浦島効果
[Wikipedia|▼Menu]
時間の遅れは、異なる加速度の下にある2つの時計が異なる時間を指す理由を説明する。例えば、ISSにおける時間は、地球上の時間よりも1年につき0.009秒遅れる。GPS衛星が機能するためには、地球上のシステムと協調するために、時空の曲がりを考慮する必要がある[1]

時間の遅れ(じかんのおくれ、英語: time dilation)は、相対性理論が予言する現象である。2人の観測者(英語版)がいるとき、互いの相対的な速度差により、または重力場に対して異なる状態にあることによって、2人が測定した経過時間に差が出る(時間の進み方が異なる)。

時空の性質の結果として[2]、観測者に対して相対的に動いている時計は、観測者自身の基準系内で静止している時計よりも進み方が遅く、または早く観測される。また、観測者よりも強い(または弱い)重力場の影響を受けている時計も、観測者自身の時計より遅く、または早く観測される。いずれも静止している観測者や重力源から無限遠方の観測者を基準として、時計の進み方が「遅い」と表現される。このような時間の遅れは、片方だけを宇宙飛行に送った1組の原子時計の時間のわずかなずれや、スペースシャトルに搭載された時計が地球上の基準時計よりもわずかに遅いこと、GPS衛星やガリレオ衛星の時計が早く動くようになっていること[1][3][4]東京スカイツリーの展望台に置かれた光格子時計が地上のそれよりわずかに進んでいる事[5][6][7][8]で実証されている。時間の遅れは、SF作品において未来への時間旅行の手段を提供するために使われることがある[9]
速度における時間の遅れ詳細は「特殊相対性理論#時間(時刻の隔たり)の伸び」および「en:Time dilation of moving particles」を参照青い時計の局所基準系からは、運動している赤い時計の時間は遅くなっていると認識される[10]

特殊相対性理論では、基準となる慣性系内の観測者から見ると、観測者に相対して動いている時計は、観測者の基準系内で静止している時計よりも時間の進みが遅くなって観測されることを示している。相対速度が速ければ速いほど時間の遅れは大きくなり、光速 (299,792,458 m/s) に近づくにつれて時間の進み方がゼロに近くなる。これにより、光速度で移動する質量のない粒子が時間の経過の影響を受けないということになる。

静止している観測者の時間の刻み幅を Δ t {\displaystyle \Delta t} とすると、運動体の時間の刻み Δ t ′ {\displaystyle \Delta t'} は、光速を c {\displaystyle c_{}^{}} 、運動体の速さを v {\displaystyle v_{}^{}} として、 Δ t ′ = 1 − ( v / c ) 2 Δ t {\displaystyle \Delta t'={\sqrt {1-(v/c)^{2}}}\Delta t}

となる。これは、時間と空間を合わせて座標変換をしないと、電磁気学の法則に現れる光速 c {\displaystyle c} の意味が説明できない、という理論的な要請から導かれたローレンツ変換による帰結である。この事実は、宇宙から飛来する素粒子宇宙線)の寿命が地上のものより長いことなどから確認されており、現代の素粒子論やの理論は、特殊相対性理論を基礎に構築されている。

以下の説明では単純化するため加速・減速を考えず、等速直線運動を前提とする。宇宙船が光速の90%の速度で航行しているとき、船外の静止している観測者が1年間を測定する時間は、宇宙船の中では上式より Δ t ′ = 0.436 Δ t {\displaystyle \Delta t'=0.436_{}^{}\Delta t} となり、宇宙船の時計の刻み幅は静止系の約0.44倍である。つまり宇宙船内の時計では、まだ0.44年、即ち5ヶ月半しか経過していない。

この現象を利用すると、光速に近い宇宙船で宇宙を駆けめぐり、何年か後、出発地点に戻ってきたような場合、出発地点にいた人は年を取り、宇宙船にいた人は年を取らないという現象が生じ、宇宙船は未来への一方通行のタイムマシンの役目を果たすことになる[2]ピエール・ブールの『猿の惑星』はこのアイデアに基づいたものであり、オリオン計画はこのアイデアに向けた試みであった。なお、宇宙船から静止系を見ると、静止系は相対的に運動していることになるが、時間の遅れが生じるのは宇宙船側である。詳しくは双子のパラドックスの項を参照のこと。

なお、この現象は光速に近い速度でなくとも、日常生活における速度でも極く僅かではあるが生じている。現に航空機に載せた原子時計の進みがごく僅かに遅れる事が実験によって確認されている。ただし宇宙船人工衛星の場合は、速度の影響のみならず重力場の有無による影響もある事に注意する。
重力による時間の遅れ詳細は「en:Gravitational time dilation」を参照

一般相対性理論においては、重力は空間(時空)を歪ませ、時間の進みを変化させる。このため重力ポテンシャルの低い惑星上では、重力ポテンシャルの高い宇宙空間に比べて時間が遅く進むことになる。例えば、全地球測位システム(GPS)では、GPS衛星が地表よりも重力ポテンシャルが高いところを回るので、地球上(正確には、ジオイド表面上)の時計に比べて1秒間に100億分の7秒速く進む。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:60 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef