消雪
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人力による除雪雪かき道具(左から順に、ジョンバ、スノープッシャー、アルミスコップ、ポリスコップ、スノーダンプ)

除雪(じょせつ)は、主に積雪地において交通や場所の確保、建物の損壊防止など冬季の円滑な社会活動の運営を目的として、を除くことである。
概要

家の出入口や駐車場など比較的小規模なもの、階段など機械の入れないところは、人力で行なわれるが、道路線路などで、積雪量や除雪範囲の大きい場合は、重機や除雪車が使用される。人力で行う除雪作業は、雪掻き、雪除け、雪片し、雪透かし、雪撥ね、雪掘り、雪放り、雪寄せ、雪投げなど地方・地域によって様々な呼び名がある。

なお、除雪された雪を、離れた場所に移したり、など邪魔にならない場所に捨てることを排雪と呼ぶ[1]

人の歩く道は足で踏み固め(雪踏み)、荷物の運搬ではソリなども利用された。鉄道や自動車の登場によって除雪の必要性は格段に増した。今日では冬季においても至る所で、自動車の通行が不可欠となっており、除雪は極めて現代的な問題である。

毎年かかる多額の除雪・排雪予算、排雪した雪の処分場所の確保、雪中の廃棄物の処理といった問題は、行政の悩みの種となっている。

屋根の雪下ろし時や除雪機の運転ミスにより、毎年少なからず死者や負傷者が発生する。2017年-2018年の日本における除雪時の死者は23人。うち19人は65歳以上の高齢者という特徴がある[2]

カナダでは法律により、家の敷地に沿う歩道の除雪義務が設けられている[3]。アメリカ合衆国のシカゴなどでも中心市街地では沿道住民の歩道除雪が義務づけられている[4]
建築物における除雪スノーダンプによる雪下ろし

除雪を行わない場合は、橋は崩落[5][6]、家は倒壊する危険がある[7]

家屋が雪の重みで崩れないようにするために屋根に上り、屋根に積もった雪を下へ落としたりする作業(雪下ろし)や、さらに積雪が多い場合には家の周囲に壁の様になった積雪の上へ屋根雪を投げ上げる作業(雪掘り)などとは区別されるが、これらを含む場合もある。

足元の滑りやすい高所での作業となるため、毎年、転落事故が後を絶たない。日本では年間100人ほどが除雪作業で亡くなっている[8]

自宅用に融雪機ロードヒーティングを設置する家や、家庭用の小型除雪機を持つ家もある。小型除雪機を利用することで、30cm以上積もった雪でも作業可能になる[9]。高齢者の一人暮らしなど、除雪することが困難な家屋が増えてきたため、除雪ボランティアが呼びかけられている地域もある。

日本では、屋根や道路から、より多くの雪を除雪するためにスノーダンプが用いられることがある。ただし、カナダなどでは道路に沿った側溝が設けられておらず、スノーダンプは一般的な用具ではなく、シャベルが用いられている[3]
除雪の歴史ドイツで使われていた除雪用馬車。1900年ごろの歴史再現[10]1909年、スウェーデン、ストックホルムの除雪馬車

多くの都市では、住民に除雪を行わせる条例が出されており、住民は通りの道を平らにする作業などを行う業者に委託することもあった[5]
日本

江戸時代以前における除雪技術に関する文献は、ほとんど見当たらない。

江戸時代になると、屋根のひさしを伸ばし各家同士を連結させた雁木造によって歩道に雪が降らないような対策が取られた[11]

雁木造がない歩道は、地域の住民が回覧板(道踏み板)を回すことで雪踏み当番を決めて、藁でできたバケツの底に草履が付いたような踏俵(ふみたわら)[12]や雪俵、専用のかんじきなどを履いて踏み固めた。木で作った雪べら、竹などを編んで作った新雪用のジョンパというスコップが使用された[13][14]。家の壁面に雪が積もると室内が寒くなることから、雪囲い、雪垣という竹や木材でできた囲いで壁面に直接雪が積もるのを防止した[15]

除雪機などなかったので第二次世界大戦前後までは、屋根では除雪用の木鍬(クシキ、コシキ)、屋根と地面に板を渡して屋根の上から安全に雪を降ろせる雪樋(ユキドヨ)、雪運搬用に用いられた雪串(ユキグシ)や背負い籠(コエカゴ)が用いられた[16][17]。茅葺屋根では、棟の方からバランスよく雪を降ろすなど家に負担をかけないような作法が見られる[18]

札幌市では、1886年にロシアから馬に曳かせて道の除雪・圧雪を行う三角ぞリが輸入され、そのほかの馬車も三角ぞりに改造して使用した[19]

日本では、1890年(明治23年)ごろから鉄道の除雪が考えられるようになった。1911年(明治44年)には、木製のラッセル車が日本の鉄道(北海道1台)に導入された。しかし、1927年までは、ほとんどの鉄道では人力による除雪が行われていた[20]
道路の除雪

ほとんどの国で公道の冬季道路管理を民間に委託している[21]。気象変動による発注額の増減を抑え、除雪業者の受託が安定的になるよう複数年契約にしている国も多い[4]

路面に雪氷を残さない状態をベアという[21]。また、継続的な降雪時に除雪や凍結防止作業を行う間隔をサイクルタイムという[21]
道路除雪の手法
道路除雪の機械

道路除雪は用途や規模に応じて、次のような機械を用いて行われる。「冬季作業車両」も参照

除雪トラック

大型トラックの前部に排土板(スノープラウ)を装備したもの。主に高速道路国道都道府県道の幹線道路で、連続して高速で雪を路側に排除する際に用いる。8ナンバーの特種用途自動車


ロータリー除雪車

車体前部に横向き水平の軸を持つオーガで雪を掻き込み、ブロワーで上方向に雪を飛ばす。吐出口の向きを変えることにより、雪を路側や路外に飛ばしたり、運搬排雪のダンプトラックに積み込んだりする。9ナンバーの大型特殊自動車


除雪ドーザ(装輪式)

排土板(スノープラウ)またはバケットを装備したホイールローダーなど。市町村道や私道などの生活道路や駐車場、交差点の多い市街地などに広く用いられる。0ナンバーの建設機械(自動車抵当法第2条但書に規定されている大型特殊自動車)を冬季に除雪に流用するのが一般的。


除雪ドーザ(装軌式)

ブルドーザーなど無限軌道を持つ整地用建設機械。地盤の状態が悪く、装輪式除雪ドーザでは踏ん張りが足りないような場面で用いられる。また、装輪式車両に比べて小廻りが効くことから、小型の車両が住宅地の狭い路地の除雪に用いられることも多い。しかし、長距離の道路上の移動に制約がある上、装軌式の走行装置は舗装路盤を痛めるため、日常の除雪ではあまり一般的ではない。

昭和30年代後期頃までは、旧陸軍戦車から砲塔を外して排土板を装着した車両が除雪ドーザとして使われていたという例もある[22][23]


除雪グレーダー(高速圧雪整正機)

車体下部にスクレイパーを持つ重量車。路面整正に用いる。


バックホウ油圧ショベル

傾斜地や入り組んだ場所の雪を掻き出したりするために用いる。


小型除雪車

歩道などを除雪する小型のロータリー除雪車や、小型特殊自動車のミニショベル等。


凍結防止剤散布車

車両後方に散布装置を備え、積載している凍結防止剤等を散布しながら走行するトラック。多くは8ナンバーの特種用途自動車


ダンプカー

運搬排雪などで雪を雪堆積場などへ運ぶトラック。多くは夏季に土砂を運搬している貨物自動車運送事業者の1ナンバーの車両を流用しており、荷台アオリに差し枠を入れて側板を取り付けてかさ上げしているものが多い。北海道トラック協会では行政や道路管理者との協議の上、この側板の高さを左60cm、右80cmとする取扱要領を自主制定している(左側を低くしているのは積み込みを容易にするため)。



国道を除雪する北海道開発局のクオン除雪車

日本除雪機製作所 HTR202型ロータリー除雪車

マルチプラウを装備した除雪ドーザー

作業中の除雪グレーダー

作業中の歩道用ロータリー除雪車


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