海洋投入
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放射性廃棄物が詰められたバレル

海洋投入(かいようとうにゅう)とは、廃棄物へ沈め処分する、最終処分方法のひとつ。海洋投棄ともいう。

1980年代以降、国際社会において廃棄物の海洋投入による海洋環境への負荷が認識され、1972年ロンドン条約(廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約)が採択された。その後もバーゼル条約マルポール条約とともに廃棄物の国外流出に規制が強められ、ロンドン条約の1996年議定書においては、海洋投棄を原則禁止する画期的な措置が提示された。
経緯

1946年 アメリカが放射性廃棄物の海洋投入開始
[1]

1954年 『油による海水の汚濁の防止に関する国際条約』が採択(1958年発効)

1955年 日本が放射性廃棄物の海洋投入開始

1957年 IAEAにより、放射性廃棄物の海洋投入に関する多国間会合が設置

1969年 日本が放射性廃棄物の海洋投入を廃止

1972年 『ロンドン条約』が採択(日本は翌年署名、1980年批准)

1973年 『マルポール条約』が採択

1974年 高レベル放射性廃棄物について、海洋投入を認めない勧告[2]

1975年 ロンドン条約発効(日本の批准は1980年)。高レベル放射性廃棄物は海洋投入を禁止、低レベル放射性廃棄物は許可制とされる

1983年 調査・研究のため海洋投入を一時停止

1989年 『バーゼル条約』が採択

1993年 旧ソ連およびロシアによる違法な海洋投入の実態が明らかになる

1993年 海洋投入を認めない措置を、すべての放射性廃棄物に拡張

1996年 ロンドン条約の新しい議定書により、海洋投入の全面禁止が採択

2007年 日本の廃棄物処理法施行令改正施行により、海洋投入が禁止される

一般廃棄物
日本

人口集中が下水道整備を超過した1950年代、都市部の収集屎尿船舶による海洋投入処分が主流となっていた。当時、東京湾外の青い海原に広がる屎尿の黄色い帯が、「黄河」と評されたという。こうした屎尿の海洋投入は、排出元と排出先との間で軋轢を招いた。広島市と周辺13町の例では、高知県沖合に屎尿を投入してきたが、1975年、高知県に対して年間1400万円の迷惑料を支払うことを決定している[3]

その後、下水道の普及や屎尿処理の高度化により、屎尿や下水道浄化槽汚泥の(施設の建て替えなどによる)一時的な処分や、ボーキサイトからアルミニウムを精製する工程で発生する赤泥(せきでい)を処分する手段として、小規模に継続していた。

やがて、ロンドン条約1996年議定書を批准して国内法規を整備し、2002年廃棄物処理法施行令の改正と2007年までの猶予期間の終了により、海洋投入は原則として廃止された。

現在では、海底の浚渫土砂などごく限られたものだけが、海洋投入を認められている。
韓国

1988年から、汚泥や家畜糞尿、浚渫土砂などの日本海黄海への海洋投入を開始し、実績は1990年には107万トン、2005年には993万トンとなっている。しかし、廃棄物からの重金属検出による投棄反対運動や、輸出した魚介類の回収要請[4]により、海洋水産部が削減計画を発表した。韓国では漁船が海にゴミを全て捨てることが一般的となっているため、苦言を呈す者もいる[5]
韓国海軍

韓国海軍でも軍艦で出る生活ごみを全部海に捨てていることが判明している[5]
放射性廃棄物特に注釈が無い限り、出典は国際原子力機関(IAEA)の1999年の海洋投棄の報告書

放射性廃棄物では海洋処分と呼び、海洋投棄と沿岸放出に分けることがある。

海洋投棄は、ドラム缶などの簡易な容器に、アスファルトやセメント等で固化し封入したものを、水深の大きい海域へ投入・投棄する。放射性同位体の環境へ溶出する速度が、その半減期より十分長いことを、安全性の根拠とする。

核開発の初期、廃原子炉・廃核燃料等の高レベル放射性廃棄物が海洋投入処分されたが、固化処理(遅延処理)を行わなかった事例も見られる。核開発の初期においては各国で廃炉になった原子炉、使用済み核燃料等の高レベル放射性廃棄物を含めた固体・液体の放射性廃棄物が海洋投棄された。海洋投棄は1946年のアメリカによる北東太平洋への投棄に始まり、1975年には高レベル放射性廃棄物の海洋投棄が禁止され、1993年に全面禁止となる迄に日本(1955?69年の間に実施)を含む13ヶ国による海洋投棄が報告されている。海洋投棄は太平洋北東部、大西洋北西部と北東部、北極海、太平洋北西部で行われ、それらの放射能の総量は8.5x1016ベクレル (Bq) と推定されている[6]。参考までに福島原発事故による放射能の海水への放出量は東電推定で0.47x1016Bq、原子力安全委員会・京大推定で1.5x1016Bq[7]、フランスの原子力安全委員会推定で2.7x1016Bqとなっている[8]。ただし海洋投棄の場合は一応投棄地点や投棄手段(コンテナ、固化等)などを調査・検討の上での投棄であるので原発事故による海洋への漏出による影響とは比較は出来ない。

投入地点は太平洋北東部と北西部、大西洋北西部と北東部、および北極海で、放射能の総量は 8.5x1016ベクレル(Bq)と推定されている[9]

いっぽう沿岸放出は、液体廃棄物(廃液)の放射能が許容レベルより低いことを確認後、さらに海流などで希釈・拡散させるもので、全て管理下にあることが前提となっている。


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