は本作も含めた一連の作品で1975年に第20回小学館漫画賞を受賞している。

連載終了後に続編の企画が持ち上がることにより、楳図は「最終話に出たロケットで子供たちが宇宙へ飛ぶ」という設定を考えたが、その言葉が浮かんだ時点で違和感を覚えたため、続編執筆の話は取り止めになった。しかし、その設定は後の楳図が「続編」と銘打った『14歳』で描かれることになる。また、楳図は「『14歳』ではなぜ本作の地球が砂漠と化したのかを描いてみたかった」とも語っている[3]

2007年10月から12月にかけて発売された復刻版には、コミックス版で入れられなかった雑誌掲載時の扉絵や製作時にカットされたページも挿入された。また、2012年に刊行が始まった『14歳』復刻版の全巻購入者特典として、本作の創作ノートが刊行された。
あらすじ

高松翔は、大和小学校の6年生。ある日、翔は母親とケンカをしたまま学校に行き、授業中に激しい地震に襲われる。揺れはすぐに収まったが、学校の外は岩と砂漠だけの荒れ果てた大地に変貌していた。突然の出来事に皆パニックに陥り、教師たちは全員亡くなってしまう。やがて荒廃した世界の正体が、文明の崩壊によって滅んだ未来の世界だと知った子供達は互いに協力し、大和小学校を拠点とした「国」を築くことを決意する。大和小学校国の総理大臣として児童の代表となった翔は、児童たちみんなが家族であるという意識の下、規律正しい生活のもとで困難を乗り越えていけるよう精一杯の努力を重ねようとする。

しかし、飢餓や未知の事象に対する恐怖心からくる狂気や内部対立、伝染病の蔓延、唯一生き残った大人である関谷の暴虐、荒廃した未来に棲息する未来人類の襲撃などの脅威により、児童たちの数は日を追う毎にじわじわと減っていく。更に、学校をタイムスリップさせる原因となった手製のダイナマイトによる爆発事件の犯人が翔であったというデマが流れ、翔は次第に孤立してしまう。

常識を超越した出来事が次々と振り掛かる中、翔と過去の世界を繋ぎ止め、翔にとっての唯一の心の支えとなっていたのは、5年生の少女・西あゆみのもつ不思議な力で時空を超えて母とコンタクトを取れるという、不思議な現象だけだった。周囲が子供達の帰還を諦める中、息子の帰還を信じる翔の母は、西の不思議な力によって未来にいる翔と仲間達に必死の思いで援助の手を差し伸べ続けていた。

その後、自らの意思で学校を出て行った後、息も絶え絶えの状態で戻ってきた女番長の口から「天国」の存在を知らされた翔たちは、学校一帯を覆わんとする高濃度の光化学スモッグの雲から逃れるため、富士山にあるという「天国」の存在に一縷の望みを託し、生き残った児童たちを連れて「天国」を目指して荒野を行進する。迫りくる化学スモッグや広大な地割れを乗り越え、翔たちがたどり着いた「天国」。そこは未来の科学力で築かれたレジャーランドの残骸の残る場所であった。暴走したロボット達の襲撃から逃れた翔たちは、その奥に鎮座するコンピューターから、自分たちが元の世界に戻るための重要な糸口が大和小学校そのものにあることを知る。

しかし、飢餓による苦しみと、翔の存在を疎み対立する同級生の大友らのグループとの抗争の激しさはついに頂点に達し、狂気に駆られた子供達は無残な殺し合いを始めてしまう。理性でこの事態を耐え切った翔は自分が爆発事件の犯人だと告白する振りをしてみんなをおびき寄せつつ学校に戻り、今こそ元の世界に帰ることができる最後のチャンスだと説得する。しかし、大友たちは聞く耳を持たず翔を殺そうと一斉に攻め寄った。

