没収試合
[Wikipedia|▼Menu]

没収試合(ぼっしゅうじあい)、あるいは フォーフィッテッドゲーム(: Forfeited game)とは、スポーツの試合において一方のチームに起因する何らかの事情により試合の開始又は続行が困難となった場合、あるいは試合の結果に影響を及ぼすような重大な違反行為があった場合に、起因となった側のチームを自動的かつ強制的に敗戦扱いとする試合のこと。試合の開始・続行を一方のチームが放棄したとして放棄試合(ほうきじあい)と称することもある。トーナメント戦の場合、試合を行わずに勝敗を決することから不戦勝(又は不戦敗)と称することもある。
野球における没収試合

公認野球規則7.03に「フォーフィッテッドゲーム(没収試合)」として規定がある。一方のチームが以下のことを行った場合にフォーフィッテッドゲーム(没収試合)が宣告される。

一方のチームが次のことを行った場合。(公認野球規則 7.03(a) )
球審が試合開始時刻にプレイを宣告してから、5分を経過してもなお競技場に出ないか、あるいは競技場に出ても試合を行うことを拒否した場合(ただし、遅延が不可避と認められる場合を除く)。

試合を長引かせ、又は短くするために、明らかに策を用いた場合。

球審が一時停止又は試合の打ち切りを宣告しないにもかかわらず、試合の続行を拒否した場合。

一時停止された試合を再開するために、球審がプレイを宣告してから、1分以内に競技を再開しなかった場合。

審判員が警告を発したにもかかわらず、故意に、また執拗に反則行為を繰り返した場合。

審判員の命令で試合から除かれたプレーヤー(退場宣告を受けた選手)を、そのチームが適宜な時間内に退場させなかった場合。

ダブルヘッダー第2試合の際、第1試合終了後30分以内に競技場に現れなかった場合(ただし、第1試合の球審が第2試合開始までの時間を延長した場合を除く)。


一方のチームが競技場に9人のプレーヤーを位置させることができなくなるか、又はこれを拒否した場合。(同 7.03(b))

球審が試合を一時停止(グラウンドコンディション不良や観客の乱入など)した後、試合再開に必要な準備(グラウンドの整備や観客の退出措置等)を球場管理人に命じたにもかかわらず、その命令が意図的に履行されなかったために試合再開に支障を来した場合(アマチュア野球には適用しない。この場合はビジターチームの勝利となる)。(同 7.03(c))

これらにより没収試合が宣告された場合、記録上は原因となったチームを「0-9(ソフトボールの場合は7イニング制なので0-7)の敗戦」として扱う。試合途中に没収試合となった場合は原則として個人記録はそのまま残るが、加害チームがリードしている状況で没収試合となった場合には勝利投手敗戦投手セーブは一切記録されない。加害チームがいったん勝利して終了した試合に対してのちに没収試合が適用され、その試合が0-9で加害チームの敗戦となった場合も同様に、勝利投手・敗戦投手・セーブの記録が取り消しとなり、完全に記録なしの試合となる。

また、後攻チームがリードした状態で5回表、あるいは先攻チームがリードした状態で5回裏が完了する前に没収試合となった場合、その試合における全ての記録は公式記録として算入されない(→ノーゲーム)。前述のとおり、没収試合となった場合は、得点0-9の試合として成立する。

後述の通り、日本プロ野球の場合、高額の制裁金や賠償金の支払い命令がなされ、また、独自に入場料の返還が行われる場合もある。

試合を主管する組織が定める選手登録のルールに反した選手起用が原因となって没収試合が宣告されることがある。これは当該選手が試合に出場できないとのルールにより、公認野球規則 7.03(a)(6)項の「審判員の命令で試合から除かれたプレーヤーを、適宜な時間内に退場させなかった場合」に該当すると解釈しているためである。しかし、時には単純なメンバー登録の誤記が原因で没収試合になった例もあり(#日本大学野球八戸工業大学青森中央学院大学戦、東北工業大学仙台大学戦など)、日本アマチュア野球規則委員会は、メンバー交換時に気付いた場合はその場で訂正を認めるなど、些細なミスでの没収試合は避けるよう通達を出している[1]。第93回全国高等学校野球選手権広島大会での広島新庄高崇徳高戦では崇徳高の投手交代の不手際により規則を厳格に適用すれば没収試合だったが、広島県高野連は教育的な意味合いもあり、投手交代を認めず試合を再開した[2]。 
日本プロ野球

