清水次郎長
ジャンル時代劇
脚本植木昌一郎
津田幸夫
向田邦子
大西信行
窪田篤人
石川孝人
鶴島光重
『清水次郎長』(しみずのじろちょう)は、1971年5月8日から1972年4月29日まで、フジテレビ系列で放送された連続テレビ時代劇。制作は東映、タケワキプロダクション(第9話から「タケワキプロ」表記)、フジテレビ。全52回。主演は竹脇無我。放送時間は毎週土曜日20:00?20:56(JST)。 清水の米屋「山本屋」の息子・山本長五郎(竹脇無我)が、地元にのさばる鬼瓦一家と対峙した一件をきっかけに、多くの子分や知己を得て侠客・清水次郎長として一家を興し、ライバルの黒駒勝蔵やども安らと覇を競いながら成長していく物語。本作での次郎長は、米屋の倅から博徒に転じ、博打や無闇な争いを嫌う人格者寄りの人物として描かれている。また、山岡鉄太郎(山岡鉄舟)(第25話、演・加藤剛)、高杉晋作(第34話、演・古谷一行)ら歴史上実在した幕末の偉人も登場した。 次番組は本作で森の石松を演じたあおい輝彦主演『お祭り銀次捕物帳』(同じく東映とフジテレビが制作)だが、本作からはあおいの他、田辺靖雄、渡辺篤史、露口茂が続けてレギュラー出演している。 また、「葉村彰子」名義による脚本がTBSの月曜8時枠時代劇以外で多数見られた最初期の例の一つとして、本作及び次作『お祭り銀次捕物帳』が挙げられる(詳細は「葉村彰子」の項を参照)。共同ペンネームである「葉村彰子」に参加していた向田邦子、大西信行、窪田篤人、津田幸夫らも回によっては独立した脚本家として、主に葉村との連名でクレジットされていたことから、それらの回のメインライターであったと考えられる。 放映曜日や時間帯(裏番組に「8時だョ!全員集合」[2]など)、(葉村彰子の一員としてではあるが)向田邦子が脚本陣に名を連ねていること、前述のような次郎長や周囲の人物らの人物造型などもあり、ホームドラマ的な演出も見られた。 1980年代半ば、メガTONネットワーク(現・TXNネットワーク)で平日13:05より事実上の再放送がなされていた。 ※子分衆を演じる俳優のスケジュールの都合等により、子分衆が全員登場する回は物語の序盤を除けば殆ど無く、回が進むにつれ、旅に出ているなどの設定で登場しなくなる子分や途中から新たに加わった子分もいる。なお、その動静が他の子分衆の台詞を通じて説明されることもある。詳細は以下各人の登場話数を参照。
概要
キャスト
次郎長とその身内
清水次郎長(山本長五郎)=竹脇無我
本作の主人公。清水の米屋「山本屋」の倅(母親と二人暮らし)だったが、鬼瓦一家の絡むある一件をきっかけに、槍の達人・伊藤政五郎(後の大政)に剣の教えを乞うようになり、その甲斐あって見事に鬼瓦一家を撃退。その後、政五郎の伝で知り合った大前田の親分の後ろ盾もあり、博徒の世界に足を踏み入れ清水港を取り仕切る清水次郎長一家を興し、冷徹な若親分として時に非情な判断も厭わず見事に子分衆を束ねる。また、やくざ稼業に付き物の喧嘩や博打を嫌い、子分衆にも喧嘩と博打は禁じている。最初は第1話で出会った僧(演・佐野周二)からかけられた「いのち三百六十日」の予言めいた言葉を信じ、日毎に帳面をつけていたが、第17話で再びその僧と出会い、改めて交わした言葉により安堵、続く第18話の一件を境に本格的に侠客として生きていく決意を固める。凶状旅を2度経験(第7?9話、第43?46話)。最終話で勝蔵との対決に単身乗り込む。
お蝶=梓英子
次郎長の許婚。清水港の老舗料亭・増川の娘。侠客となった次郎長は当初、お蝶との契りを交わすのを避けていたが、弟の仙右衛門を供に大前田の家に押し掛け、その後、父・与左右衛門の許しも得たために正式に次郎長の妻となる。おしどり夫婦である夫・次郎長の行動については、子分衆の前などでは気丈な振る舞いを見せる一方、一人になったり次郎長と二人きりの時(特に前述の僧の「いのち三百六十日」の予言があった頃)などは時折不安を覗かせることもあった。ここぞという時の行動力もあり、次郎長と喧嘩をして家を飛び出したり(第37話)、やくざとの立ち回りをしたり(第38話)、さる事情から凶状旅の一行にも加わったり(第43話)した。その凶状旅では、道中で妊娠が判り子分たちから祝福されるが、慣れない旅の疲れも重なり流産してしまい、自身も生命の危険に晒される(第45話)。最終話では勝蔵たちに人質にされてしまう。
