消防団員
[Wikipedia|▼Menu]

消防団員(しょうぼうだんいん)は、日本における消防団の構成員を指す。
消防団員の身分・任務
身分

消防団員の身分は、地方公務員法及び消防組織法に規定された、市町村における非常勤の特別職地方公務員である。しかし、消防本部を置かない市町村の消防常備部の消防団員にあっては常勤の一般職の地方公務員となる(常勤の消防団員は1990年代以降の近年に存在しなくなった事から各法令から削除されつつある)。また、東京都特別区の存する区域においては、各特別区ではなく、特別区の連合体としての東京都が消防責任を負うため(消防組織法第26条)、この区域内に存する消防団に所属する団員の身分は「東京都の非常勤特別職地方公務員」となる(消防組織法第28条)。消防団員は、地方公務員ひいては公務員全体の中でも最大の員数を有する職種である。

全国に設置された消防団に所属し、地域の防災に努める。類似の公共機関として、海防団(香川県観音寺市のみ)や水防団があり、消防団員と同じ性格を持つ職として水防団員海防団員という職種も存在する。

消防団長及び消防団員は地方公務員であるため、消防団長は消防団の推薦により市町村の長が任免し、消防団員は消防団を設置する市町村の長により承認を受けて、消防団長が任命することとされている(消防組織法第22条)。ただし、東京都の特別区の存する区域の消防団にあっては、東京都知事が、特別区の連合体の長として、この権限を行使する(消防組織法第28条)。

消防団員は法令で定められた身分であることから、ある程度の全国的に共通する点は多いが、その活動や任務、待遇については設置する市町村の条例に基づくため、一方では相違点も少なくない。例えば、東京都の消防団員は本来の消防団員たる任務の上に水防任務を有しているが、地方の消防団員では、水防団員の任務と明確に区別されており、消防団員と水防団員を兼任する者も多い(東京都と同様に消防団員たる任務の上に水防任務を有する自治体もある。なお水防事務は消防機関及び水防団が処理するため、消防団員として水防活動を行っても問題はない)。

本務が優先される限り、一般職国家公務員地方公務員が兼業出来る[1]
任務

平常時は本業に勤しむが、自分の居住(あるいは通勤・通学)する地域の消防団に所属することで、火災事故あるいは災害などが発生した際に消防活動を実施する者を指す(消防組織法第9条、第15条の2)。

消防団員の役割は、平時にあっては本業を有しながら消火訓練・応急手当訓練などを通して技術を修練するとともに、規律ある部隊行動をとるために消防の規律・礼式を習得すること、並びに防災思想の普及、すなわち広報及び啓蒙にあたることで災害の予防に努めることである。災害時においては消防団長の指揮に従い(なお、消防本部を置く市町村では消防団は消防長または消防署長の所轄のもとに行動する)、消火・応急手当・水防活動等にあたり、災害対策基本法及び国民保護法が適用された場合には市町村長の指揮を受けた消防団長の指揮に基づき避難住民の誘導にあたることになる。火災等の災害において、消防団員は消防警戒区域を設定して総務省令で定める者以外の者に対して、その区域からの退去を命じ、又はその区域への出入りの禁止し若しくは制限することができる(消防法第28条)。消防団員が消火活動又は水災を除く他の災害の警戒防御及び救護に従事するに当たり、その行為を妨害した場合は1年以下の懲役又は百万円以下の罰金(消防法第41条)、暴行及び脅迫をはかった場合、公務執行妨害罪が成立する。

消防団は平時は消防署と消防団が並列の関係にあるため、消防署の直接的な指示を受けることはないが、有事の際は消防団及び消防団員も消防署及び消防吏員と協力し行動するなどの有機的な連携が図られることも多い。消防本部を置く市町村では消防団本部は消防署内(同一建物内)におかれる場合がほとんどであり、消防団の運営や訓練には消防吏員の協力や指導によるところが大きい。今日、災害の危機や有事法制の成立により国民保護法における有事の住民避難などの分野にて活躍が期待されている。
消防団員の階級

消防団は階級制度を採用しており、消防団員の階級は消防組織法第15条の6に基づいて消防庁が定めている消防団員の階級準則において、次のとおり制定されている。実際の階級はほぼ全国的に統一されている。通常の階級制度では最高位の団長以下7階級により構成されている。なお、階級の編成は、ほぼ水防団員の場合と同様である(海防団員の階級制度とは若干の差異があるが非常に類似している)。

