沖縄方言
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この項目では、沖縄本島地方の言語について説明しています。日本語標準語)が沖縄県で土着化した方言については「ウチナーヤマトグチ」をご覧ください。
.mw-parser-output .pathnavbox{clear:both;border:1px outset #eef;padding:0.3em 0.6em;margin:0 0 0.5em 0;background-color:#eef;font-size:90%}.mw-parser-output .pathnavbox ul{list-style:none none;margin-top:0;margin-bottom:0}.mw-parser-output .pathnavbox>ul{margin:0}.mw-parser-output .pathnavbox ul li{margin:0}日琉語族 > 琉球諸語 > 北琉球諸語 > 沖縄語.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}この項目ではを扱っています。閲覧環境によっては、色が適切に表示されていない場合があります。

沖縄語
沖縄方言
沖縄口/ウチナーグチ

話される国 日本
地域沖縄諸島
話者数984,000人 (2000年)
言語系統日琉語族

琉球語派

北琉球語群

沖縄語



表記体系沖縄方言の表記体系
言語コード
ISO 639-3ryu
赤が中南部方言、青が北部方言
消滅危険度評価
Definitely endangered (Moseley 2010)
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沖縄語(おきなわご)または沖縄方言(おきなわほうげん)、沖縄弁(おきなわべん)は、沖縄諸島沖縄本島とその周辺離島)で話される言語方言)である[1][2][3][4][5]琉球諸語(琉球語、琉球方言)の一つ。現地ではウチナーグチと呼ばれる[* 1]。大きく沖縄北部方言と沖縄中南部方言に分かれ、その境界は太平洋側ではうるま市石川と金武町屋嘉の間に、東シナ海側では恩納村恩納と谷茶の間にある[6]。なおユネスコでは中南部方言を指して「沖縄語」と呼んでおり、北部方言は与論島方言沖永良部島方言とともに「国頭語」とされる[7]。本ページでは沖縄中南部方言(ユネスコの言う「沖縄語」)を中心に解説している。沖縄北部方言については当該ページを参照されたい。

奄美群島沖縄県には沖縄語以外に、奄美語八重山語などの諸言語があり、互いに意思疎通が困難なほど隔たりがある。一方でそれぞれ沖縄方言、奄美方言、八重山方言などと方言とみなす立場もある。いずれにしてもこれら諸言語(方言)間には密接な系統関係があり、これら諸言語(方言)を総括して琉球諸語あるいは琉球語派、琉球語、琉球方言と呼ぶ。

ここでは、言語説と方言説の両意見を考慮して沖縄語(沖縄方言)と併記する。
概要

沖縄語(沖縄方言)は、さらに北部方言と(中)南部方言の2つのグループに大きく分けられる[1][2][3]津堅島久高島は、地理的には沖縄諸島南部だが、ハ行p音を持つなど沖縄北部方言的要素がある[8]

琉球王国の時代、王府首里城のある首里に集まる按司同士で通じる共通語としてつくられたのが首里方言で、尚真中央集権支配の間(1476年-1526年)に完成された。1534年より首里王府によって編纂された沖縄最古の歌謡集おもろさうしに琉球古語が使われており、首里方言の源流であるとされる。首里方言は王族と上流階級によって使われる公用語であったが、庶民の間ではそれぞれの土地の言葉が使われた。琉球王府の公文書や、琉歌漢文を除く)、組踊などの口承文芸、文学は、首里方言で書かれている。首里方言では、各地で失われた古い発音の区別を残しており、士族男子は訓練によって規範的な発音を身につけていた。商売人などの間の共通語としては首里方言よりも那覇方言が広く使用され、明治以降は次第に首里方言に代わって那覇方言が地域共通語の地位を占めるようになった。首里方言は士族階級の解体とともに消えていき、20世紀後半にはどの地域、どの階級においても体系的には用いられなくなった[9]

なお標準的な日本語では「古語」として扱われる痕跡が残っている語や、中国語をルーツとする語も混在している[10]
音韻
音韻体系

原則的には以下の音素が認められる[11]

母音音素 /i, e, a, o, u/

半母音音素 /j, w/

子音音素 /p, b, t, d, k, g, ?, s, z, c, h, r, m, n/

拍音素 /N, Q/

このうち/e/および/o/は短母音として現れることは少なく、多くは長母音として現れる。/N/(ン、撥音)、/Q/(ッ、促音)は語中・語尾だけでなく、語頭にも出現する点が日本語と異なる。また母音・半母音・撥音の前で声門破裂音/?/の有無が区別される。ただし久米島方言では/?/は無くなっている[12]

