港北ニュータウン遺跡群
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港北ニュータウン遺跡群の代表格、大塚・歳勝土遺跡の風景(2020年2月9日撮影)港北ニュータウンの街並み。センター北駅側からセンター南駅方向を俯瞰(2015年2月1日撮影)都筑区位置図

港北ニュータウン遺跡群(こうほくニュータウンいせきぐん)、或いは港北ニュータウン地域内遺跡群(こうほくニュータウンちいきないいせきぐん)は、神奈川県横浜市北部の都筑区(かつては緑区および港北区)に開発された港北ニュータウン地域内に分布していた268箇所にのぼる周知の埋蔵文化財包蔵地=遺跡の総称(遺跡群)である。1970?80年代の大規模開発の最中に膨大な数と面積の遺跡が発掘調査され、大塚・歳勝土遺跡のように保存されたものもあるが、大半は調査後の開発で姿を消した。
立地と環境

港北ニュータウンにあたる都筑区のほか、青葉区港北区が存在する横浜市北部には、かつては森林生い茂る多摩丘陵に属する標高50-60mほどの丘陵台地帯が広がっていた。また鶴見川水系に属する早渕川などの小河川とその分流が、丘陵の合間を下刻して、複雑な形に無数の谷戸を形成し、典型的な里山景観を成していた。そしてそれらの丘陵や台地の上には、1万年以上前の旧石器時代から近世近代にいたる人類の活動所産である遺跡貝塚古墳集落墓地城跡など)が無数に存在していた。

2004年(平成16年)に横浜市が刊行した『横浜市文化財地図』によれば、横浜市内全域には約2500箇所近くの遺跡(周知の埋蔵文化財包蔵地)が掲載されている[1][2]。このうち港北ニュータウンが存在する都筑区内全域では、当地図一覧表の遺跡番号数(横浜市による付番。欠番も含む)として429箇所の遺跡が登載されている。都筑区周辺を含めると、青葉区で354箇所・港北区で244箇所を数え、遺跡番号数の単純計算でも横浜市北部3区内に合計1027箇所の遺跡が存在していることになる。これらの遺跡の位置と範囲は市によって把握されており、『横浜市文化財地図』のWeb版(横浜市行政地図情報提供システム文化財ハマSite)で閲覧可能である[3]
開発開始と発掘調査

港北ニュータウン建設予定地は、横浜市中心部から北北西約12km、東京都心部から南西約25kmに位置している。

1965年(昭和40年)、戦後日本に高度経済成長の波が押し寄せ、大都市横浜がさらなる膨張を開始する中、市域北部の里山地帯を、およそ30万人規模の住宅地に改造する「港北ニュータウン事業」計画が「横浜市六大事業」の一つとして当時の横浜市長・飛鳥田一雄の元で策定された。これによって、早渕川によって南北に分けられた丘陵地帯の、総面積2530ha(2530万u)もの土地が開発されることになった。起伏の激しい山谷を都市化する際は、丘陵を削り取ってその土砂で谷を埋め、平らに整地するという造成工事が行われる。その過程で地下に眠る遺跡埋蔵文化財)の多くは、掘削による破壊を受けることになる。この未曾有の大規模開発から丘陵部に広がる268箇所の遺跡を、発掘調査して遺構竪穴建物古墳貝塚など)の記録をとり、遺物土器石器など)を取り上げして保護する、「記録保存」という手段で守るために、1970年(昭和45年)に考古学者岡本勇を団長とする遺跡調査会「横浜市埋蔵文化財調査委員会・港北ニュータウン埋蔵文化財調査団」が組織され、発掘が開始された[4]

横浜市内では、港北ニュータウン事業が本格始動する前の1960年代半ばから、すでに人口増加と都市拡大に伴う大規模な開発が各地域で始まっていたが、それに対する埋蔵文化財保護活動(発掘調査)も組織的に始められていた。

港北ニュータウンに隣接する地域でも、たとえば緑区(現在は青葉区市ケ尾町で、1966年(昭和41年)の東急田園都市線開通にあわせて地域が開発されるにあたり、朝光寺原遺跡朝光寺原古墳群稲荷前古墳群などの重要遺跡が考古学研究者や研究機関によって発掘調査されていた。しかしこれら1960年代の発掘調査は、開発工事に先立って実施されたが、調査団体は遺跡の規模に対して充分な調査期間や費用・作業員数・資材などを確保できず、日々急ピッチで進行する開発工事に追いかけられることがしばしばで、辛うじて調査を終えるか、不十分なままで終えざるをえないか、最悪は未調査のまま遺跡を破壊されてしまうという事態が起こっていた[4][5]朝光寺原遺跡朝光寺原古墳群稲荷前古墳群では、迫り来る開発工事に追われ、調査が悲惨を極めたことが報告されている[6]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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