お直=村瀬幸子(第1?6、10、13、23?25、29、31、33?35、37、46?47話)
次郎長(長五郎)の母親。お蝶にも子分衆にも優しく、大らかな人物。
増川与左右衛門=永井智雄(第1、3、13、24、31話)
清水港の老舗料亭・増川の主人。お蝶・仙右衛門の父。恰幅良く剛胆な人物。次郎長(長五郎)の人柄に厚い信頼を寄せ、その侠客への転身にも理解を示す。昔は増川の一番番頭であったが、ある事情から入り婿となった。第24話ではその因縁から、先代の息子で今は渡世人となった風見の得三(演・池部良)に絡まれてしまう。
お民=幾野道子(第1、3、10、13、15、24、26、31話)
お蝶・仙右衛門の母親。夫・与左右衛門と共に料亭・増川の女将として店を切り盛りする。次郎長一家の台所事情が苦しくなり、やりくりに苦労するお蝶の姿を知った時には、自分の簪(かんざし)をお蝶に渡して質入れの足しにさせたり、金銭の援助をするなど、自分と同じ苦労が多い妻の立場にあるお蝶の事を何かと気に掛けている。
次郎長の子分衆
大政(伊藤または山本政五郎) : 大木実(第1?26、28?52話)
鬼瓦一家との一件で思案した次郎長が剣の腕を磨くべく入門した浪人。尾張の出で、武家社会に嫌気が差して、妻や伊藤家を捨てて出奔した過去を持つ。本名「山本」(第20話の本人の台詞より[3])。三国一の武術の達人で特に槍術の達人。次郎長の鬼瓦一家への殴り込みに助勢したことをきっかけに、次郎長を大前田の英五郎親分に引き合わせ、自身も武士の身分を捨て次郎長の子分に。その貫禄と堂々たる態度で子分衆のまとめ役として一家に睨みを利かせる。次郎長からの信頼も厚く、次郎長から相談を受けるのはもちろん、次郎長が旅に出た時に一家の留守を預かったり、次郎長の名代として他の親分のところに出向いたりもする。また、ども安や勝蔵の企みによる次郎長を追い落とす様々な策を見破る眼力も持つ。小政の登場以降は区別の意味も込めて「大政」と呼ばれ(自身でもそう名乗る)、身内の子分衆からは「政兄ぃ」と呼ばれる。第27話以外の全話に出演した。
森の石松 : あおい輝彦(第1?15、17?21、23?25、28?29、31?32、35、37?40、42?49話)
遠州森の出である自称・次郎長一の子分の渡世人。気のいい粗忽者。一度は鬼瓦一家に草鞋を脱いだが、その無法ぶりに愛想を尽かして次郎長に加担。一家の仲間入りを果たす。隻眼だが眼帯はしていない。出会った頃から鬼吉とよく連んでおり、お互いに張り合う仲であることからか、勇み足が多い。よく偽物を仕立てられる。故郷に母親(演・浦辺粂子)と弟妹が一人ずついる。第47話で讃岐・琴平大権現への代参の旅に赴き、その帰途の船の中で旅姿のお竜とばったり出会う。お竜との再会を懐かしみつつ思いの丈をぶちまけ、ついには夫婦約束をしたが、その後、手持ちの金を騙し取られた末に斬られ、一度は七五郎の家まで辿り着くが、抜け出した先で止めを刺されて絶命した(第48話)。第49話は回想シーンで出演。
桶屋の鬼吉
その名の通り桶作りをする男で、渡世人。森の石松共々次郎長一の子分を自認。石松同様に鬼瓦一家の横暴を見かねて次郎長の下に草鞋を脱ぎ、加担し、一家の仲間入りをする。清水港で出会った森の石松とはよく似た性格の持ち主であり喧嘩友達になり、何かあると張り合おうとするが、その分だけ勇み足も多い(大前田の親分を窮地に陥れた第27話など)。第13話でやくざ嫌いの父・吉兵衛(演・殿山泰司)に桶屋稼業を継ぐように説得され、次郎長からも堅気に戻る様に告げられて一度は堅気になる決心をするが、未練があるのを察した吉兵衛の許しを得て一家の元に戻った。団子屋の娘・おなみに気がある様子。第42話と最終話で棺桶を担いで出入りに臨んだ。なお、『次郎長三国志』などの鬼吉と違い、本作の鬼吉は名古屋弁では喋らない。
法印大五郎 : 南利明(第2?6、8、10?13、15、17?26、28?29、31?32、34?36、39?40、42、44?46、48?52話)