日本のプロ野球リーグにおいてはこれまで10試合のケースが該当する。太字は敗戦チーム。

開催日適用された試合(会場)適用理由
1946年5月20日 • パシフィック
 • セネタース
西宮球場)パシフィックの藤本定義監督が、戦前既存球団でプレーしていた白石勝巳(巨人)、藤井勇(阪神)を公式戦登録メンバーに加えさせたことでの調査中にもかかわらず、2人を試合に出場させたため、パシフィックは当該4試合を没収試合(0-9での敗戦)とさせられた。このうち5月26日の試合はパシフィックが7-4で勝利していたが勝敗が逆転した。この1勝がグレートリングの初優勝につながった。
1946年5月23日 • パシフィック
 • グレートリング
(西宮球場)
1946年5月24日 • パシフィック
 • 阪急軍
(西宮球場)
1946年5月26日 • パシフィック
 • グレートリング
(西宮球場)
1946年9月27日 • セネタース
 • ゴールドスター
(西宮球場)セネタースは西宮市に隣接する宝塚市に宿を取っていた[3] が、当日の朝のセネタースの宿舎付近は雨天で、選手たちの大半は「試合中止」と即断して外出した。だが、西宮球場の周辺は11時には雨が上がり、13時開始予定の試合は挙行可能な状態になっていた。12時過ぎにセネタースの選手が数人球場入りしたが、9人は揃わなかったため、金政卯一球審は日本野球連盟と協議の上、ゴールドスターの選手たちを守備に就かせた上で試合開始を遅らせてセネタースの選手の到着を待ったが現れず、13時27分に没収試合が宣告された。セネタースには罰金5,000円とファンに対する弁済金として10,928円が科された[4]
1947年6月6日 • 阪急ブレーブス
 • 南海ホークス
後楽園球場)阪急は松戸市に宿を取っていた[3] が、当日の朝の阪急の宿舎付近は激しい雨が降っていた。阪急のマネージャーが状況確認の為に早朝に後楽園球場近くまで出かけたが、最寄の水道橋駅の駅員の「無理でしょう」の言葉を信じて、球場まで行って確認することなくそのまま松戸へ戻った。この日は変則ダブルヘッダーであったが、第1試合(東急巨人)の開始前には天候が回復して試合は予定通り開催。第2試合の阪急対南海も15時30分開始予定だったが、阪急ナインは結局現れず、島秀之助球審は15時35分に没収試合を宣告した。阪急には罰金7,000円が科されたが、前年セネタースに課された弁済金に関しては記録が残っていないという[4]
1950年8月14日 • 南海ホークス
 • 大映スターズ
県営富山野球場)9回裏、無死二、三塁から大映の板倉正男の打球を南海中堅手の黒田一博が捕球したが、長谷川信義二塁塁審は「ワンバウンドでの捕球である」として安打であると判定。これに対し山本一人監督[注 1] をはじめ南海選手が「(黒田は)打球を直接捕球しているではないか」として抗議、40分後に角田隆良球審が試合再開を促したにもかかわらず、南海選手が守備に就くのを拒んだため、没収試合が宣告される。後日、パシフィック野球連盟による査問委員会が開かれ、南海球団には制裁金(罰金)10万円が科されたが、山本に対しては「相当期間の出場禁止処分に該当すると認めるが、今次事件発生に至る情状酌量すべきもの多々あり、また山本監督の仁徳、旧歴に徴し」と断った上で譴責処分を課すという異例の対応がとられた。さらに南海球団は独自に入場料払戻しの対応も行った[5]

同年規定されたばかりの公認野球規則(当時の規定は第24条第3項)に則った初の没収試合(放棄試合)[6]
1954年7月25日 • 大阪タイガース
 • 中日ドラゴンズ
大阪球場[注 2])5-2で中日が3点リードした延長10回裏無死、この回の阪神の攻撃で代打に起用された真田重男が、中日投手の杉下茂と相対し、カウント2-2からファウルチップした打球を中日捕手の河合保彦が落球したとして杉村正一郎球審はファウルと判定したが、中日側から「河合はファウルチップの打球を直接捕球したので三振になるはずだ」と抗議があった為、杉村球審は判定を覆して真田の三振アウトを宣告した[7]。これに対して阪神側が猛抗議し、その最中に藤村富美男が杉村球審に暴行を働いた(肩またはプロテクターを突いた)として退場を宣告された。この際に松木謙治郎監督も杉村球審に手を出して退場処分を受け[注 3]、興奮した観客がグラウンドに入って試合が1時間7分中断。阪神は連盟への提訴を条件に試合を再開したが、藤村には退場宣告がよく伝わっておらず、自らの打順で打席に立とうとした。この件について充分な説明がなされていないとの理由で観客の阪神ファンが再びグラウンドに乱入。収拾が付かなくなったことから主催者の阪神に責任があるとして審判団は没収試合により中日の勝利とした。この一件でセントラル野球連盟は試合管理不十分として松木監督に対し出場停止5日と制裁金3万円、藤村富美男に対しては「放棄試合の原因を招いた責任は重大」として出場停止20日と制裁金5万円、松木退場後の監督代行を務めた金田正泰に「藤村の再出場を阻止できなかった」として戒告を科す処分を下した。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:175 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef