渡航医学(とこういがく、travel medicine) は、医学の一分野であり、海外旅行者を対象とした健康問題の予防や治療を扱う。旅行医学とも呼ばれる。
国際化に伴って疾病はこれまでにない速さで拡散するようになり、健康を脅かす様々な環境に身を置く旅行者も増えつつある。渡航医学の扱う内容としては、旅行者の健康を脅かす病気の地域別流行状況(疫学)、予防接種、マラリア予防、そして年間6億人に及ぶ海外旅行者の健康を守るための旅行前カウンセリング、などが挙げられる。推定では、年間8,000万人の海外旅行者が、先進国から発展途上国へ旅行しているとみられる[1]。 死亡率研究によれば、旅行中の死亡の最大の原因は循環器疾患(50-70%)であり、外傷や事故(?25%)が続く。感染症は旅行中・旅行後の死亡原因のうちわずか2.8?4%を占めるに過ぎない。一方有病率研究によれば、先進国からの旅行者が途上国で1ヶ月を過ごした場合に、半数以上が病気になるとされる[1]。中でも旅行者下痢症は最もよく見られる問題である。 渡航医学を取り巻く学問領域としては、疫学・感染症・公衆衛生・熱帯医学・高地生理学・旅行に関連した産科学・精神医学・産業医学・軍事医学・移民医学・環境衛生が含まれる。特別な旅程や活動としては、クルーズ客船による旅行・ダイビング[要曖昧さ回避]・大集会(例: ハッジ)・荒野や辺境の地への旅行などが挙げられる。基本的に、渡航医学は4つの主要分野に分けることができる。 渡航医学に含まれる活動として、渡航前相談や検診、旅行中の不慮の事故への備え、旅行後の健康相談などが含まれる。地域別の健康情報や飛行機旅行そのものによる危険についてなど、基礎となる情報は世界保健機関の ⇒旅行情報 (英語)として提供されている。他にもアメリカ疾病予防管理センター(CDC)の旅行情報 (英語)
国際化と旅行
有病率と死亡率
専門領域
予防 予防接種と生活指導
支援医学
辺境地医学
保険医学
活動範囲
カバーすべき内容のメインは、ワクチンの予防接種だが、他に「6つのI」として、次のようなアドバイスも行われる。
虫刺され(Insects): 虫除け・蚊帳・マラリア予防薬
食中毒(Ingestions): 水質や食べ物への注意、旅行者下痢症の対症療法など
分別のある行動(Indiscretion): HIV、性感染症
外傷(Injuries): 事故を避ける工夫、身の安全の守り方、破傷風・狂犬病
水に触れる際の注意(Immersion): 住血吸虫症
旅行保険の活用(Insurance): 担保内容の確認や、具体的な治療の受け方の指導
特に問題となる疾患
黄熱病は、アフリカや南アメリカの一部地域で流行している。CDCのサイトで危険地域や黄熱ワクチンに関する情報、予防法についての情報が得られる[2]。
髄膜炎菌髄膜炎は、アフリカの「熱帯髄膜炎菌地域」で流行が見られる。サウジアラビアのメッカを訪れるイスラム教巡礼者、欧米に留学する学生には、予防接種が義務付けられている。上記同様、CDCのサイトで髄膜炎菌ワクチンその他の情報が得られる[3]。
マラリア予防には、蚊との接触予防(網戸・エアコン・蚊帳)と、虫除けスプレー(通常はディート)が用いられる。抗マラリア剤による予防を行う場合は、旅行前から服用を開始し、帰国した後4週間(クロロキン・ドキシサイクリン・メフロキンの場合)または7日間(アトバコン・プログアニル
旅行の際には、リスクに備えて持っていくと役に立つ薬がある。行き先や状況にあわせて、解熱鎮痛剤・マラリア予防薬・コンドーム・旅行者下痢症の治療薬、絆創膏や湿布やハサミなどの応急手当セットを用意するとよい。
関連項目
熱帯医学
熱帯感染症
表
話
編
歴
観光
観光の形式
アクセシブル・ツーリズム (en)
アグリツーリズム/グリーンツーリズム