測光
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明順応下(黒)と暗順応下(緑)[1]の光度関数。グラフ中にはCIE 1931 標準データ[2](実線)とJudd-Vos (1978)の修正データ[3](破線)、Sharpe, Stockman, Jagla & Jagle (2005)のデータ[4](点線)を含み、横軸は波長 nmを表す。

光学における測光(そっこう、:Photometry)とは、ヒトの眼に知覚される明度の観点から測定することである[5]

人間の感覚が基準となっている点で、光を含む電磁波の絶対的な量である放射エネルギーを測定する放射測定とは明確に区別される。しかし最新の測光では、放射エネルギーをそれぞれの波長において、人の明度感覚をモデル化した比視感度の光度関数で重み付けすることができる。通常この関数は明所視での感度分布であるが、同じ目的で暗所視での感度や他の関数を用いることもできる。この重みづけは国際照明委員会(CIE)や国際標準化機構(ISO)で標準化されている[6]
測光と眼

人間の眼は可視光の波長範囲内でも、全ての波長に対して全く同じ感度を持っているわけではない。測光では、測定された放射エネルギーをそれぞれの波長でその波長でのヒトの視覚の感度を表す係数で重み付けをすることでこの違いを表現する。人間の眼の光に対する応答を波長関数として標準化したモデルは、光度関数として与えられる[7]。さらに、同じ人間の眼でも明るい場所に順応した状態(明所視)と暗い場所に順応した状態(暗所視)では、応答の度合いの波長関数はまた異なる。測光は通常明所視の状態に基づいて行われるため、月明かりや星明かりの下のような、色の違いを識別できない暗い環境下で測光を行っても知覚された光源の明るさが正確に表されないことがある[5]。明所視は3.4 cd/m2を超える環境下での目の反応で、暗所視は2 × 10?5 cd/m2を下回る明るさで起こる。薄明視はこの制限値の中間で起こり、分光的な反応は特徴づけられていない[5]
測光量測光量と放射量の比較

電磁波の放射の効果を測定することが科学における1つの分野になったのは18世紀末である。測定技術は研究中の効果によって変化し、様々な名前が付いた[8]。サーモメーターで測定された赤外線放射による熱の効果は、総エネルギーや仕事についての放射の単位を制定することにつながった。そして人間の眼を検出器として使う方法では、人間の目の応答特性に重み付けされた測光の単位が制定された。また、紫外線に対する化学的影響の研究から、単位時間当たりの光子の数で表される総線量・光量測定の単位が生まれた[5]

その結果、測光の測定分野では多くの異なる測定単位が使用されている。なぜこれだけ多くの単位が必要とされているのか、また変換できないとされている単位間(例えばカンデラルーメンなど)でどうにか変換を行えないのか、ということはこの分野の初学者にとってよくある疑問である。これは、「重い」という形容詞重量に対しても、そして密度に対しても使われうるが両者は根本的に違う概念であることと同じ考え方によって、「明るい」という形容詞が高い光束(ルーメンで表す)をもたらす光源についても、そして暗い背景に対して非常に狭い範囲のビームで光束を集中させる光源や光(カンデラで表す)についても使われるが、両者は違う概念であることで説明できる[9]

光が三次元空間を伝搬する方法のバリエーションの多さ(拡散、集中、反射、乱反射など)と、光が様々な波長を含んでいることから、行われている測光の種類も数多くあり、それと同じだけ異なる単位や量も存在している。例えば、会社のオフィスなどでは多数の天井埋め込み式の蛍光灯によって合成された高い光束によって明るく照らされている一方で、そのオフィスで使われているレーザーポインターは光束は非常に小さく部屋を照らすことは到底できないが一方向に限れば眼が眩むほどの明るさを持つ。この違いを1つの単位で表せないので、多くの異なる量や単位が現存している[10]

SIの光の単位

[編集]測光量SI単位備考
名称記号
光度エネルギールーメンlm⋅s放射量における放射エネルギー
光束ルーメン(またはカンデラステラジアン)lm放射量における放射束
光度カンデラcd放射量における放射強度
輝度カンデラ毎平方メートルcd/m2放射量における放射輝度
照度ルクス(またはルーメン毎平方メートル)lx放射量における放射照度
光束発散度ルクス(またはルーメン毎平方メートル)lx放射量における放射発散度
視感効果度ルーメン毎ワットlm/W
発光効率ルーメン毎ワットlm/Wランプ効率とも呼ぶ

測光量と放射量

光についての量には、測光量と放射量という2つの異なる体系が存在する。一方の単位体系に存在する全ての量は、もう一方の体系に対応する量が存在する[5]。例として、

輝度(測光量)と放射輝度(放射量)

光束(測光量)と放射束(放射量)

光度(測光量)と放射強度(放射量)

測光量の体系においては全ての量が波長に応じて人間の眼の分光感度特性に重み付けされているが、放射量の体系では何にも重み付けされていない絶対的な光の量そのものを扱っている[11]。例えば、サルや人間の眼は赤色光よりも緑色光に敏感なので、放射強度が同じ光源でも緑色の光源の方が赤色光源より測光量の光束は大きくなる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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