尾張の出で名古屋訛りがきつい陽気な生臭坊主。街道筋の団子屋で団子代を施された恩義から次郎長の子分になる。初めて登場した時には長らく風呂に入っていなかったので、相当に臭かったらしく、大前田の家で石松や鬼吉の手で無理矢理風呂に入れられた。元々ども安から盃を受けていたことがあり、それが故にども安の計略を見破ったことも。子分衆の中ではやや年長者。第19話で寺の坊主時代が描かれた。たびたび女絡みの話が描かれる(第19、28、31話など)。演じる南が愛知県名古屋市育ちということからか、本作ではこのキャラクターが名古屋弁を喋る。
増川仙右衛門
お蝶の弟。次郎長の後を追いかけたお蝶の供をして、そのまま志願して次郎長の子分に。若く血気も盛んだが、最初は武術はからきしで、姉のお蝶からは「長ドスより算盤が似合う」と言われたことも。子分にはなったものの、最初のうちは、その若さ故に(そして、彼をゆくゆくは料亭・増川の跡取りにとの次郎長の考えから)出入りへの参加を禁じられていたが、程なく出入りにも参加するようになり、武術の腕も上げた。自他共に認める「清水一家の勘定奉行」。子分衆の中では唯一全話に出演。
小政 : 松山省二(第3?9、13、15、17?18、20、22?27、29?30、33?36、39?40、42、46話)
渡世人にして居合い抜きの達人。遠州浜松の出。次郎長に惚れ込んで子分に。大政と同じく「政五郎」という名前であり、区別をつける意味も込めて「小政」と呼ばれる。下戸で酒が大の苦手であり、次郎長と固めの盃を交わした際には無理して飲んでしまい、その場で伸びてしまった。酒は駄目だが大の甘党で団子が大好物。馴染みの団子屋「はごろも団子」の娘・おなみとは、互いに惹かれ合っている。勝蔵の子分である小岩とは同じ居合い抜きのライバル。幼少時にはしじみ売りなどをしていたという(第36話)。第46話を最後に説明なく姿を消す。
追分三五郎 : 近藤正臣(第2?6、9?12、15?16、20?24、26?27話)
女好きで優男の渡世人。信州追分の出で、上州への旅の道すがらで出会ったお蝶に一目惚れしてしまうが、次郎長の許婚とわかってあっさりふられる。その後、黒駒勝蔵に唆されてお蝶を騙してしまった一件をきっかけとして次郎長の子分に。女好きだが根っからの女誑しでもなく、メインを張った第16話では旅の途中で惚れられた女・お静(演・土田早苗)を、湯煙りの左平次(演・中谷一郎)との約束により振るために泣く泣く女誑しの芝居を打ったこともある。第27話を最後に何ら説明なく姿を消すが、時折他の子分衆の台詞にて動静が説明されることがある。
大瀬半五郎 : 里見浩太朗(第5?6、10?13、15、20、24?25、27、29、35話)
元は浪人「田島半五郎」を名乗って次郎長一家の前に現れる武士。三河岡崎の出。大政に筋違いの恨み(兄を殺された)を抱くが、誤解とわかる。そして、その一件を解決してもらったことによる恩義を受けたことから、武士の身分を捨て志願して次郎長の子分になった。同じく元武士の大政に次ぐ落ち着きの持ち主であり、第27話では大政の代わりとして次郎長の旅の供の頭を務める。第29話で元許婚からの手紙を受けて岡崎に帰り、病で床に伏せる母親の臨終に立ち会った後、大瀬家や元許嫁と本当の訣別をする。その道中で、ある誤解から板場の喜三郎(演・和崎俊哉)から敵として命を狙われるが、誤解が解けたあと喜三郎の敵討ちの助勢をし、その最後の頼みを聞き届けた。弟が一人いる。第35話を最後に説明なく姿を消す。
お竜 : 范文雀(第1、3?7、15、28、47?49話)
女渡世人。肥後五木の出と第3話で仁義を切った際に述べているが、実は遠州浜松に住まうやくざの女の娘(実の娘ではない。元は孤児)で、またの名を「猫目のお竜」という。壺振り名人。第1話の冒頭で森の石松と絡む旅人でもある。第3話で次郎長の家に押し掛け子分衆を丁半博打でスッテンテンにするが、次郎長から見咎められて仁義を受けてもらえなかった。その後、下働きとして半ば強引に雇ってもらい、二度と博打に手を染めないという条件で次郎長にも認めてもらう。だが、第15話で九竜山一行を迎えたことで苦悩するお蝶を見かねて、窮状を救おうと下働きを辞めて一家を飛び出そうとする。一度は石松に止められたものの、結局下働きを辞めたらしく、第28話に於いて旅先で再び一家の前に姿を見せる[4]。