法人_(日本法)
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法人(ほうじん)とは、人間(自然人)でないにもかかわらず、人間と同じように権利能力を法により認められたものを言う[1]。法人は、権利(財産権)を保有し、義務を負うことができる存在であり、主に社団(=人の集まり)または財団(=財産の集まり)の形式を取る。民事法で「人」と言う場合、特に事情がなければ、自然人と法人の両方を含む。ここでは日本法の法人について述べる。
法人の形態と準拠法

日本では1898年(明治31年)に民法が施行され、民法によって公益法人など民間の非営利部門での公益的活動を担う法主体が規律されてきた[2]

しかし、民法で採用されていた許可主義は法人設立が簡便ではなく、公益性の判断基準も不明確で、社会的需要にも適合しなくなっていると指摘されていた[2]

2006年、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(民法改正)が成立した(公益法人制度改革)。

一般法人法は剰余金の分配を目的としない社団や財団を規律する法として位置づけられている[2]。一般法人法では公益性の有無にかかわらず法律に定める要件を満たして登記を行えば非営利法人(一般社団法人または一般財団法人)として法人格を取得できる準則主義がとられている[3]

非営利法人である一般社団法人または一般財団法人が公益法人となるには、公益法人認定法に基づく公益性の認定を受けることを要件とする制度へ移行した[3]

営利を目的とする社団については会社法で規律されている[4]

なお、地方公共団体は法人の定めであるが(地方自治法2条1項)、「国」(日本政府。その機関として法務省、総務省、厚生労働省等)は、法人の定めが存在しない(法務省等には便利のために法人番号が割り当てられているが、法人というわけではない。)(ただし、独立行政法人等については法律において法人の定めがある。)。

法人は、民法第33条1項(「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない」)規定より、法律における定めが無くては成立せず、逆に法人であれば必ずその根拠となる法律が存在する。
民法

一般法人法施行後の民法では法人法定主義の宣言などにとどまっている[5]。民法に具体的に制度化されている法人としては相続財産法人(民法第951条)等があるにすぎない[5]
法人の成立

法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない(民法第33条1項)。

学術、技芸、慈善、祭祀 、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる(民法第33条2項)。
法人の能力

法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う(民法第34条)。
一般法人法及び公益法人認定法
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

一般社団法人及び一般財団法人の設立、組織、運営及び管理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第1条)。
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律

この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業の実施が公益の増進のために重要となっていることにかんがみ、当該事業を適正に実施し得る公益法人を認定する制度を設けるとともに、公益法人による当該事業の適正な実施を確保するための措置等を定め、もって公益の増進及び活力ある社会の実現に資することを目的とする(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第1条)。
会社法

法定の会社(会社法2条1号で定義)は、法人とされている(会社法第3条)。
その他の法律による法人

その他特別法で法人格が付与されているものがある。

地方公共団体

日本銀行

医療法人

日本赤十字社

社会福祉法人

宗教法人

学校法人

監査法人

税理士法人

弁護士法人

司法書士法人

行政書士法人

弁理士法人

社会保険労務士法人

土地家屋調査士法人

商工会議所

農業協同組合連合会

日本弁護士連合会

弁護士会

労働組合 (法人である場合)

職員団体 (法人である場合)

管理組合法人
その他日本法の法人の種類については「日本の法人の種類の一覧」を参照
外国法人

外国法によって設立された法人を外国法人という。

外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない(民法第35条1項)。日本国内での活動を承認することを認許と呼ぶ[6]

前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない(民法第35条2項)。

なお、法人税法上は本店または主たる事務所が国内にある法人を内国法人、それ以外を外国法人という[7]
法人制度の歴史
民法法人

従来、日本では1898年(明治31年)に施行された民法によって公益法人など民間の非営利部門での公益的活動を担う法主体が規律されてきた[2]。改正前の民法では法人を公益法人(改正前民法34条)と営利法人(改正前民法35条)に分け、営利法人については主に商法(のちに会社法)で規律され許可を要することなく設立できるとされていたのに対し、公益法人については民法によって設立に主務官庁の許可が必要とされていた[8]。改正前の民法の規定に基づき主務官庁の許可により設立された公益法人は「民法法人」と呼ばれていた。
旧法の公益法人の要件

改正前の民法34条では「祭祀、宗教、慈善、学術、技芸其他公益ニ関スル社団又ハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ主務官庁ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコトヲ得」と定められていた。改正前の民法上の公益法人の要件は、1.公益に関する社団または財団であること、2.営利を目的としないものであること(非営利であること)の2点である[8]

「営利」は物質的利益を法人の構成員に分配することをいう[9]。「非営利」は収益を社員(法人それ自体の構成員)や会員、寄附者などの関係者に分配しないという意味である(もちろん、法人活動を維持するための給与支払いなどは可能である)。法人が物質的利益を得る活動をしても法人の構成員に分配しない限り営利とは言えない[9]

「公益」は不特定多数の利益を図ることをいい、民法では「祭祀、宗教、慈善、学術、技芸」が例示されていた[8]。「公益」は団体外の利益に対して奉仕することであり、団体それ自体の利益を追求する「私益」と対比されるとされるが、具体的には下記「公益法人として適当でないもの」に記載の「指導監督基準」とその「運用指針」において「積極的に不特定多数の者の利益の実現を目的とするもの」とされ、公益法人とはそれを主目的とするものとされている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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