洞窟
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洞窟

洞窟(どうくつ、: cave, grotto, cavern)とは、地中にある一定の大きさの空間。洞穴(どうけつ、ほらあな)とも言う。一般には地下空間のうち人間が入ることが可能なものをいい、洞口の長径が奥行きよりも小さければ洞長2m程度でも洞窟と呼ばれる[1]

水平方向に伸びている横穴や井戸状に開口している縦穴(竪穴)などがある。通常、洞内空間は大気で満たされている[1]。内部の気温は、一般に洞窟がある外部の平均気温になり、内部は外部と較べると夏は涼しく・冬は暖かい。また地中であることも含め、一般に湿度が高い。洞口部では日光が差し込むこともあるが、氷河洞・雪渓洞などを除いて奥部は完全な暗黒となる。洞内空間が地下水海水・堆積物で満たされている洞窟もある[1]。完全に水没しているものは水中洞窟、特に海面下に沈んだものは沈水洞窟と呼ばれる。

広義には自然洞窟だけでなく人工洞窟や混成洞窟を含む[1]
洞窟の種類アラバマ洞窟(アメリカ合衆国

広義の洞窟は自然洞窟、人工洞窟、混成洞窟に分けられる[1]
自然洞窟

自然洞窟は火山洞窟、侵食洞窟、溶食洞窟、構造洞窟に分類される[1]

火山洞窟 - リフト洞窟、ガス噴出孔洞窟、溶岩洞窟など[1]

侵食洞窟 - 海食洞窟、湖食洞窟、河食洞窟、風食洞窟[1]

溶食洞窟 - 石灰岩洞窟、石膏洞窟、岩塩洞窟、氷河洞窟など[1]

構造洞窟 - 節理洞窟、断層洞窟、地震洞窟など[1]

人類以外の動物による掘削洞窟

人工洞窟

人工洞窟にはシェルター、トンネル、坑道などがある[1]
混成洞窟

自然洞窟と人工洞窟の両方の部分からなるもので、鉱山坑道と自然洞窟の連結洞窟などがある[1]
洞窟の生成
洞窟の生成

主作用によって次のように分けられるが、実際には複数の作用が組み合わさっていることが多い。

溶食
作用(石灰洞/苦灰岩洞・石膏洞・氷河洞/氷洞/雪渓洞など)溶食の原因は、石灰洞/苦灰岩洞では流水中の炭酸(稀には硫酸や塩酸)の存在、石膏洞では水に対する石膏の大きな溶解度、氷河洞/雪渓洞/氷洞では流水や地熱による融解である。

波食作用(海食洞・湖食洞・河食洞など)

削磨作用(地下水流や河流による硬岩盤の侵食による。花崗岩洞・甌穴洞など)

洗掘作用(地下水流や河流による未固結/弱固結岩層の侵食による。シラス洞・黄土洞・風化花崗岩洞・崖錐洞・滝壺洞など)

風食/風化作用(風で吹きつける砂粒による削剥や、岩層の表面に滲出する地下水の風化作用などによる。砂岩洞・凝灰岩洞・タフォニなど)

昇華作用(氷河洞/氷洞/雪渓洞)

火山作用(熔岩洞・樹型洞・噴気孔洞など)

火成作用(花崗岩や各種鉱床中に生じた晶洞[2]など)

裂開作用(地滑りやその他の物理的応力による割れ目洞・クレバスなどの構造洞窟)

崩落作用(地下にある洞窟の上部が崩れ落ちて生じた陥没洞や月面の巨大垂直洞窟[3]

爆発作用(西シベリア、ヤマル地方の永久凍土地帯に生じた巨大垂直洞窟。温暖化によって発生したメタンガス爆発の可能性が大とされている[4]

膨上作用(無水石膏層の吸水による体積膨張で地層がたわむように膨れ上がってできた洞窟[5]

集積作用(巨岩塊が積み重なった隙間がつくる擬似洞窟)

被覆作用

造礁作用(サンゴ礁の海中で造礁性生物の成長によってできている洞窟)

晶結作用(石灰華洞、氷瀑洞、氷塔洞窟 [6]


掘削作用(ヒトや動物によって掘られた洞穴)