北部方言の大部分や、南城市奥武津堅島等、中南部方言の一部では、無声破裂音・無声破擦音すなわち/p, t, k, c/で有気音無気喉頭化音の区別がある[11][13]。大部分の中南部方言では区別はない。また那覇方言など一部では/d/が/r/に変化しており、/d/音素を欠いている所がある[11]
モーラ表

以下に、那覇方言のの一覧を示す。[]内に示したのが具体的な音声で、それを抽象化・記号化した音素が//内である。那覇方言ではダ行/d/がないが、他の多くの方言では/di/[di]、/de/[de]、/da/[da]、/do/[do]、/du/[du]を持つ。首里方言の士族男子では、シ(?i)とスィ(si)、シェ(?e)とセ(se)、チ(t?i)とツィ(tsi)、さらにd?の行とdzの行の区別があった[14]

那覇方言の拍体系[15][16]/i//e//a//o//u//ja//jo//ju//wi//we//wa/ 
/?/イ
/?i/
[?i]エ
/?e/
[?e]ア
/?a/
[?a]オ
/?o/
[?o]ウ
/?u/
[?u]ッヤ
/?ja/
[?ja]ッヨ
/?jo/
[?jo] ッウィ
/?wi/
[?wi]ッウェ
/?we/
[?we]ッワ
/?wa/
[?wa]ッン
/?N/
[?m]
[?n]
/O/イ
/i/
[i]
[ji]エ
/e/
[e]
[je]ア
/a/
[a]オ
/o/
[o]ウ
/u/
[u]
[wu]ヤ
/ja/
[ja]ヨ
/jo/
[jo]ユ
/ju/
[ju]ウィ
/wi/
[wi]ウェ
/we/
[we]ワ
/wa/
[wa]ン
/N/
[m]
[n]
[?]
[?]
/h/ヒ
/hi/
[ci]ヘ
/he/
[he]ハ
/ha/
[ha]ホ
/ho/
[ho]フ
/hu/
[?u]ヒャ
/hja/
[ca]ヒョ
/hjo/
[co] フィ
/hwi/
[?i]フェ
/hwe/
[?e]ファ
/hwa/
[?a] 
/k/キ
/ki/
[ki]ケ
/ke/
[ke]カ
/ka/
[ka]コ
/ko/
[ko]ク
/ku/
[ku]   クィ
/kwi/
[kwi]クェ
/kwe/
[kwe]クヮ
/kwa/
[kwa] 
/g/ギ
/gi/
[gi]ゲ
/ge/
[ge]ガ
/ga/
[ga]ゴ
/go/
[go]グ
/gu/
[gu]   グィ
/gwi/
[gwi]グェ
/gwe/
[gwe]グヮ
/gwa/
[gwa] 
/t/ティ
/ti/
[ti]テ
/te/
[te]タ
/ta/
[ta]ト
/to/
[to]トゥ
/tu/
[tu]       
/c/チ
/ci/
[t?i]チェ
/ce/
[t?e]チャ
/ca/
[t?a]チョ
/co/
[t?o]チュ
/cu/
[t?u]      
/s/シ
/si/
[?i]シェ
/se/
[?e]サ
/sa/
[sa]ソ
/so/
[so]ス
/su/
[su] ショ
/sjo/
[?o]シュ
/sju/
[?u]    
/z/[* 2]
/zi/
[d?i]ジェ
/ze/
[d?e]ジャ
/za/
[d?a]ジョ
/zo/
[d?o]ジュ
/zu/
[d?u]       
/n/ニ
/ni/
[ni]ネ
/ne/
[ne]ナ
/na/
[na]ノ
/no/
[no]ヌ
/nu/
[nu]       
/r/リ
/ri/
[?i]レ
/re/
[?e]ラ
/ra/
[?a]ロ
/ro/
[?o]ル
/ru/
[?u]       
/p/ピ
/pi/
[pi]ぺ
/pe/
[pe]パ
/pa/
[pa]メB
/po/
[po]プ
/pu/
[pu]       
/b/ビ
/bi/
[bi]ベ
/be/
[be]バ
/ba/
[ba]ボ
/bo/
[bo]ブ
/bu/
[bu] ビョ
/bjo/
[bjo]     
/m/ミ
/mi/
[mi]メ
/me/
[me]マ
/ma/
[ma]モ
/mo/
[mo]ム
/mu/
[mu]       
 ッ
/Q/
[k,t,s,t?,?,p]

日本語共通語との対応関係

沖縄語(沖縄方言)では、日本語のオ段母音がuに、エ段母音がiに対応している。そのため多くの行で日本語のオ段とウ段、エ段とイ段は統合している。ただカ行イ段のキは中南部方言の多くでci(チ)に変化を起こしている[17]

またタ行・サ行ではウ段がイ段に統合している。すなわち、日本語のスはsiとなってシ・セと統合し、日本語のツはciとなってチと統合している(テはtiとなるためチと区別がある)。これらの行ではオ段のソ、トはsu、tuとなっても、ス、ツとの区別は残っている[17]

日本語共通語沖縄中南部方言備考
エ /e/イ /i/日本語のテに対応するのはチ [?i] ではなくティ [ti]
オ /o/ウ /u/日本語のトに対応するのはツ [tsu]ではなくトゥ [tu]、ドに対応するのはヅ [dzu] ではなくドゥ [du]
アイ /ai/エー /ee/
アエ /ae/
アウ /au/オー /oo/
アオ /ao/
キ /ki/チ /ci/チ [?i]。糸満方言ではキのまま[18]
ス /su/シ /si/シ[?i]?[?i]。首里方言の士族男子ではスィ[si]で、シ[?i]と区別[19]
ツ /cu/チ /ci/首里方言の士族男子ではツィ[tsi]で、チ[t?i]と区別[19]
ダ /da/ラ /ra/那覇方言ではダ行 [d] とラ行 [?] は合流した。
デ /de/リ /ri/
ド /do/ル /ru/
ハ行/h/ハ行/h/ただし津堅島、久高島ではパ行/p/[20]
リ /ri/イ /i/イリ /iri/ は変化なし。
アワ /awa/アー /aa/

アクセント

中南部方言はアクセントの型(パターン)を2種類持つ二型アクセント体系をもつ。例えば首里方言のアクセント型には平板型と下降型の2種類がある。下降型は、2拍の語では第1拍だけが高く第2拍が低いが、3拍以上の語では第2拍までが高く第3拍以降が低いのが原則である[21]。各型に所属する語彙は、九州西南部の二型アクセントと似ていて、下降型には1音節名詞の第1・2類、2音節名詞の第1・2類が、平板型には1音節名詞の第3類、2音節名詞の第3・4・5類が属す[22]。2音節名詞の第3・4・5類の一部の語は?iici(息)、kaagi(影)のように第1音節に長音が含まれており、この語群には琉球祖語のアクセントに想定されているA・B・Cの3つの語群(系列)のうち、C系列の語が対応している[23][24]
文法

古典日本語の文法との共通点が多く保たれている。例えば、終止形連体形の区別や、連体格「ガ」(首里方言では死語)、主格「ヌ」(共通語の「の」)、さらにそのほか、主格としての「ガ」「ヌ」の敬体と常体での使い分けが挙げられる。
動詞

動詞の語形変化は、動詞が何種類かの異なった語幹を持ち、それぞれの語幹に各種接辞が付くことで各活用形を生み出している。動詞の語形変化を見るのに、まずは日本語の「書く」にあたる動詞カチュン/kacuN/、「取る」にあたる動詞トゥイン/tuiN/について、いくつかの用法を示す。

那覇方言の「書く」「取る」の語形変化「書く」「取る」意味用法
語形日本語語形日本語
カカン/kakaN/書かないトゥラン/turaN/取らない否定
カクナ/kakuna/書くなトゥルナ/turuna/取るな禁止
カチブサン/kacibusaN/書きたいトゥイブサン/tuibusaN/取りたい願望
カチャビーン/kacabiiN/書きますトゥヤビーン/tujabiiN/取ります丁寧
カチュン/kacuN/書く。トゥイン/tuiN/取る。終止
カチュル/kacuru/書く…トゥイル/tuiru/取る…連体
カチ/kaci/書いてトゥッティ/tuQti/取って接続
カチャン/kacaN/書いたトゥッタン/tuQtaN/取った過去

以上より、「書く」の活用からはkak、kac、kacuという異なった語幹が抽出できる。また「取る」では語幹tur、tuj、tui、tuQtが抽出できる。
語幹

那覇方言の動詞の活用形を整理すると、基本語幹(kak・tur)、連用語幹(kac・tu(j))、派生語幹(kacu・tui)、音便語幹(kac・tuQt)の4種の語幹に、各種の語尾が付いて活用形が構成されていることが分かる[25]。音便語幹は接続語幹とも言う[26]。基本語幹からは未然形・命令形・条件形などが、連用語幹からは連用形・丁寧形が、派生語幹からは終止形・連体形などが、音便語幹(接続語幹)からは接続形・過去形などが形作られる。連用語幹は基本語幹に連用形語尾(i)が付いて末尾子音が変化したものであり、派生語幹は連用形にウン(をり)が付いて変化したもの、音便語幹は連用形に「て」が付いて変化したものである[25]


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