洞窟生成物
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洞窟生成物 (どうくつせいせいぶつ) とは洞窟堆積物あるいは洞窟充填堆積物の一つで、洞窟内の天井や壁・床に滲出する地下水、あるいは洞窟内を流れる地下水流中に溶存した鉱物分の晶出/沈殿によって二次的に形成される化学沈殿物の総称である。

洞窟石灰生成物、洞窟二次生成物[1]、あるいは洞窟装飾物とも (洞窟は省略されることも多い)。広義では鍾乳石に同義。

特別な例として、熔岩洞にみられる熔岩鍾乳や珪酸鍾乳も洞窟生成物の一つであるが、熔岩鍾乳は地下水中から晶出したものではなく、熔岩が固まったもので二次的な成長はしないので、厳密な意味では鍾乳石ではない。しかし珪酸鍾乳は成長するという意味で鍾乳石である。
化学 (鉱物) 組成

多くの洞窟生成物は石灰洞 (鍾乳洞)内で見られ[2]、その化学組成はおもに炭酸カルシウム CaCO3 (鉱物名は方解石、岩石名は結晶質石灰岩) である[3]

少数ではあるが生成条件によっては同じ化学組成を有する霰石や、石膏 CaSO4・2H2O[3]水酸燐灰石 Ca5(PO4)3(OH)[3]褐鉄鉱 FeO(OH)・nH2O、珪酸 Si(OH)4、 氷 H2O、粘土、珪藻などからなる例もある。

特異な例として、金属鉱床にともなう洞窟や坑道内、熔岩中の空隙などには、針鉄鉱 FeO(OH)、孔雀石 Cu2CO3(OH)2、胆礬 (たんばん) CuSO4・5H2O、岩塩 NaCl、メノウ SiO2、蛋白石 SiO2・nH2O、石英 SiO2などの例が見られることがある。
生成過程

洞窟生成物をつくる鉱物には上記したもの以外にも多くの種類があり、これらを洞窟鉱物と総称する。これまでに世界各地で約260種が確認されている[4][要ページ番号]。大多数の鉱物は、水の蒸発や水温の低下等によって溶存成分が過飽和に達し、結晶が析出するために生成する。しかし量的に大半を占める炭酸カルシウムからなる石灰洞内の洞窟生成物[3]が過飽和に至る生成過程は、それとは違って以下のとおりである[注釈 1]。詳細は「カルスト地形」を参照

雨水は土壌中の高い二酸化炭素分圧 (空気中の数倍から数十倍) によって大量の二酸化炭素を得、弱酸性へと変わり、石灰岩の割れ目に沿って浸透する過程で石灰岩 (主成分は炭酸カルシウム) を溶解する。この地下水が洞窟内に滲出したり、地下水流をつくって流れ込むと、水中にとけ込んでいた二酸化炭素が洞内気の方へ逸散する。洞内気の二酸化炭素分圧は、煙突効果による洞内気流の存在によって、外気よりも若干高い程度に過ぎないためである。

二酸化炭素の含有量が少なくなった水は炭酸カルシウムの溶解能を著しく減少させる。結果的に過飽和となり、余剰分が方解石として晶出を始め、洞窟生成物が生じる。二酸化炭素の逸散は水滴や薄膜状の水の場合により効果的に進行し、局部的な流速増大による圧力減少や撹拌/飛沫化が大きく作用する。また洞口部では外気の影響による水の蒸発、水温の増大がこれを加速する。

洞内気の二酸化炭素分圧は、夏季よりも冬季において低くなる (煙突効果によって表層の二酸化炭素分圧が高い土壌空気を引き込まない) ために、洞窟生成物の成長は冬季に進むという考え方がある[疑問点ノート][7]


沖縄県の玉泉洞にある名所「黄金の盃」の巨大な畦石 (リムストーン) は水温の高い本流と低い支流との合流点に形成されており、水温上昇が生成要因と考えられている[8]

方解石晶出の過程で、水に含まれていた鉄イオンや土壌粒子等が取り込まれ、洞窟生成物は一般に淡茶色系の色彩を呈するが、これらの不純物がない場合には白色や透明感を有するものが生じる。
分類
外観を示す名称

鍾乳石 (つらら石)、石筍石柱 (石灰華柱、石灰石柱)、畦石 (輪縁石)、石灰華段、流華石 (流れ石)、石幕 (石灰幕)、鍾乳管、洞窟サンゴ、曲がり石、石花、洞窟真珠など[9]

沈積形態を示す名称

トラバーチン: 層状を呈する緻密、あるいは多孔質な石灰質化学沈殿岩。上記の形態分類による多くのものを包括する。炭酸性の熱水泉や温水泉など、洞窟外の環境で多く生じている。

ケイブ オニックス: 洞窟成の弱い透明感のある緻密な縞状トラバーチン。オニックス マーブルとも。装飾石材に用いられることがある。

トゥファ: 化学沈殿に加えて生物による光合成が作用して形成される多孔質かつ軟質の石灰質堆積物。

ムーンミルク (洞窟生成物)(英語版): 微粒の複数種炭酸塩鉱物のクリーム状集合体。コウモリを栄養とするバクテリアなどの微生物が石灰の結晶化を妨げるのが生成の理由と考えられている[10][11][12][9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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