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淫行条例(いんこうじょうれい)は、日本の地方自治体の定める青少年保護育成条例の中にある青少年(18歳未満=17歳以下の男女)との「淫行」「みだらな性行為」「わいせつな行為」「みだらな性交」また「前項の行為(=「淫行」など)を教え・見せる行為」などを規制する条文(淫行処罰規定)の通称である。
なお、正式な法令上の用語では無いが法律用語としては通用する。本来の淫行とは単に「淫らな性行為」のことだったが、この条例ができたことによって相手が18歳未満である場合に限って使われるようになってきた。 福岡県青少年保護育成条例事件の最高裁判所の判例によると、淫行条例により規制される「淫行」とは以下のことである。 …本条例(福岡県青少年保護育成条例)一〇条一項(当時)の規定にいう『「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為』をいうものと解するのが相当である。 ただし当事者双方が「『真摯な交際関係』の上で性行為があった」と考えていても、「淫行」に当たると判断され逮捕されるケースもある。このような場合、青少年の親権者が告発し、それに基づき逮捕されるケースが多い。 2016年3月31日時点の警視庁ホームページ
概説
ただし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものを含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目にして単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。… ? 1985年(昭和60年)10月23日、最高裁大法廷
違反行為について親告罪としている淫行条例は2006年現在存在しない。2005年の時点では、兵庫県青少年愛護条例のみがこれを親告罪としていた。
また淫行条例の多くは「淫行の行為者が青少年であった場合には罰則を適用しない」としているが、これは「罰則が適用されない」だけであり、青少年同士の「淫行」でも条例違反(違法)と見なされることに変わりはなく、補導などの対象になりうる。
例えば東京都青少年の健全な育成に関する条例30条では、「この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、当該青少年の違反行為については、これを適用しない」と規定されている。
多くの自治体で、最高刑を地方自治法14条の許す限度の上限である懲役2年に定めている。 「淫行」の処罰を条例に委任する法令の規定がないため、自主条例の位置づけとなる。また、法令は淫行条例制定の主体を都道府県に限定していないため、市町村が淫行条例を制定することも可能である。 淫行条例と、児童福祉法第34条1項6号「何人も、次に掲げる行為をしてはならない。…児童に淫行をさせる行為」との規定との線引きが曖昧になっており、「児童に淫行をさせる行為」は「児童をして自分自身と淫行させる行為」つまり「児童と淫行する行為」を含むことがある。なお、児童福祉法に言う児童も青少年と同じ18歳未満の男女を意味する。 東京高等裁判所の裁判例によると児童福祉法による「淫行をさせる行為」とは以下のことである。 …「児童に淫行をさせる行為」は、文理上は、淫行をさせる行為をした者(以下「行為者」という。)が児童をして行為者以外の第三者と淫行をさせる行為と行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為の両者を含むと読むことができる。… つまりその自治体の淫行条例が限定的である場合、その自治体の淫行条例では検挙されない行為もこの規定で検挙されることがある。 この規定は後述する「長野県児童福祉法違反事件」で判例の解釈が大幅に変わって上記のように解されることが多くなった。それ以前は、「自分以外の第三者と児童を淫行をさせる行為」のみが基本的に対象であった。 また、児童福祉法の淫行罪は、少年法第37条の削除により地方裁判所の管轄となったが、加害者が少年(20歳未満)であった場合は家庭裁判所に係属することで定着している[1]。また、条例違反か児童福祉法違反かを問わず、児童淫行の加害少年(20歳未満)に関しては、少年法第61条の規定により実名報道は制限される。
法的性質
児童福祉法34条1項6号「児童に淫行を“させる”行為」禁止規定や少年法との関連
…児童福祉法34条1項6号にいう淫行を「させる行為」とは、児童に淫行を強制する行為のみならず、児童に対し、直接であると間接であると物的であると精神的であるとを問わず、事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される。…
淫行をする行為に包摂される程度を超え、児童に対し、事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ、その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される。…」 ? 1996年(平成8年)10月30日東京高裁
事例が望まれています。
福岡県(福岡県青少年健全育成条例)では、青少年に対する「いん行又はわいせつな行為」が規制対象である他、「前項の行為(いん行又はわいせつな行為)を教え、又は見せてはならない」とされており、条文上、幅広い解釈の余地を残している。
福岡県青少年健全育成条例(旧称:福岡県青少年保護育成条例)(いん行又はわいせつな行為の禁止)第三十一条 何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない。2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
東京都(東京都青少年の健全な育成に関する条例)では、青少年と「みだらな性交又は性交類似行為を行うこと」が規制対象である。
東京都青少年の健全な育成に関する条例(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。なお警視庁は、東京都条例にいう「みだらな性交又は性交類似行為」について上述の福岡県事件の最高裁判例を参考にしたと思われる限定を行い、「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいい、婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある場合は除かれる」としている[2]。
威迫・欺罔などによる淫行や金銭目的の売買春(援助交際での性行為)のみを対象とする自治体もある[要出典]。
条例は基本的に属地主義を採用し、地方公共団体は「地域における事務(及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの)を処理する」権能しか有しないため(地方自治法第2条第2項)、自らが住民票を置く自治体以外で「淫行」をし、その自治体においてそれが処罰されない場合、自らが住民票を置く自治体の条例で罰せられるという説もあるが、その適法性を安易に認めることについては地方自治法上の疑念がある[要出典]。
制定の経緯・歴史
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童買春法)施行(1999年)以前には児童買春もこの淫行条例違反として検挙されていた。
売春防止法第3条で単純売春