液体
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液体のは表面積が最小になるよう球形になる。これは、液体の表面張力によるものである

液体(えきたい、: liquid)は、物質の状態固体・液体・気体)の一つである。気体と同様に流動的で、容器に合わせて形を変える。液体は気体に比して圧縮性が小さい。気体とは異なり、容器全体に広がることはなく、ほぼ一定の密度を保つ。液体特有の性質として表面張力があり、それによって「濡れ」という現象が起きる。

液体の密度は一般に固体のそれに近く、気体よりもはるかに高い密度を持つ。そこで液体と固体をまとめて「凝集系」などとも呼ぶ。一方で液体と気体は流動性を共有しているため、それらをあわせて流体と呼ぶ。
状態変化

液体は、固体気体と並んで物質の三態の一つである。物質内の原子あるいは分子結合する力が熱振動格子振動)よりも弱くなった状態であり、構成する粒子が互いの位置関係を拘束しないために自由に移動することができ、いわゆる流体の状態となる。このような状態を物質が液相であるという。

臨界圧力以下ならば、物質ごとに決まった温度固体から液体へ構造相転移(一次相転移)する。この固体から液体への転移温度が融点である。また、一定の圧力のまま更に温度を上げると分子の振動が強まって分子間の距離が大きくなり、(過熱が起きない場合)ある定まった温度で飽和蒸気圧がその圧力に達し、液体内部から気体が発生する。この時の転移温度が、沸点である。逆に温度を下げれば、気体→(液化)→液体→(凝固)→固体となる。過冷却が起きない限り、凝固点は融点と等しい。但し、融点、沸点は、圧力など外的条件の影響により変化する。

液体状態では、原子、分子は比較的自由かつランダムに動き回っている(ブラウン運動)。
液体の物質

周期表において常温常圧単体が液体である元素は、水銀臭素のみである。常温よりやや高い温度が融点となっている(融点が25度?100度)元素として、フランシウムセシウムガリウムルビジウムリンカリウムナトリウムがある[1]。常温で液体の合金としてガリンスタンなどがある。

純物質で常温常圧で液体のものとして、エタノール、各種有機溶媒がある。液体の水は化学と生物学においてきわめて重要である。生きるために水溶液環境で行われる蛋白質化学反応を用いる生命にとっても液体の水が必須だといわれ、地球外生命体の探索において氷や水蒸気しかない星は除外される[注 1]

日常において重要な液体として、家庭用漂白剤のような水溶液鉱油ガソリンのような複数の物質の混合物ヴィネグレットソースマヨネーズのようなエマルジョン血液などの懸濁液塗料のようなコロイドがある。

多くの気体は冷却によって液化でき、液体酸素液体窒素液体水素液体ヘリウムなどの液体を作ることができる。常圧では液化できない気体もあり、例えば二酸化炭素は5.1気圧以上でないと液化できない。

古典的な物質の三態では分類できない物質もある。例えば固体と液体の特性をあわせ持つ物質として液晶があり、表示装置に使われているだけでなく、生体膜も多くが液晶である。
利用

液体には様々な用途があり、潤滑剤溶媒冷却剤(または冷媒)などに使われている。油圧システムでは液体を使って動力を伝達する。

トライボロジーでは、液体の潤滑剤としての特性を研究する。などの潤滑剤は、対象装置の運用温度範囲における粘度と流動特性を考慮して選択する。潤滑油はエンジントランスミッション金属加工、液圧システムなどに使われている[2]。航空機の揚力発生等、流体機械の広い範囲でその特性が応用されている。

他の液体や固体を溶かす溶媒には様々な液体が使われている。溶媒には塗料コーキング材、接着剤など様々な用途がある。ナフサアセトンは部品や機械に付いた油・油脂・タールなどを洗浄するのによく使われる。界面活性剤石鹸洗剤によく見られる。アルコールなどの溶媒は殺菌剤としてもよく使われる。また、化粧品インク、液体色素レーザーでも使われている。食品加工でもよく使っており、植物油の抽出などの工程で使われている[3]

液体は気体に比べて熱伝導率が高く、また流動性があるため、機械部品の余分な熱を奪うという用途に適している。ラジエターのような熱交換器に液体を通して熱を除去したり、液体を蒸発させて気化熱を奪うことで冷却することもある[4]エンジンの冷却には水やグリコールが冷却剤として使われている[5]原子炉の冷却剤としては、水の他にナトリウムビスマスといった液体金属も使われている[6]ロケットの燃焼室を冷却するのに液体推進剤を使ったフィルム冷却が行われている[7]機械加工では摩擦熱などの余分な熱が加工対象と道具の両方を劣化させるため、水や油を使って冷却する。人間の場合も、を蒸発させることで余分な熱を除去している。空調の分野では、水などの液体を使ってある場所から別の場所へ熱を移動させる[8]

液体は流体であるが、気体と比較すると圧縮性が非常に小さい。これを固体の容器に閉じこめた場合、気体の場合とはやや異なったものが出来る。柔らかい容器に入った液体は、体積は変わらないが変形はするため、気体の場合よりはしっかりとした手応えの衝撃吸収素材となる。ウォーターベッドはこれを利用している。また、内部の容積が変わらないような素材で出来たに液体を閉じこめた場合、パスカルの原理に従って片方からかかった圧力がもう片方へ直接に伝わる。油圧系はこれを利用している。ポンプ水車のような装置は古代から液体の動きを仕事に変換するのに使われてきた。油圧系ではポンプに圧力をかけて押し出し、その力を圧力モーターで動力に変換する。油圧系には様々な用途があり、ブレーキトランスミッション建設機械航空機の制御系などに使われている。液圧式プレス機械は様々な加工や修理に使われている[9]

液体は計測装置にも使われることがある。温度計は液体の熱膨張と流動性を利用することが多く、水銀などが使われている。マノメーターは液体の重さを使って圧力を測定する[10]
性質


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