先史時代:ヨーロッパに多い新石器時代の洞窟状のフリント鉱山跡や、ゾウや水牛が塩類を求めて掘ったケニヤの洞窟 [7]

歴史時代以降:地下鉱山採掘跡、トンネルや防空壕、地下水路、地下墓地/寺院、地下住居など


洞窟に似たものを作り出す作用

腐食作用(巨大樹木に生じた空洞【うろ】)

建造作用(ピラミッドなどの石造/コンクリート建造物等の内部空間)

洞窟の生物エジプトルーセットオオコウモリ(日中は洞窟内で休む)詳細は「洞穴生物」を参照

洞窟には外界では目にしない、特殊な生物が見られることがある。まとめて洞穴生物と言うこともある。

その性質から、大きく以下の2つに分かれる。
洞窟外と出入りするもの
コウモリアブラヨタカホラアナグマのように外で採餌し洞窟内で休んだり繁殖したりするものや、カマドウマゴキブリ類などのように薄暗いところが好きで洞窟にも多く見かける、というものである。これらは分布の広いものが多く、鍾乳洞だけでなく、溶岩洞海食洞、人工的な洞窟でも見かける。
ほとんど洞窟にのみ棲むもの
洞窟内にしか見られない、あるいはその周辺の地下水などからも見つかるもの。特殊な適応が見られたり、固有種であったりと、洞窟内の独特の環境に特化・特殊化が進んでいるものが多い。節足動物の仲間が多く、大抵は数の多い鍾乳洞で見られるが、最近にできた富士山の溶岩洞や人工的な古い坑道でも見つかることから、洞窟内での進化・適応という考え方が改められた[8]。他に大きいものではホライモリや洞穴生の魚類などが知られている。
利用と文化
利用

洞窟は、信仰・祭祀・修業の場、住居、墓地、栽培養殖場、氷室 ・貯蔵庫・醸成庫、洞窟治療所などとして利用されている[1]

洞窟は古くから人間に利用されてきた。文明が発達する以前から、天然の洞窟は往々にしてヒトの住居となっていた。主として洞口に休息の場を求めたと考えられる。隠れ場所としては優れているが、ヒトは夜目が利かないから、奥部までを利用したものではなかったであろう。例外的に、アメリカやヨーロッパの洞窟でミネラルの採取や、原始宗教目的での壁画等の作成のために奥深くまで入った例が知られている。

洞窟を古来住居や軍事、祭祀等に利用した例は多い。文明が発達した後も、中国の窰洞などのように、人工的に洞窟を掘り、利用していることがある。それ以外にも、様々なものを格納し、保存する場所、またゴミ捨て場としても使われた。洞窟内の温度、湿度は一定しているため、農産物などの保存、ワインの醸成場、キノコの栽培場、氷室等に利用されている例がある。また、ハンガリーやイタリアなどの温水が湧くカルスト地域では浴場として利用されている洞窟がある。また呼吸器系疾患の治療に利用されている洞窟もある。

洞窟内の湧水や鍾乳石、洞窟堆積物も資源として利用されている[1]

そのほか、洞窟は観光資源としても利用されていたり、学術研究やスポーツでの洞窟探検の場にもなっている[1]
文化

日本では洞窟内に神仏を祭った例が各地にみられ(宮崎県鵜戸神宮、埼玉県橋立鍾乳洞など)、洞窟そのものをご神体とする例も多い。

文化的には洞窟は死後の世界や異世界への入り口と見なされた例が多い。イザナギノミコトイザナミノミコトを求めて黄泉の国へと行ったのも地下へ続く洞窟を通ってである。琉球地方では、かつて洗骨後の追葬(風葬)のために石灰岩の小さなほら穴が利用されていた。

同時に、洞窟は危険なものでもある。奥は闇で何も見えず、行方不明になりやすく、縦穴に落ちる可能性もある。また、危険な獣が棲み着いている場合もある。中国ではトラは洞穴に棲むものとされ、ついでに妖怪や魔物も洞窟をねぐらとする。日本にも怪奇伝説のある洞窟は多い[9]。また、英雄の冒険は往々にして洞窟を探検し、猛獣や魔物を退治する。いわゆるロールプレイングゲームにおけるダンジョンはこれを模したものである。

洞窟の方言 [10]


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