法令番号
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法令番号(ほうれいばんごう)とは、国家地方自治体等により公布される各種の法令に対し、識別のため個別に付される番号をいう。一定の期間(暦年など)ごとに番号が初期化される(第1号から始まる)もの、ある特定の期日(独立記念日など)からの通し番号となっているもの等々、各政体によりその番号の管理、運用方法は異なる。

なお、「法令番号」を総称と捉え、細分化した「法律番号」、「政令番号」、「省令番号」、「条例番号」などのような表現を用いる場合もある。
日本

日本の場合、法令番号について直接的に定義を定めた法律[※ 1]がない(間接的、傍証的なものはある)ため、その定義、使用状況には広義、狭義など複数の形が存在している。
国会、内閣及び裁判所により慣例的に運用される法令番号

公布時の記載例(原文縦書き。漢数字をそのまま記載)
 内閣府設置法をここに公布する。  御 名  御 璽    平成十一年七月十六日                      内閣総理大臣 小渕 恵三法律第八十九号   内閣府設置法目次(以下略)

引用時の記載例(本来は縦書き・漢数字使用だが、横書き・算用数字に置換)
内閣府設置法(平成11年法律第89号) ・・・・・・法令文中の引用表記(公的機関による一般的表記)内閣府設置法(平成11年7月16日法律第89号)・・・法令データ提供システム(総務省行政管理局が運用していたウェブサイト)での表記

法令番号の付与は
暦年(1月1日から12月31日まで)を区切りとして初期化される。また、改元が実施された場合もその時点から初期化される。その結果、年号を付さない狭義の法令番号(「法律第1号」など)は複数存在し得ることとなり区別に不便なため、一般には年号(元号)を付した形態を法令番号として用いる。

法令番号の付与は国会での可決成立(法律の場合)、閣議決定政令の場合)、御名の親署、御璽の押捺などでなく、ごく一部の例外(官報印刷・掲載遅延など)を除き公布日を基準として付与される。このため、たとえば12月26日に可決成立した法律であっても、官報での公布が翌年1月5日であれば、法令番号は当該翌年に起算された番号が付される。また軍令は、官報に掲載されても公布の文言は付されず、制定の順に番号が付される。このため、大正8年4月10日に制定された軍令陸第4号から軍令陸第11号は、大正8年4月14日に官報に掲載されたが、大正8年4月11日に制定された軍令陸第12号から軍令陸第18号は、大正8年4月12日に官報に掲載されたため、官報の順と法令番号が逆転している。

公布時の官報には「元号表記による日付(改行) 内閣総理大臣 氏名(改行) 法律第○○号」のように記載される。したがって、最も狭義では、制定年を付さない種別と番号の「法律第○○号」だけが固有の法令番号であると考えることもできる。

ある法令で他の法令を引用する場合は「○○法(平成○○年法律第○○号)」のように、元号年と種別と番号を列記して記載する。この場合の法令番号(引用時の法令番号)については公布の月日は含まれない。法令文中で統一的に用いられる形式であるため、国会、行政機関及び司法機関の一般認識及び運用上、単に「法令番号」と言ったときは、この元号年使用・月日除外の方式を指す。ただし告示レベルでは、財務省は「輸出統計品目表及び輸入統計品目表を定める等の件(昭和五十年十一月大蔵省告示第百十七号)」[1]のように月を入れて記載する。

日本国憲法施行後の官報においては「法令番号」という単語の使用例は1例だけ確認される(旧字体の「法令番號」の使用例はなし)。「国の行政機関において使用する公印の形式、寸法に関する規則」(昭和39年内閣訓令第1号)の別表において見出し項目の一つとして「法令番号」の用語が使用され、その実例として「昭和三十九年大蔵省令第二十二号」と、公的機関の一般例に沿った方式による記載(縦書き漢数字)がある。また、細分化した「法律番号」、「政令番号」の使用例もある。

