浄化槽
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

腐敗槽(セプティック・タンク)については「腐敗槽」をご覧ください。

浄化槽(じょうかそう)とは、一般家庭等から出る生活排水を嫌気性処理[注 1]と好気性処理[注 2]の双方を利用して浄化する分散型汚水処理技術[2]

浄化槽は日本で独自に開発された排水の汚水処理設備である[2][3]。浄化槽は各戸で汚水処理をおこなう分散処理設備の一方式であるが、分散処理の設備として世界的に主流となっているのはより簡易な構造の腐敗槽(セプティック・タンク)である[4]。両者を比較すると、浄化槽は内部が複数の槽に分かれ嫌気性処理と好気性処理の双方を利用する設備だが、開発途上国などを中心に利用されている腐敗槽(セプティック・タンク)は消毒槽や沈殿槽などの分化(処理工程)を備えず、嫌気性処理のみを利用して汚水を浄化する設備である[2]
歴史浄化槽(合併処理浄化槽)本体合併処理浄化槽の設置例

日本における生活排水の処理システムには、代表的なものに下水道、農業集落排水施設、浄化槽がある[5]。このうち浄化槽は歴史的には下水道を利用できない地域において、便所を水洗化する場合に設置しなければならない設備として定義されてきた[5]。そのため便所の排水だけを処理する「単独処理浄化槽」と台所、洗面所、風呂場などを含め家庭から出る排水をまとめて処理する「合併処理浄化槽」の二本立てとされていたが、浄化槽法の改正により単独処理浄化槽は2001年(平成13年)4月からは原則として新設することができなくなった[6]。これにより浄化槽法上の「浄化槽」の定義も改められ、浄化槽の定義から単独処理浄化槽に該当する文言を削除し、既設の単独処理浄化槽は「みなし浄化槽」として法律を適用し維持管理等を行うことになった[5](後述)。
20世紀

第二次世界大戦後、大都市圏では都道府県または保健所設置市に届出をおこなうだけで設置できる「共同浄化槽」が設置されるようになったが、当初は進駐軍の駐屯兵舎や軍人軍属用住宅の設営時に水洗便所を設置する際の汚水処理のために施工されたといわれる[5]。この「共同浄化槽」は昭和30年代からの日本住宅公団による住宅団地の造成によって設置が本格化していった[5]。浄化槽は建築基準法汚物掃除法で規制されていたが、1954年(昭和29年)に汚物掃除法にかわり清掃法が制定され、さらに水槽便所取締規則(警視庁令第13号)が廃止されるとともに新たに浄化槽の維持管理基準が定められた[5]

1965年(昭和40年)、清掃法の一部改正とそれに伴う政省令の全面改正がおこなわれ、法令で「単独処理浄化槽」と「合併処理浄化槽」が明記された[5]

1966年(昭和41年)には公害審議会(当時)が「し尿処理施設およびその管理に関する基準」を厚生大臣(当時)に答申し、「し尿は西欧なみに水洗便所によって処理することを第一の目的とすべきである。」とし、公共下水道を軸に浄化槽の普及を促進することが記され、答申は閣議決定された[5]

技術的には昭和30年代中頃までの浄化槽は現場打ちやコンクリート管組み立ての設備だったが、それ以後はガラス繊維強化プラスチック(FRP、Fiberglass Reinforced Plastics)製のばっ気型浄化槽(曝気型浄化槽)が主流となり、工場で大量生産されたものを住宅に設置するようになったため単独処理浄化槽の普及が進んだ[5]。一方で普及が先行して、法律や行政、業界による対応が追い付かず、設備の不適切な設置や管理により、公共用水域の水質汚濁源となる例や、悪臭や騒音などの問題が地域住民間でのトラブルの原因につながる例も発生して社会問題化した[5]。そのため浄化槽行政の一元的運営や浄化槽関係者の責任を明確にするための資格付与を目的に、1977年(昭和52年)5月に全国浄化槽団体連合会(全浄連)が結成された[5]

1982年(昭和57年)8月には浄化槽法案が議員立法として提出され、1983年(昭和58年)5月に浄化槽法が成立し、1985年(昭和60年)10月に全面施行された[5]。浄化槽法の成立により、製造、設置、保守点検や清掃など規制が強化され、浄化槽設備士や浄化槽管理士の身分資格が確立された[5]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:62 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef