この項目では、海の底について説明しています。
麻雀における海底(ハイテイ)については「海底 (麻雀)」をご覧ください。
X-ファイルのエピソードについては「海底 (X-ファイルのエピソード)」をご覧ください。
水深測量による海底地形。陸上地形同様、山や尾根、谷、平地が確認できる。
海底(かいてい)とは、海の底のことである。より厳密には、海中の地殻やその上層の地面を指す。
海の海水以下にある地面であれば水深の深い浅いに拠らず海底には違いないが、その様相は水深によって大きく異なる。潮汐により陸地になったり海底になったりする干潟を含めて、太陽光線が直接届く浅い海底では多様な生物が活発に活動・繁殖し、漁業や遊泳などで人間との関わりも深い。太陽光線が届かず水圧も増す海底では生物の種類や量が限られ、更に大深度な深海ともなると生物活動はかなり限定される。
深海調査の歴史は短く、まだ不明なことも多い。広大な大洋底の調査も進んでおらず、21世紀に入ってからも様々な発見が続いている。 大陸周辺では水深200m以浅の大陸棚が広がっていることが多い。海底も有光層に属し、多様な生物が生息している。石油などの天然資源も豊富かつ採掘しやすく、国家にとって海底の利権も重要視されている。そのため国際法に則り経済水域などが規定されており、その境界を巡って複数の国家の主張が対立することも多い。 大陸から見て、大陸棚以遠には大陸斜面が存在し、それ以遠の大洋沖合いの海底の大部分は水深が約6,000mの平坦な地形となっている。そのほかの部分は、海嶺と呼ばれる海底山脈や海溝で構成されている。詳しく見ると、海盆、ギョー(海山)など、海底にも多様な地形が見られる。 国際水路機関(IHO)と国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の政府間海洋学委員会(IOC)の主導によって海図に表記する地名の統一が図られ、その一環として海底地形の名称の統一が行なわれている。以下にその日本語名称と定義を示す。
海底地形
高み地形
海嶺(ridge)
いくつかの意味がある。(a)急峻な斜面を有する細長い高まり。(b)細長い高まりで、しばしば大洋の海盆を分ける。(c)地球的規模を持つ大きな大洋の山系。
海台(plateau)
かなりの広さを有する平坦ないしはほぼ平坦な地域で、一方またはそれ以上の側面で急に深くなっているもの。
海膨(rise)
海底から緩やかに、全体としてなだらかに盛り上がっている幅広い高まり。
海山(seamount)
大きな孤立した高まりで、特徴として円錐形をなす。
ギヨー、平頂海山(guyot or tablemount)
比較的滑らかで平らな頂部を持つ海山。
海丘
孤立した小さな丸い高まりで、孤立した特徴がある。
海脚
大陸棚の海底には多様な生物が生息している。藻類、貝類、ヒトデ・ウニ・ナマコなどの棘皮動物、カレイ目などの魚類、熱帯地方ではサンゴが多い。これらの生物を採取する方法として、地引網、海底トロールなどが知られている。 一方、海嶺周辺の海底にはチムニーと呼ばれる熱水噴出孔が存在し、地球の熱エネルギーや硫化水素を利用した生態系が存在する。 こういった生物は、地上や海面の生物が酸素を使って好気呼吸しているのとは全く違う嫌気呼吸という代謝機構を持っており、これらは単体の酸素が少なかった原始地球における初期の生物(→生命の起源)が行っていた方法ではないかと考えられている。この環境に住む微生物は極限環境微生物に含まれる。 極限環境微生物はエネルギーを地熱や硫黄化合物などから得ているが、この微生物を食料とする生物も見られ、更にその微生物を捕食する生物群も他の生物に捕食されたりしている。 大陸沖合いの海底や海溝では体積における生物の種類・個体数が少ない。しかしバチスカーフ・トリエステ号の潜水によって、世界で最も深いマリアナ海溝にもヒラメが存在することが確認されている。 こういった大深度の海底に生息する生物群の多くは、独自進化を遂げているが、環境の変化が乏しいことから、生物的にも古い形質を残すものも見られる。また深海では酸素が少ないほか水温も低いこともあり、これら生物は新陳代謝も非常に緩やかで、エネルギー消費が抑えられた「省エネ生物」だとみられている。 これらの生物は、有光層で蓄えられた生物資源的なエネルギーが、それら生物の死骸の形で沈降してきたものを利用していると考えられている。クジラは地球上でも最大規模の動物だが、深海海底では朽ちかけたクジラの骨周辺にエビなどの生物がコロニーを作る様も確認されている(鯨骨生物群集)。 これら深海生物の多くは、高い水圧に順応して低い水圧では致命的なダメージを負うものもいるが、逆に一部の生物は夜間食料となる生物資源を求め、海面近くまで浮上してくるものも見られる(日中は水深200m付近にいるサクラエビなどもその一つ)。こういった夜間海面近くまで浮上してくる生物もまた、深海に生物的なエネルギー資源を運搬していると考えられている。 いわゆるマリンスノーなど海底に沈降するデトリタスは、生命誕生以降の歴史の中で海底に降り注いでいるが、これを嫌気分解してメタンなどにする古細菌類も存在する。こうしたメタンがメタンハイドレートなど常温一気圧下では自然発生しにくい特殊な状態で海底に蓄積されているところもある。
海底火山に依存する生物
深海の生物深海の生物に関しては深海の生物を参照。