測定(そくてい、独: Messung、仏: mesure physique、英: measurement)は、様々な対象の量を、決められた一定の基準と比較し、数値と符号で表すことを指す[2- 1][1]。人間の五感では環境や体調また錯視など不正確さから免れられず、また限界があるが、測定は機器を使うことでこれらの問題を克服し、測定対象物の数値化を可能とする[2]。ただし、得られた値には常に測定誤差がつきまとい、これを斟酌した対応が必要となる[2][3][4]。
ルドルフ・カルナップは1966年の著書『物理学の哲学的基礎』にて科学における主要な概念として、分類概念・比較概念・量的概念の3つを提示した。このうち、量的概念 (quantitative concept) を「対象が数値を持つ概念」と規定し、その把握には規則と客観的な手続きに則った判断が求められるとした[5]。そしてこの物理学的測定は、測定する対象の性質や状態のメカニズム理論に基づいた尺度構成が重要になる[5]。測定に関する理論および実践についての科学は、計量学(英: metrology)と呼ばれる。
測定の対象は自然科学だけにとどまらない。会計学においても貨幣的尺度を用いた評価や[6]、企業の財務会計と適切なモデルを対応づけることなどを「測定」とする[7][2- 2]例がある。より広範な社会構造や地位などを統計学ではなく測定による理解を行う学問は「計量社会学」と呼ばれる[8]。心理学においても量的概念とその測定・解析[9]に関する理論があり、これはグスタフ・フェヒナーが創設した精神物理学 (psychophysics) に始まったと言われる[5]。 測定は、必ず何かしらの基準となる機器を用い、その結果として数と測定単位の組み合わせで表示される。したがって、例えば並んで立つ2人の身長がどちらが高いかを見る事は測定とは言い難い。試験も何らかの評価を下す行為だが、これも「合否」という結果を導き出すものである限り、測定とは言えない。ただし、一連の試験を下すプロセスの中には、何かしらの測定が行われる場合もある[10]。 同様な意味で用いられ、日本語において明瞭に区別されていない用語には、計測(けいそく、英: instrumentation)と計量(けいりょう、英: metrology)がある[1]。JIS Z8103の「計測用語」では、計測とはより広い定義がなされ、ある目的のために対象を量的に把握する技術・方法や手段の立案・計画から実行、そして目的の達成[1]、結果を情報として利用できるようにする段階までを含む[11]。同用語定義では、計量とは測定標準における公的な取り決めに基づいた、計る行為そのものとみなすこと出来る[1]。 上記のJIS定義は、ISOが定める国際計量基本用語集(VIM, 1993年)との差異がある。VIMでは計量・計測に違いを設けずいずれも英: metrology、仏: metrologieとし、測定に関する理論および実践のすべてを包括すると定める。測定には仏: mesurageが当たり、測定行為を指し示す用語としている。しかし、計量学におけるそれぞれの名詞は、奥義において重なり合っている部分が多いため厳密に区分できるものではなく、VIMは逆に区分することで表現が枯渇するような事態にならないよう推奨している[12]。 近い意味を持つ単語に測量(そくりょう、英: surveying)がある。測量法第3条の規定によると、測量とは地球表面(地表、地中、水中、空中)に存在する自然物や人工物の空間的位置を対象とする測定およびその技術を指す[13]。 測定には「直接測定
定義
測定の種類間接測定による単位パーセクを用いた天体までの距離測定。このような長大な距離を直接測定することは事実上不可能である。
直接測定は複数の手段に分類される。基本量で作られた単位のみを使う測定を絶対測定 (absolute measurement) と言い、これに対し既知の量で校正され振られた目盛を読み取る測定や何かしらの基準値との差を測定する方法[14]を比較測定 (relative measurement)という[15]。
測定系構成での分類では[15]、対象物をものさしの目盛などゼロから[18]連続して開いた[15]基準と並べ、これを順に辿る方法を「偏位法」(deflection method) と言い[17]、取り扱いが易しい利点があるが[19]、電圧計のように測定対象のエネルギーを奪ったり、ばねばかりのように大きな荷重ではばねが伸び切ってしまうなど誤差が生じやすい[20]。ある測定機器で基準となる量を測り、これと対象を置き換えて測り、基準量に差分を加えて数値を得る方法は「置換法」 (substitution method) と呼ばれ、測定器の狂いによる誤差を避けることができる[17][18]。「差動法」 (differential method) とは、測定する量と反作用するある量を合わせて相殺し、残った差分を計測して数値を得る[15]。「補償法」 (compensation method) では、測定する量を超えないある程度の計測を置換法で測り、残り部分は偏位法を用いて測定する[18]。「零位法」 (null method) は、対象の量と基準の量が等しくなるように基準の量を加減して測定する[18]上皿天秤やブリッジ回路などが該当する[20]方法で、精度は高いが扱いにくい[19]。
測定対象への働きかけ方による分類では、レーザー照射など測定器側から何かしらの働きかけを行うアクティブ法 (active method) と、対象が自然に発する信号など情報を読み取るパッシブ法 (passive method) がある。また、対象との接触の有無でも区分され、接触センシングと非接触センシングがある。後者には写真やカメラ撮影を介して画像を得て測定する方法もあり、対象に影響を与えない[14]。
測定にまつわる問題