測光_(天文)
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測光(そっこう、photometry)とは、天体の明るさを測定するための観測手法である[1][2]。通常、特定の波長域の電磁波だけを透過するフィルターを通して観測を行い、多くの場合、複数のフィルターを使用して、明るさに加えての情報を得て、天体の大まかな性質を調べることを目的としている。多数の波長域で観測すれば、スペクトルエネルギー分布(SED)を推定することもでき、そのような観測手法は分光測光とも言われる。GRB 050904の近赤外線におけるスペクトルエネルギー分布(SED)[3]。各フィルター波長感度特性が重ねて描かれている。

測光を意味する単語"photometry"は、ギリシャ語で「」を意味する"photos"と「測定」を意味する"metronからできている[4]
背景

明るさは、天体の観測量として非常に根源的なものであり、その測定は古代ギリシアヒッパルコスまで起源を遡ることができる[5]。ヒッパルコスは、恒星の明るさを6つの階級に分け、肉眼で見える最も明るい恒星を1等星、最も暗い恒星を6等星とし、著書『アルマゲスト』にもそれを採用した。その後、17世紀になって望遠鏡天文学に用いられるようになると、より暗い恒星も観測できるようになり、7等星、8等星と階級は拡張されていった。

現代天文学における測光は、1856年ポグソンが、ヒッパルコスが導入した等級を定量的に定義したことに始まる[5]。それによると、等級の値にかかわらず、等級差が1の場合に相当する明るさの比は常に一定で、等級差が5の場合に丁度100倍明るさが異なる。
方法眼視によって測光を行う実視光度計の一例、ツェルナーの光度計。器械的な標準光源との比較で明るさを測定する。

測光観測を実施するため最も基本的な構成は、望遠鏡で光を集め、特定の波長域の電磁波を透過させるフィルターを通し、感光性の検出器で光の強度を捉え記録する、というものである。独立した観測結果同士を正確に比較できるように、標準的な波長域の組み合わせ、即ち測光システム(英語版)が定義されている[6]

測光観測は、古くは眼視や写真乾板で行われ、光を感光性の素子で受けて光の強度を測定する光電測光装置が登場した1940年代以降は、近赤外線から近紫外線での測光を光電測光装置で行うのが長く主流だった。近年は、写真の視野と光電測光装置の精度を併せ持つ固体撮像素子、特にCCDが登場したことで、複数の天体を同時に精度良く観測できるCCDカメラに殆どとって代わられたが、高い時間分解能を必要とする観測など、特殊な条件下では光電測光装置も使われている。
CCD測光天体望遠鏡に取り付けたCCDカメラ

CCDカメラの基本的な構造は、測光器を格子状に配置したものと言え、その撮像面内に入る全ての光源からの光子数を一度に測定し、記録することができる。CCD画像は、複数の天体の測光を一枚の画像で行えるので、CCDで記録したデータでは、相対測光、絶対測光、差測光といった異なる手法の測光を全て実行することができる。いずれの手法でも、目標天体の等級を決めるには、明るさが十分良くわかっている比較光源が必要となる。

観測された天体からの信号は、通常複数のピクセルにまたがり、装置の点像分布関数(Point Spread Function、PSF)に従って像を結ぶ。この像の拡がりは、光学系によるものとシーイングによるものの両方に起因している。
開口測光

点光源の測光をする場合、明るさは、天体からの光の合計から空が放射する光を差し引くことで、測定する。その最も単純な手法は開口測光(aperture photometry)で、天体を中心とする開口内のピクセルのカウント数を合計し、開口の周辺の平均的なカウント数に開口のピクセル数を掛けたものを空の明るさとして差し引く[7][8]。こうして求められるのは、目標天体の生の明るさを示す数値である。
PSF測光恒星点像分布関数(PSF)の一例


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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