沈下橋
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佐田沈下橋(高知県・四万十川)、2009年長生沈下橋の橋桁(四万十川)

沈下橋(ちんかばし、ちんかきょう)は、河川を渡るの一種である。堤外地に設けられる橋で洪水時には橋面が水面下になる橋をいう[1]
名称

沈下橋という名称が広く知られるが、河川行政用語としては「潜水橋」が公式の名称である[2]。地方により、潜没橋、潜流橋、沈み橋、潜り橋、冠水橋、地獄橋などとも呼称される[3][4]

表1 各地の潜水橋の呼称[5]呼称読み主な地域
潜水橋せんすいきょう 全国、基準類における表現
潜り橋もぐりばし 全国
冠水橋かんすいきょう 関東(例:荒川)
地獄橋じごくばし 関東(例:久慈川)
沈下橋ちんかばし、ちんかきょう 高知県(例:四万十川)
潜没橋せんぼつきょう 京都府
流れ橋ながればし 岡山県(例:旭川)
沈み橋しずみばし 九州
親水橋しんすいきょう 近年各地で

概要沈下橋・潜水橋の模式図

沈下橋は、低水路・低水敷と呼ばれる普段水が流れているところだけに架橋され、また床板も河川敷・高水敷の土地と同じ程度の高さとなっていて、低水位の状態では橋として使えるものの増水時には水面下に沈んでしまう橋のことをいう。なお、通常の橋は、「沈下橋」の対語としては「永久橋」「抜水橋」などと呼ばれ、橋の床板は、増水時などの高水位状態下でも沈まない高さに設けられており、増水時にも橋としての使用に耐えうる。

沈下橋は、低い位置に架橋されることや、架橋長が短くできることから、低廉な費用で速やかに作ることができるというメリットを持ち、災害で橋が崩落した場合に仮設橋として建設する例もある[6] 。反面、増水時には橋として機能しなくなるという欠点を持つ。橋の両岸で高低差が大きい場合には、一方が通行可能でも対岸側は水没している可能性もある。

沈下橋の特徴として、橋の上に欄干がないか、あってもかなり低いもの・増水時に取り外し可能な簡易的なものしか付いていないことがあげられる[7]。これは、増水時の橋が水面下に没した際に流木や土砂が橋桁に引っかかり橋が破壊されたり、川の水がせき止められ洪水になることを防ぐためである[8]。また、壊れても再建が簡単で費用が安いという利点もあり、実際に流されることを前提としている例もあり、これらは「流れ橋」などと呼ぶ場合がある。増水時に流木などが橋脚・橋桁を直撃して損害を与えることを防ぐために、上流側に斜めに傾けた丸太・鉄骨などの流木避けが設置されているケースもある。

かつて架橋技術が未熟であった時代は、洪水でも壊れない橋を造ることが難しかったため、あえて増水時に沈む高さで橋を造って流木などが橋の上を流れていきやすいように工夫されたものである[8]。.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}増水時に対岸側が水没する可能性の警告
大城橋(奈良県・大和川、2015年)豪雨で流木が付着し通行止めになった沈下橋
(広島県・芦田川、2016年)豪雨によって水没した沈下橋
(同左)
日本の沈下橋龍頭橋(大分県・八坂川、2011年) - 日本で現存最古の沈下橋。

その構造から建設費が安く抑えられるため山間部や過疎地などの比較的交通量の少ない地域で生活道路として多く作られ、台風などの豪雨に度々見舞われる西日本の各地で多くみられた[8]。架橋技術が進歩するにつれ、現在では山間部でも広い道路や本格的な橋が造られること、また慣れているはずの地元住民といえども転落事故が絶えないことから、永久橋に架け替えられてゆき徐々に姿を消しつつある[8]。一方、沈下橋を河川の文化的景観、技術的遺産、観光資源として保存する動きもあり、例として龍頭橋(大分県)の土木学会選奨土木遺産認定や、四万十川流域(高知県)の重要文化的景観選定[9]などが挙げられる。

1999年高知県による調査によれば全国の一級河川及び支流には合計410か所の沈下橋があり、都道府県別に見ると、高知県(69か所)、大分県(68か所)、徳島県(56か所)、宮崎県(42か所)の順で多い[10]。一級水系以外も含めると、大分県では、合計212か所の沈下橋が確認されている(2007年8月6日現在)[11]

調査によって確認されたもののうちで日本最古の沈下橋は、1876年(明治9年)に大分県杵築市八坂川に架けられた永世橋(ながせばし)であるが、この橋は2004年9月29日台風21号による増水で流失した[10]。現存する日本で最古の沈下橋は、1912年(明治45年)に同じく八坂川に架けられた龍頭橋である[11]
各地の沈下橋
関東地方久野瀬橋(茨城県・久慈川、2018年)島田橋(埼玉県・越辺川、2011年) - 木橋(桁下部に鋼材使用)。


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