今まさに翔が殺されようとした時、大友はとっさにみんなから翔を庇い、事の真相を激白した。大和小学校を未来に飛ばすことになった大地震は、優等生であることを求め続けられる苦悩から逃れんがために、校舎を吹き飛ばそうとして彼が仕掛けた手製のダイナマイトが原因だったこと。罪悪感のあまり、翔に全ての責任を押し付けていたこと。全ての真相が明らかになった今、翔は大友と固く手を握り合って和解し、再び友情を取り戻す。

「強大なエネルギーの発生によって次元の裂け目を生み出すこと」。それが、「天国」のコンピューターが語った、過去の世界に帰る唯一の手段であった。大友の残したダイナマイトの最後の1本に望みを託し、翔たちはエネルギーの発生源を生み出すべくダイナマイトを爆発させるが、思惑は外れる。爆発の影響で火山活動が活発になってきたことを利用して再び挑戦するも、失敗に終わってしまうのだった。

落胆の中、翔たちが見たものは荒れ果てた世界に垣間見えた、命の再生の片鱗であった。その様を見た翔は、「荒廃した世界の復興こそ自分たちが未来世界に来た意味だった」と結論付け、ここに留まることこそが自分たちの選ぶべき道なのだとみんなに力強く語る。そして、過去の世界から母親の手で送られてきた援助物資により、過去と未来の世界に繋がりが生まれたことに希望を見出した翔たちは、過去への帰還を諦める代わりに、爆発に巻き込まれ一緒に未来に来てしまった幼稚園児のユウちゃんをなんとか過去の世界に送り届けようとする。幼いながらも、悲惨な未来の姿をその目で見続けてきたユウちゃんは、未来の地球を絶対に荒廃させないよう努力することを翔たちに誓い、みんなに見守られながら過去の世界へと帰っていった。