第1条 消防団員の階級は、団長、副団長、分団長、副分団長、部長班長及び団員とする。

第2条 消防団の長の職にある者の階級は、団長とする。

第3条 団長の階級にある者以外の消防団員の階級は、副団長、分団長、副分団長、部長、班長及び団員とする。

通常、消防団員教育等では班長以上を幹部団員、団員を一般団員と区別される。

標準的な消防団員の階級 括弧は主な役職序列区分階級英訳役職
1上級幹部団長Volunteer Fire Chief団長
2上級幹部副団長Assistant Volunteer Fire Chief副団長
3中級幹部分団長Volunteer Squad Chief団本部長(団本部の部長・本部の長は団長)・分団長
4中級幹部副分団長Assistant Volunteer Squad Chief副分団長
5初級幹部部長Volunteer Company Chief団本部員・部長
6初級幹部班長Volunteer Crew Chief団本部員・班長
7幹部候補団員Volunteer Firefighter団本部員・分団員

方面隊編成の消防団階級制度例区分階級役職
上級幹部団長団長
上級幹部副団長副団長・方面隊長
上級幹部庶務部長庶務部長
中級幹部上級分団長副方面隊長
中級幹部分団長団本部長・分団長
中級幹部副分団長副分団長
初級幹部部長団本部員・部長
初級幹部専任班長専任班長
初級幹部班長班長
幹部候補団員分団員

ラッパ隊等を有する消防団に見られるラッパ隊員の階級制度例区分階級役職
初級幹部隊長隊長
幹部候補隊員ラッパ班長・役員・隊員

消防団組織は団本部(通称:本団)、方面隊(※団本部と分団の中間組織的なものとして、または分団を統合した組織として設置する団が一部存在する)、分団、部、班という単位で構成されており、役職名と階級名は一致しているのが特徴である。一部に独自の組織構成・役職を置く消防団もある。

普段は別の業種につく地域住民が主たる構成者であるため、いわゆる常備消防ではないが、消火救急等の訓練を重ね、緊急時にあっては消防任務を果たす。その意味において緊急時の部隊行動は欠かせず、消防団員は団長以下、上位の階級にある団員または同一階級の先任団員の指揮を受ける必要がある。このため、地域住民同士である以上、日常的には階級に関わらず対等な関係であるが、いざ消防団としての活動においては階級に基づいて厳正な部隊行動がとられる。消防団員は団員の階級はじめ昇任によって上位の階級に就くことを補職という(消防吏員は昇級という)。

消防団は団長以下で構成する団本部を中心に、地域ごとに分団長以下で構成する分団、並びに分団の管轄地域内で部長以下で構成する部という単位で地域に密着した体制を形成している。消防団の活動においてその指揮行動にあっては現場最上位の分団長の役割が重く、団本部の指示を受けて、副分団長、部長の補佐の下、現場の団員を指揮することになる。消防団幹部の区分は団長及び副団長を上級幹部(消防吏員では消防司令)、分団長及び副分団長を中級幹部(消防吏員では消防司令補)、部長及び班長を初級幹部(消防吏員では消防士長)に分かれている。狭義の消防団幹部は副分団長以上、広義では部長ないし班長以上を指す。規定上は班長を幹部とすることとされているが、消防団運営において上級幹部及び中級幹部(つまり分団長、副分団長)以上が幹部会議を構成する消防団も少なくない。
階級章

団長副団長

分団長副分団長部長

班長団員


階級制度の変遷

警防団時代

警防団員の階級区分階級役職
上級幹部団長
上級幹部副団長
中級幹部分団長
初級幹部部長
初級幹部班長
幹部候補警防員

消防団員への教育と保障・評価
消防団員の任用及び保障

その地域に住所を持つ人(および、その地域に勤務地や通学先を持つ人[2])が消防団員に応募することができる。

常備消防を設置する市町村では、消防団はほぼ地域の消防署と同一建物内に消防団本部を設けており、団員の募集は消防署ないし消防署の分署(出張所)などが行っている。常備消防を置かない市町村(一部事務組合・事務委託により、常備消防と消防団の設置者が異なる場合を含む)では役場内に本部が置かれ、団員の募集は、役場の担当課、団員が行う。応募希望者は、これら消防機関ないし近隣に居住する団員、自治体の消防団主管課などの対応により正式な団員となる。近年は消防団が独自にホームページを設ける例も増加し、インターネット上での相談・応募が可能な消防団もある。消防団員は地方公務員に属するが、“来る者拒まず、必要なのはやる気だけ”で採用選考もなく、応募すれば消防団長の任命により消防団員に任用され、居住地域の分団・部等に配属される。

一般的に消防団活動はあくまで奉仕精神をもって行うものであり、職業として成立するものではない。地域によっては常勤団員を置いている場合もあるが、あくまで消防本部がない地域(消防非常備地域)に限られる。消防団活動は奉仕活動としての性格を有するゆえに、その対価は給与・俸給ではなく報酬[3]として支払われ、活動時に日額単位で一定金額の手当が与えられる(令和4年度の国の基準では団員の階級にある者に対し、年額報酬36500円、非常出動手当8000円、訓練手当4000円[4])。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:74 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef