満洲里会議
[Wikipedia|▼Menu]

満洲里会議(まんしゅうりかいぎ、マンチューリかいぎ)は、モンゴル人民共和国満洲国国境問題解決のため、1935年から1937年にかけて、数回に亘り満洲里で開かれた一連の外交会合である。モンゴル人民共和国と満洲国の政府代表が出席する形式で、両国の背後のソビエト連邦政府と日本政府の影響下で外交交渉が行われたが、具体的成果の無いまま途絶した。満蒙会議(まんもうかいぎ)とも呼ばれる。
背景詳細は「日ソ国境紛争」を参照満洲国の地図。東部及び北部ではソ連と、西部ではモンゴルと、南西部では中国と接している。

満洲事変により日本が満洲国を建国して以後、満洲国と、ソ連の衛星国であるモンゴル人民共和国の間では、国境紛争が発生していた。両国国境のあるフルンボイル一帯は、遊牧民が活動する人口密度の低い草原で、国境が不明確であった。モンゴル独立以前の清朝支配時代に定められたハルハ族バルガ族の境界線はあったが、地形的に基準物が乏しく、標識も一部風化していた。日本と満洲国側は、従来の境界線は清の行政区分にすぎないとの立場をとり、ハルハ川などを国境線と主張したため、係争地帯が生じていた。

1935年(昭和10年)当時、ソ連・モンゴル人民共和国は満洲国を国家承認しておらず、逆にモンゴル人民共和国を国家承認している国もソ連一国だけという状況であった。そのため、満洲国とモンゴルの間での国境交渉は実現していなかった。別にソ連=満洲国国境を巡る問題もあったが、こちらの画定交渉も停滞した状況であった。

こうした中で1935年1月、モンゴルと満洲国の国境地帯に存在する仏教寺院の周辺で、モンゴルの国境警備隊満洲国軍興安北省警備軍が銃撃戦となる哈爾哈(ハルハ)廟事件が発生した。小規模ではあったが双方に死傷者が出る初めての戦闘であり、満洲国軍だけでなく日本陸軍も出動するなど従来の状況とは一線を画する事件だった。モンゴルと満洲国は、互いに相手方の越境行為があったとして非難する声明を発表した。
経過
事前交渉

1935年1月28日、日本の外務省は哈爾哈廟事件について、満洲国政府が興安北警備軍による現地交渉での解決を目指しているとし、また、満洲国とモンゴルの国境画定が紛争予防に適切であるとの談話を発表した。この日本の意向に沿い、満洲国外交部の指示を受けた興安北警備軍司令官のウルジン・ガルマーエフ少将[注釈 1]、2月1日、モンゴル政府に対し、国境画定会議の開催場所や日時の希望について回答するよう求めた。2月19日には、日本の広田弘毅外相が、南次郎在満全権大使(関東軍司令官兼任)に対し、国境確定のため満洲国とモンゴルの直接交渉へ誘導するよう訓令を発した[2]

一方、満洲国の提案を受けたモンゴル政府ゲンドゥン首相は、2月5日、平和的交渉の用意があると回答した。そして、「第三国」であるソ連のウラン・ウデで、ソ連を仲介者として会議を開催することを希望した。満洲国側は、ウラン・ウデ開催やソ連のオブザーバー出席に難色を示し、交渉の末にソ連と満洲国の国境に位置する満洲里が開催場所に決定した[2]
1935年

1935年(昭和10年)6月3日、モンゴルと満洲国の代表団が、満洲里で第1次会議を開始した。モンゴル代表団は、G・サンボー軍総司令官第二代理を首席代表とし、G・ダンバ東部第2騎兵団長ら総員8人であった。満洲国は興安北省長の凌陞を首席代表とし、ウルジン興安北警備軍司令官、満洲国外交部参与の神吉正一、斉藤軍政部顧問ら12人が出席した[3]。満洲国側は国交樹立による根本的解決を冒頭で主張したが、モンゴル代表団には限定的な交渉権しか与えられていないため折り合わず、まずは国境紛争処理委員会の設置が協議されることになった[4]

ところが、会議中の6月24日、モンゴル=満洲国国境地帯フルンボイルのホルステン川(ハイラーステンゴル)流域で[注釈 2]、日本の関東軍測量隊が、不法越境等の容疑でモンゴル国境警備隊に逮捕されるホルステン川事件が発生した。拘束者と測量器具の返還は行われたが、満蒙両国は互いに相手方の不法越境であるとして主張を譲らなかった[5]。7月4日、満洲国代表団は、責任者の処罰、再発防止策として外交代表の相互常駐受け入れや、非武装地帯設置のためのタムスク以東からのモンゴル側兵力引き揚げを強硬に要求し、実力行使の可能性に言及した[4]。ソ連も、日本に対して直接に抗議した。

満洲国の全権代表部相互常駐の要求に対し、モンゴル代表団はソ連の指示に基づき主権侵害であると強く反対したが、7月29日に国境紛争解決のみを目的とする代表機関の駐在受け入れまでは譲歩した。満洲国代表団は具体的協議に入ることを求めたが、モンゴル代表団は、8月26日、本国との打ち合わせのためとして帰国した。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:22 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef