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温帯低気圧(おんたいていきあつ、英語: extratropical cyclone, mid-latitude cyclone)は、相対的に軽い暖気が上方へ、重い寒気が下方へと移動する際に解放される位置エネルギーによって発達する低気圧のことである。
赤道からの暖気と両極からの寒気が温帯気候の地域で接触し、この種の低気圧は主に温帯で発生するためこの名がある。英語ではextratropical cyclone(熱帯外低気圧)やmid-latitude cyclone(中緯度低気圧)という呼び方がされる。地球の熱収支的に見ると、熱の供給が過剰な赤道地方から熱の放散が過剰な極地方への熱の運搬を担っている存在である。
温帯低気圧は北半球では通常その中心の南東側に温暖前線を、南西側に寒冷前線を伴う。発達した低気圧では、寒冷前線と温暖前線が中心付近から結合し、中心もしくはその近くから閉塞前線を伴い、その先から温暖前線と寒冷前線の2つに分かれるという形態をとることもある。温暖前線においては暖気が寒気の上に這いあがり、寒冷前線においては寒気が暖気の下に潜りこんで暖気を押し上げるという形で上昇気流が発生している。この上昇気流に伴って雲が発生するため、温帯低気圧では中心付近だけでなく前線付近でも天気が悪い。
典型的な低気圧の構造や発達の様式を記述したものを低気圧モデルという。温帯低気圧のモデルの代表的な例としてノルウェー学派モデル(ビヤークネスモデル)とシャピロ・ケイサー・モデルという2つのモデルがある。一般的に良く知られているのはノルウェー学派モデルである。 1920年前後にノルウェーの気象学者ヴィルヘルム・ビヤークネスを中心とする学派(ノルウェー学派またはベルゲン学派と呼ばれる)によって提唱された低気圧モデルである。この時代には高層大気についての観測データはまだ少なく、地上観測でのデータを中心に構築されたモデルである。古典モデルであるが、低気圧の実態についてよく説明できるため現在でも広く低気圧の説明に利用されている。 ノルウェー学派は暖気を持つ亜熱帯高圧帯と寒気を持つ極高圧帯の境界にできる寒帯前線(亜寒帯低圧帯)上で発生する渦と考えた。寒帯前線の一部で暖気の勢力が強まるとその部分は高緯度に向かって移動しはじめ温暖前線となり、一方寒気の勢力が強まると低緯度に向かって移動しはじめ寒冷前線となる。コリオリの力によってこの空気の流れは回転させられ、東側の温暖前線と西側の寒冷前線の境界で北半球では反時計回転の渦(南半球では時計回転の渦)ができる。これが低気圧の中心である。なお、熱帯低気圧(台風など)が中緯度まで北上(北半球の場合)し、温低化[1]することで温帯低気圧に変わることもある。 温暖前線においては相対的に軽い暖気が相対的に重い寒気の上を這いあがり、寒冷前線においては寒気が暖気の下にもぐりこむ。これらの運動により重力による位置エネルギーが減り、その分が空気の運動エネルギーに変換される。その結果、低気圧の渦の回転が加速される。それに伴って低気圧の中心気圧も低下する。この過程が進行するにつれて徐々に低気圧の南側に存在する地上が暖気で覆われた部分(暖域)が減少し、寒気に覆われた部分が増加していく。これは天気図上では温暖前線に寒冷前線が追いついていくように見える。そしてついには低気圧の中心に近い部分では地上からは暖気がなくなってしまう。これを閉塞 (occlusion) という。しかし、低気圧の前面と後面の寒気はもともと遠く離れていた場所の空気であるので、ある程度の温度差があり前線が残る。この前線は閉塞前線という。
ノルウェー学派モデル
低気圧の発生
低気圧の発達発達した温帯低気圧(南半球なので渦が右巻きになっている)
低気圧の衰弱イギリス付近の温帯低気圧の天気図。Lは低気圧の中心、青の矢印は風向。