洗礼盤
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Grotlingbo教会(スウェーデン)のロマネスク様式の洗礼盤。洗礼盤を得意とした彫刻家Sigrafによる。現代風の洗礼盤。Co-Cathedral of the Sacred Heart(ヒューストン)。2008年製作。

洗礼盤(せんれいばん、ラテン語: fons[1], 英語: font[2], baptismal font)とは、キリスト教洗礼(バプテスマ)に用いられる教会用具である。
滴礼・灌水礼用の洗礼盤

多くの教派では滴礼[注釈 1]や灌水礼[注釈 2]のために作られた洗礼盤が用いられる。最も単純な形としては、約150cmほどの台座に水盤を置くための支えが取り付けられたものがある。素材は彫刻が施された大理石や木材、金属など多岐にわたる。形状も様々だが八角形のものが多く、これは天地創造を想起させるとともに伝統的に生後8日目[注釈 3]に行う割礼に関連づけられたものである。また、三位一体を想起させるために三角形となっているものもある。彫刻が施された洗礼盤の蓋。1930年代製作。米国聖公会善き羊飼い教会(ペンシルベニア州・ローズモント)

洗礼盤は入信の儀式である自身の洗礼式を信徒に想起させる目的でしばしば礼拝堂の入口付近に置かれる。中世ルネサンス期には多くの教会において洗礼堂(ラテン語: baptisterium)と呼ばれる洗礼盤を収めるための特別な礼拝堂や独立した建物が設けられた。洗礼堂もしばしば八角形の形状をとる。八角形の洗礼堂は13世紀から洗礼盤とともに一般的なものとなり、14世紀には八角形であることが制度化された[3]アンブロジウスは八角形の洗礼盤について「8日目[注釈 4]にキリストは復活によって死の束縛を解き放ち、墓から死者たちを受け入れるから」だと記している[5][4]。また、アウグスティヌスも同様に8日目について「キリストの復活によって永遠に聖なるものとなった」と表している[5][6]

洗礼盤に注がれる水の量は一般的に少量(1.5リットルほど)である。ポンプや湧水、重力などを利用して水流を作り小川を模したものもある。このような視覚的・聴覚的なイメージは、洗礼の「生きた水」という側面を表現するためである。特別な聖水を用いる教会もあれば、水道水をそのまま用いる教会もある。また、洗礼盤に水を注ぐために特別な銀製の水差し(en:ewer)が使われることもある。

洗礼盤を用いた洗礼の方法は、古典ギリシア語の動詞βαπτ?ζω(バプティゾー)に従って「振りかける」、「注ぐ」、「洗う」、「浸す」のいずれかが用いられる。βαπτ?ζωには「沈める」という意味もあるが、ほとんどの洗礼盤は小さすぎるために浸礼には使用できない。ただし、幼児を浸すのに十分な大きさの洗礼盤も存在する。
地域によるタイプ(イングランド)

イングランドのある地方では歴史的に一般的であったデザインの洗礼盤が見られる。イングランド南東部バッキンガムシャーとその周辺地域のいくつかの教会では「エイルズベリー・フォント(英語: Aylesbury font)」と呼ばれるものが見られる。このタイプの洗礼盤は12世紀後半の1170年頃から1190年頃にかけて作られたもので、典型的な聖杯型であり、縁が溝彫りによって装飾的な彫刻が施されている。このタイプはノルマン様式建築の好例とされ、エイルズベリーの聖マリア教会で発見されたものにちなんで名付けられた[7][8]。他にも、同じくバッキンガムシャーで発見された初期イングランド・ゴシック建築の「テーブルトップ(英語: table-top)」型、コーンウォールの「ボドミン・フォント(英語: Bodmin font)」、東アングリアの「セブン・サクラメント・フォント(英語: Seven Sacrament fonts)」、ヘレフォードシャーの「チャリス(聖杯)・フォント(英語: Chalice fonts)」などがある[9]
浸礼槽


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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