海陸風
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

「陸風」はこの項目へ転送されています。大日本帝国海軍が計画した戦闘機については「二十試甲戦闘機」をご覧ください。
湾口(写真奥)から陸(手前)へ吹く海風によりさざなみが立った水面(オーストラリア・ホバート

海陸風(かいりくふう)とは海岸地帯に見られるであり、昼はからへ吹く海風、夜は陸から海へ吹く陸風というように、風向が変化する[1][2]
原因と原理海風循環 (A) と陸風循環 (B)海風による収束が雲画像に現れた例(キューバ)

陸地表面は海洋表面に比べると暖まりやすく冷めやすい。陸のほうが比熱が小さいことが大きな要因だが、海は蒸発が多いため日射加熱が水蒸気へ潜熱として移る分が大きいこと、海は表層から下部への混合による熱輸送が大きいことも挙げられる。海面水温の昼夜の差は1を超えることもあるが平均では0.2℃程度の一方、地面の温度の昼夜の差はときに20℃を超えるほど大きい[1][2]

陸の表面で暖まった空気は膨張し密度が低くなって上昇する。はじめの等圧面が陸と海で同じ水平と仮定すると、陸の上空は同じ高さの海の上空よりも気圧が高く気温が低くなる。ここで静水圧平衡をとろうとして、気圧勾配に従って上空の空気は海の方へ移動する。この移動に伴って、海の表面のほうが陸の表面より気圧が高くなり、気圧勾配に従って地表付近の空気は海から陸へ移動し海風(かいふう、うみかぜ)が吹く[1][2][3][4]。先に述べた上空における陸から海への流れは海風反流(かいふうはんりゅう)、一連の循環を海風循環(かいふうじゅんかん)という。

夜に日射がなくなると、上記と逆に海の表面で暖まった空気の密度が低下して空気の移動が生じる[1][2][3]。地表では陸から海へ陸風(りくふう、りくかぜ)[1][2][3]、上空では海から陸へ陸風反流(りくふうはんりゅう)が吹き、循環を陸風循環(りくふうじゅんかん)という。

また、一日のうち朝と夕方に陸風と海風が切り替わる時間帯があり、その短い間は無風状態となる。これが(なぎ)である[5]

ふつう、大きな高気圧の圏内にあるなどして晴れて風が穏やかな日に現れる。総観スケールの強い風が卓越するような天気では目立たなくなる[3][5]

海風のほうが陸風よりも風速が大きい傾向にあり、風速が最大となる高度は海風の方が高い。また、風が吹く大気の厚さも海風の方が厚い[1][2]。発達した海風は地上から10メートルの高さで風速1-10メートル毎秒(m/s)のオーダーで典型的には5 - 6 m/s程度[3]。反流はこれよりも風速が小さいが、その層の厚さは海風よりも厚い[1]

海風より陸風が弱く薄いのは、日中は熱輸送(熱フラックス)が上向きで活発であり乱流拡散により層の高さが増す一方、夜間は熱輸送が下向きで小さく乱流も抑えられて層が低くなるためと解釈されている[2]。海風の層の厚さは日中発達する混合層の厚さに左右され、海風を駆動する力も混合層内に強く現れる[2]

海陸風の循環は水平方向の温度差を駆動力とする一種の対流である。鉛直方向の温度差による鉛直対流(熱対流)とは異なり、安定成層でも生じる[1][2][3]。水平規模はメソスケール[3]
海風前線

陸地に侵入した相対的に冷たい空気と暖かい空気の境目にできるのが海風前線で、その両側では湿度や風向にも差異が現れ、弱い寒冷前線ガストフロントに似たふるまいをする。大気が湿っていれば前線に沿って列をなす積雲が生じる[1][3]。大気が不安定の場合発達して雷雨となることがあり、例えばアメリカのフロリダ半島では海風前線に伴う雷雨がみられることが知られている[1][2][3]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:34 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef