河野談話
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(2006年撮影)

慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話(いあんふかんけいちょうさけっかはっぴょうにかんするこうのないかくかんぼうちょうかんだんわ)とは、1993年平成5年)8月4日内閣官房長官河野洋平が発表した談話である。河野談話として知られる。この談話の中で日本軍の関与を認め、「おわびと反省」を表明した。

河野談話の原案は、日本政府関係省庁における関連文書、米国国立公文書館の文書、軍関係者や慰安所経営者等各方面への聞き取り調査に基づく(慰安婦証言が根拠になって作成されたものでない)[1]
概要

この談話は、同日に内閣官房内閣外政審議室から発表された文書「いわゆる従軍慰安婦問題について」[2]を受けて発表された。原案は、当時の内閣外政審議室長である谷野作太郎が「言葉遣いも含めて中心になって作成した」[3]

談話では、慰安所の設置は日本軍が要請し、直接・間接に関与したこと、慰安婦の募集については軍の要請を受けた業者(日本人朝鮮人)が主としてこれに当たったが、その場合も甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に官憲等が直接これに加担したこともあったこと、慰安所の生活は強制的な状況の下で痛ましいものであったとしている。なお、日本軍や官憲が、業者によって本人たちの意思に反して集められた事例に加担したことや、日本軍や官憲が本人の意思に反して慰安婦を集めたことを示す資料は発見されていない[4]

日本政府による調査結果と談話が発表される前年の1992年(平成4年)7月6日には、宮澤内閣加藤紘一内閣官房長官が、「朝鮮半島出身者のいわゆる従軍慰安婦問題に関する加藤内閣官房長官発表」[5]を発表している。当時の慰安婦問題は、韓国挺身隊問題対策協議会などが主張する慰安婦が強制連行されたという主張について、韓国政府が日本政府に真相の究明を求め[6][7]、日本政府は強制を裏付ける資料が発見できずに対応に苦慮する状態だった[8]。河野は事態を打開するため、7月26日から30日にかけて、韓国の太平洋戦争遺族会から紹介された16人の慰安婦に聞き取り調査を実施し[9][10]、慰安婦の強制性を認め謝罪する「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」の発表に至った。産経新聞は、証拠資料がないのにもかかわらず、信憑性の低い証言によって談話が作成された経緯から、河野談話は事実を追求したものではなく、政治的妥協の産物だと批判した[11]

2014年(平成26年)6月20日に、日本政府によって公開された検証結果報告書「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯?河野談話作成からアジア女性基金まで?」(河野談話作成過程等に関する検討チーム)では、事前に韓国側との文言調整があったこと、慰安婦証言の裏付け調査を行っていなかった[12][13]。また、韓国との文言調整があったことは、日韓両国にて非公開とされた[13]
談話の内容

いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。 ? 河野洋平、慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話外務省
経緯と論争

1992年(平成4年)7月、内閣官房長官加藤紘一は、慰安所に日本政府が関与していた事を認め、「継続して調査」を約束した。その3週間後に、金泳三大統領は「募集を含めて強制があった」と発表した[14]。1993年3月、金泳三大統領は「従軍慰安婦問題に対し日本に物質的な補償は求めない方針だ」と言明した[注釈 1][15]

これについて読売新聞は「韓国政府は・・・金銭的支援は独自にやるので日本は強制連行を認めればよいという姿勢が鮮明になってきた」「政府は強制連行を認めないままでは事態の打開は困難と判断した」と書いているが[16]、河野洋平は「密約」を否定している[注釈 1]。当時、内閣官房副長官を務めていた石原信雄は「文章で強制を立証するものは出てこなかった」が「明らかに彼女たちは自分の過去について真実を話した」として「本人の意に反した強制があったと確信が得られた」「いかなる意味でも、日本政府の指揮命令系統のもとに強制したことを認めたわけではない」と述べている[18]。日本政府が行った河野談話作成過程の検証でも、韓国側の文言調整の要求に対して、内閣外政審議室と外務省が協議しながら「それまでに行った調査を踏まえた事実関係を歪めることのない範囲で,韓国政府の意向・要望について受け入れられるものは受け入れ,受け入れられないものは拒否」しており、韓国側に要求された「軍の指示」などの言葉は使っていない[19]。これに対して産経新聞記者の阿比留瑠比は「世界に日本政府が公式に強制連行を認めたと誤解され、既成事実化してしまった」[20]、「事実判断ではなく、政治判断だった」と批判している[21]

日本政府が実施した調査では、「日本軍が慰安婦の強制連行を行なっていた」とする公文書類資料は発見されなかった[16]。河野は「組織として強制連行を行っていても、無理にでも連れてこいという命令書や無理に連れてきましたという報告書は作成されることはないだろう」という見方を示し、強制を認めた根拠として「募集・移送・管理等の過程全体をみてであり、自由行動の制限があったこと」を挙げている[22]日本政策研究センターによれば、河野は談話発表後の記者クラブでの説明で、「官憲等が直接これに加担したこともあったこと」とは白馬事件を指しており、白馬事件以外には官憲等が直接これに加担した事実はなかった、と説明している。また、同時におこなわれた韓国人元慰安婦への聞き取り調査では、慰安婦の証言を記録するのみで、事実関係の検証はおこなわれなかった[23]。聞き取り資料は現在も非公開である[23]

韓国では、安秉直ソウル大学教授や韓国挺身隊問題対策協議会が前述の元慰安婦と指摘されている女性たちに聞き取り調査を実施し、「証言者が意図的に事実を歪曲していると感じられるケース(は)調査を中断する」という原則に基づき、元慰安婦証言の半数を却下している[23]。さらに、一部の慰安婦を除いて元慰安婦が強制連行されたとは主張していない[23]。また、元慰安婦の証言には慰安所ではなく、民間の売春施設のあった富山県釜山に連行されたとしているものもある[23][24]


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