ただし、デジタル庁が提供するウェブサイト「e-Gov法令検索」においては、「平成○○年○○月○○日法律第○○号」のように月日を含めた状態で法令番号を表示している。この場合、日本国憲法施行前の法令でその正本に記された署名日と官報での公布日が異なるものは、後者によって表記される。

法律以外の種別の記載例:「政令第○○号」「内閣府令第○○号」「総務省令第○○号」「公正取引委員会規則第○○号」「海上保安庁令第○○号」「総務省訓令第○○号」「総務省告示第○○号」

番号を附さない例外的事例は、まず勅令では、明治19年の参謀本部条例には番号が附されていない。また公文式(明治19年)の制定後、条約の公布は勅令でされていたがこれも無番号であった。なお公式令(明治40年)以後は、条約第○号とするようになった。

農村負債整理組合法施行規則は、昭和8年7月31日農林省、大蔵省、内務省令として制定されたが、番号が附されていない。同日に同じく、農林省、大蔵省、内務省令として制定された負債整理事業資金特別融通及損失補償ニ關スル規程も同様である。農村負債整理組合法施行規則は、現行法令である[※ 2]

地方競馬規則は、昭和2年8月27日農林省、内務省令として制定されたが、番号が附されていない。この省令は、昭和14年12月27日農林省、内務省令第1号で廃止されたが、廃止の省令には番号が付されていた。

関東大震災の際に、制定された法令については勅令は通常の番号を附しているが、 非常徴發令ニ關スル物件等(内務省令号外)、暴利取締ノ件ニ關スル生活必需品ノ指定(農商務省臨第1号)、 各學校長ノ授業日數其他ノ制限ニ拘ラス必要ナル措置ヲ爲スコトヲ得ルノ件(文部省臨第1号)、 在外指定學校ノ指定ニ關スル規程(「外務省・文部省令)(番号なし)など変則的な番号が発生している。

文部省と陸軍省との共同省令である、大正9年4月10日に公布された大正七年勅令第三百五十七號第一條ノ規定ニ依ル認定ニ關スル件、大正14年4月13日に公布された陸軍現役将校学校配属令施行規程、昭和3年4月24日に公布された兵役法施行令ノ規定ニ依ル認定ニ關スル件は、いずれも番号が付されていない。なお、兵役法施行令ノ規定ニ依ル認定ニ關スル件は、大正七年勅令第三百五十七號第一條ノ規定ニ依ル認定ニ關スル件を廃止しているが、この時の規定は「大正九年四月陸軍文部省令ハ之ヲ廃止ス」であった。

上記の法令番号の体系の例外であるのが人事院規則である。人事院規則は、人事院規則一―一(規則の分類)により、内容別に一―〇の系列 総則 から 二六―〇の系列 配偶者同行休業 に区分され、それぞれ制定ごとに「人事院規則一七―〇(管理職員等の範囲) 」というように規則の番号と題名が一体になったものとなっている。なお最初は「〇」であって「一」ではない。また改正する人事院規則については、法令番号はなかった。これは昭和60年から変更され、人事院規則9―2(俸給表の適用範囲)を改正する場合は、人事院規則9―2―1のように改正ごとに元の人事院規則の番号の次に、―一のように連番を附すようになった。また複数の人事院規則を改正する場合は「人事院規則1―28〔金融庁の設置に伴う関係人事院規則の整備に関する人事院規則)」のような制定もされるようになった。ただし廃止の場合は「○○を廃止する人事院規則」ではなく人事院規則一―四(現行の法律、命令及び規則の廃止) を改正して「108 規則一〇―三は、廃止する。(平成二十八年五月三十日施行)」を追加することにより行っている。また人事指令についても「指令の分類 (昭和26年1月5日人事院指令一―一) 」により人事院規則に準じた体系をとり「これにその属する系列の番号の次に「―」(ダツシユ)をつけその次に一から始まる一連番号をつけたものをその番号として与えるものとする。この一連番号は、暦年により更新するものとする。 」となっており系列番号のあとの一連番号は、歴年更新となっている。

訓令については大臣名で発するもののほか、事務次官等が発するものがあるため、前者を俗に大臣訓令と呼び区別するが、法令番号としての呼称は○○大臣訓令でなく○○省訓令となる。


国家機関、地方自治体以外(民間)での表記内閣府設置法(1999年法律第89号) ・・・・・・西暦換算(月日なし)表記内閣府設置法(1999年7月16日法律第89号)・・・西暦換算(月日あり)表記内閣府設置法(1999年(平成11年)7月16日法律第89号)・・・西暦と元号を併記する表記(月日あり)

公的機関の例にならい、
元号年(月日なし)、種別、番号により引用、記載する例もある。

元号を用いず西暦に換算記載する、月日を挿入する、など可読性、情報性を考慮した(あるいは思想的背景による)と思われる記載方法もある。

元号のみの記載も好ましくないとする観点から、「2007年(平成19年)」のように、西暦と元号を併記する記載方法もある。

表記方法ごとの特徴

上記のように複数の表記方法が混在するが、それぞれに長所と短所がある。

大日本帝国憲法時代から2007年(平成19年)現在まで、法令番号や公文書に用いる年号は国会・内閣・司法とも一貫して元号のみを使用し、西暦をほとんど使用しない慣例が続いている。また、改元の際には番号が初期化される(例:1989年には昭和64年政令第1号(元号を改める政令)と平成元年政令第1号(宮内庁組織令の一部を改正する政令)がそれぞれ別に存在する)ため、元号での表記が正確性の点では優勢にあるが、一方で元号が通用しない日本国外の事情を考えた場合の国際的な可読性の低下、元号の使用に否定的な姿勢を示す人々への強制性などの難点や批判があるといえる。

西暦に換算して表記することについては、国際的可読性の向上のほか、元号(及びその根源とも言える天皇制)について反対の姿勢をとる人・団体にとって、元号の使用を回避することができる利点がある。ただし、法令の原本や官報にある公的記載(元号)を西暦に変えて表記することの正確性・妥当性はどうなのか、あるいは、前述の改元前後の同一法令番号に月日を付さない場合、「1989年政令第1号」のようにが2つ存在してしまう(たまたま題名が異なったが、同一の題名の場合どちらを指すか不明確となる)というような難点もある。

法令番号は暦年による管理のため、「昭和22年法律第5号」のように「その年初から何番目か」が直接的に認識しやすい(月日なしの)表記が、正確性の面では優勢にある。「昭和22年1月16日法律第5号」のように月日を挿入した場合は、理論上は昭和22年の5番目の法律という解釈以外にも「昭和22年1月16日0時から24時までに公布された法律の中の5番目」という誤った認識を招く可能性がないとはいえず、正確性の面でやや劣る。

一方、法令番号に公布日(=官報等への掲載日)を挿入することで、官報等に掲載された法令の原文を検索・参照することが容易となり、実務者にとって有益である。他にも、当該法令が何内閣のときに公布されたかなど時代背景の理解等の利便性に資する面がある。

表記に関する備考

法令番号(元号年・番号とも)に使用される数字については、縦書きが主流となっている官報では原則として
漢数字(例:1,000は「一〇〇〇・壱阡」ではなく「千」、18は「一八・拾捌」ではなく「十八」、21は「二一・弐拾壱」でなく「二十一」)が用いられ、大字(廿、拾、壱など)は用いられない。

法令文中に用いられる漢数字が、いかなる場合でも算用数字(アラビア数字)への置換が推奨されない「固有名称」的なものか、横書きに変換する場合が算用数字にしてもかまわない「数値的」なものか、については、縦書き主流の官報においても横書き・算用数字での表記が原則的な各省の大臣訓令においてどのように引用表記されるか、が一つの判断の目安となる。

各種の大臣訓令においては、法令の「第○○条」などの漢数字部分と同様、法令番号の漢数字部分についても算用数字で表記がなされている。このことから、同じく法令の識別のために付与される固有名称的な「題名」とは異なり、法令番号は(公的機関においては)「数値」的なものとして扱われていると考えられる。


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