翔が未来に来てから書き綴ってきた日記はユウちゃんの手から翔の母親へと手渡され、それによって未来と過去を繋ぐ架け橋が生み出された。未来の世界で息子が元気に生きていることを知った翔の母は、天を見上げて未来の世界への希望に想いを馳せるのだった。
登場人物
主要人物
高松 翔(たかまつ しょう)
主人公。大和小学校6年3組。元気で明るいごく普通の少年。スポーツ刈りにした頭が特徴。血液型はAB型。悪戯好きで勉強は苦手(但し、知識や判断力には優れており、頭は良い)、親にも迷惑をかけてばかりいたやんちゃな子供だったが、荒廃した未来の世界に飛ばされてからは現状をいち早く理解し、皆を纏めあげ、普段の人望の厚さもあって大和小学校国の
総理大臣に選出される。統率力と生来の責任感の強さから皆を引っ張り、下級生達の兄として、また幼いユウちゃんの父として行動する。未来に漂流する前では母と喧嘩別れになってしまったが、欲しかった未来カーを我慢して母へ腕時計をプレゼントしようとするなど基本的に母に対する敬慕は深い。下級生の目撃証言により(他にも何者かが流したデマもあって)漂流の原因を作った犯人にされる。『漂流教室』の物語は漂流中に彼がつけていた日記という体裁で語られていく。運動神経も良いらしく運動会ではリレー選手にも選ばれていた。終盤で大友と和解した後、現在へ帰還するため、大友の残した最後のダイナマイトでタイムスリップを敢行するものの失敗してしまう。落胆の中、世界再生の片鱗を未来世界の中に見出したことで、自分達が未来にやって来た意味が『荒廃した未来を再生させるためだ』という結論に行き付く。そして彼は生き残った仲間と共にこの世界に生きる決意を固める。
大友(おおとも)
大和小学校6年3組のクラス委員長。成績優秀で、顔も中々整っている。翔によって大和小学校国の厚生大臣に選ばれ、翔に次ぐNo.2的な立場を得る。個人的感情や考え方の違いから対立し、翔と決裂した後は旧校舎を拠点に別グループを編成し、翔と真っ向から対立するが最終的には友情を取り戻し、現代へ戻るために尽力する。冷静で合理的な判断を下し、自己犠牲の精神もある一方、物事が順調に運ばなかった場合に大声を上げて八つ当たりしたりと堪え性がなく、助からないと判断した仲間を躊躇なく見捨てたり、邪魔な者には冷淡にあしらう等、翔との決裂もこの性格が災いして起こった。しかし漂流以前の翔との関係は良好で、度々翔の家にも遊びに行っていた。実は日々自我を殺して優等生を演じることを死ぬほど苦痛に感じており、そこから学校を無くしてしまおうと職員室にダイナマイトを仕掛け、学校を未来へタイムスリップする契機を生み出した張本人である事が物語の終盤になって判明した。その罪の重さに耐え切れず、疑惑の掛かった翔に罪を擦り付けて平静を保っていた。やがてそれが殺し合いに発展する結果になり、更なる罪悪感に苦しみ続けていたが、終盤で全てを告白し、翔の言葉に救われる。また密かに川田咲子に恋していたが、彼女が翔に好意を寄せていた事も翔へのコンプレックスの一端となっていた。和解後、プロポーズとも受け取れる言葉で想いを告げる。大学生の兄が一人いる。最後まで母に思われている翔とは対照的に、いともあっさりと母親に見捨てられてしまう。翔と同じく運動神経抜群で、運動会のリレー選手の実績がある。小説版では下の名前は「正雄」(まさお)になっている。
川田 咲子(かわだ さきこ)
大和小学校6年3組。ヒロイン。クラスでの席は翔と隣同士。男勝りでしっかりした性格。やや上で縛ったポニーテールが特徴。血液型は翔と同じAB型。翔に好意を持っており、どんな時でも翔に従って行動する。しかしその心理は何処か恋愛感情というよりも執着心に近いものがあり、大友の槍から翔を守ろうとするのも、ユウちゃんの母親的存在として行動するのも、全て翔への想いのためである。翔が不在の時や倒れた時は、彼に代わって皆の指揮を取ることが多い。運動神経は良く、リレーの選手にも選ばれていたようだ。また戦時下のニューギニア島逸話、ペスト、盲腸などの知識も豊富で頭が良い。「川田さん」「咲子さん」「咲ちゃん」など様々な名で呼ばれるが、翔からは「咲っぺ」と呼ばれている。小3の弟がいる。最後まで生き残ったが、終盤で自分の翔への想いが原因で元の世界に戻れないと告げ、そのショックで自殺を図ろうとするが大友に止められた。
西 あゆみ(にし あゆみ)
大和小学校5年生。この物語のもう一人のヒロイン。容貌はとても美しく、咲子とは対照的に大人しく物静かな性格。幼い頃に転んで脊髄を痛めたために足が不自由で、松葉杖を常備している。その所為で皆から除け者にされ、一人で空想ばかりしていた。そのおかげか、自身の体を通じて現代にいる翔の母・恵美子と翔の意思疎通を媒介する超能力のような力が身についており、唯一、未来と現代を繋ぐ架け橋となって、翔たちが危機を脱する決め手を何度も作り出すことになった。最初は儚げでか弱かったが、翔の盲腸手術の時に自ら助手として名乗り出るなど、徐々に強靭な意志を見せるようにもなっていく。現代との交信は体力を著しく消耗するようで、物語の後半ではほとんど意識が戻らない状態に陥っていた(過去と未来とを繋ぐ交信超能力は眠った状態でのみ発現されるが、最終盤で超能力を使い果たすことで目覚めの予兆を見せていた)。出身は長野県。両親は既に他界し、東京の叔父の元で暮らしていたものの叔父からも白目で見られる辛い日々を送っていた。二年生の頃仲田と同じクラスになった事があり、差別されていた自分を庇ってくれたことから、怪虫の生みの親として敵視される仲田を庇った。


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