この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
消滅時効(しょうめつじこう)とは、一定期間行使されない権利を消滅させる制度。取得時効とともに時効の一つである。消滅時効により権利が消滅することを時効消滅という。 消滅時効の援用権者は、当事者、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者である(145条)。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で、消滅時効の援用権者として判例法理で認められていた保証人、物上保証人、第三取得者について明文化された[1]。 消滅時効に類似した制度に除斥期間があるが、以下の点で異なる。 消滅時効の対象となる権利は消滅時効の起算点から一定の時効期間が経過したときに消滅する。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で、原則、権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間、債権者が権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間の二本立ての時効期間に整理され、いずれかが経過すると時効は完成する(166条)[2]。 不法行為による損害賠償請求権(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権を除く)については、短期3年、長期20年の時効期間とされており、いずれかが経過すると時効が完成する(724条)[1][2]。 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については、被害者救済のため、不法行為に基づく損害賠償か債務不履行に基づく損害賠償かを問わず、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないとき、権利を行使することができる時から20年間行使しないときとなる(167条、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権について724条の2)[1][2]。2017年改正前の旧法では、生命・身体の侵害の場合、債務不履行構成により契約責任を追及するか、不法行為構成により不法行為責任を追及するかにより期間制限に差があったため同様の期間となるよう調整された[1][2]。 定期金の債権は、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)168条1項で、次に掲げる場合に、時効によって消滅するとされた(旧169条からの変更)[1]。
民法について以下では、条数のみ記載する。
概説
消滅時効の援用権者
除斥期間との比較
援用の必要性消滅時効は援用を必要とするが、除斥期間は援用を必要としない。
効果の遡及効消滅時効の効果は遡及するが、除斥期間の効果は遡及しない。
起算点時効の更新(中断)の有無
消滅時効の適用範囲
時効消滅する権利
債権などの財産権(所有権や占有権などを除く)
時効消滅しない権利
所有権、占有権など
消滅時効の要件
債権の消滅時効(原則)
主観的起算点
債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときは時効が完成する(166条1号)[2]。
客観的起算点
債権者が権利を行使することができる時から10年間行使しないときも時効が完成する(166条2号)[2]。具体的な起算点
確定期限付の債務 - 確定期限の到来時
不確定期限付の債務 - 不確定期限の到来時
期限の定めのない債権 - 債権が成立したとき
返還時期の定めの無い消費貸借 - 債権成立後、相当期間経過後
契約解除による原状回復請求権 - 契約解除時
なお、期限利益喪失約款付きの割賦払債務の起算点については即時進行説と債権者意思説がある。
時効の中断
中断とは、時効の進行中に一定の出来事が起こると時効の期間進行が止まってしまい、また1から数え直しになること。時効が中断されていることで時効の援用ができないケースが多い。
不法行為による損害賠償請求権
短期
被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき(724条1号)。
長期
不法行為の時から20年間行使しないとき(724条2号)。なお、旧法では長期の20年は除斥期間とする解釈が判例の立場だったが、被害者保護の観点から、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で長期の20年も時効期間であることが明確化された[1][2]。
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権
定期金債権の消滅時効
債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
前号に規定する各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。
確定した権利の時効期間
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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