汲み取り式便所
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汲み取り式便所(くみとりしきべんじょ)は、日本で使われてきた落下式便所の一つ。擬音語を使って、ボットン便所、スットン便所、ボッチャン便所などと呼ばれる。また、「ボトーソ」などとも言われる事もある。

便所の処理方式には、地面浸透処理、河川流水処理、溜め汲み処理があるが、汲み取り式便所は溜め汲み処理の処理方式である[1]発展途上国で普及しているピットラトリンは汲み取りを行わない地面浸透処理の地下浸透式便槽トイレであり形式が異なる(後述)[2]
概説

汲み取り式便所(汲み取り便所)は、排出されたし尿を便器下の便槽に貯留し、定期的に人力あるいは機械によって汲み取る(抜き取る)形式の便所をいう[3]

便所の処理方式には、原始時代からある地面浸透処理、河川や人工の排水路を使う河川流水処理、溜め汲み処理があり、汲み取り式便所は溜め汲み処理の処理方式である[1]。また汚水処理方式には乾式と湿式、集中式と分散式があり、汲み取り式便所は乾式のうち汲み取り(引き抜き)を行って汚水を処理する場所にまで運搬する集中式の処理方式である[1][2]。し尿処理施設など処理を行う場所にまで運搬するための自動車をバキュームカーという[4]

汲み取り式便所は汲み取りを行って別の場所で処理を行う集中式の処理方式であり、発展途上国で普及している汲み取りを行わない分散式の処理方式のピットラトリン(地下浸透式便槽トイレ)とは異なる[2]。ピットラトリンは地下に穴を設けた簡素な形式で、2007年の日本トイレ協会「途上国のトイレ・環境改善支援事例集第2集」によると発展途上国26か国39事例で最も多い形式だった[5]。このピットラトリンは汲み取り式便所とは異なり、ピット(槽)が満杯になったら閉鎖し、別のピットを使用する形式(地下浸透式便槽トイレ)である[6][7]。日本の環境省の資料でもピットラトリンは「日本では一般的に行われていない」方式として整理されている[2]

汲み取り式便所は下水道浄化槽を用いる水洗式便所とは異なるが、簡易的な腐敗処理機能や水洗機能を付けたものもある[3]
俗称

汲み取り式便所は、落下式便所であることが多く、俗に話し言葉などでは、擬音語を使って、「ポットン便所[3]」、「ボットン便所[3]」などと呼ばれる。

もしくは、前述から「便所」を省略して単に「ポットン」、「ボットン」などとも呼ばれる。また、「便所」のかわりに「トイレ」を付与して「ポットントイレ」[3]、「ボットントイレ」[3]などとも呼ばれる。
歴史

汲み取り方式は古代から存在したわけではなく、原始的な処理方式として地面浸透処理や河川流水処理があった[1]。日本でも古事記を始め、便所は厠(かわや)と称され、飛鳥時代には便所を小川の上に設置する河川流水処理の方式があったとされる[1]。奈良時代になると仏教建築で側屋が造られるようになり、中世には便所を離れや家屋の端に設けて容器を使って捨てる溜め壺式が普及した[1]

し尿は最初は河川や沼沢に捨てられていたが、経験則から肥料として利用されるようになった(下肥[1]。または大陸から稲作が伝わった後、し尿を溜めて肥料にする習慣が生まれ、その場所をそのまま便所として整備するようになったとする説明もある[3]。日本では、江戸時代ごろに汲み取り方式が主流となった[1]

日本では20世紀に入る頃までに公的機関による汲み取りが進んだ。しかし、汲み取り式便所の汚物は近隣の農民が肥料として使用するサイクルが出来上がっていたため、農民らとの間に軋轢が生じることもあった。1912年大阪市名古屋市で、汲み取りの市営化に反対する農民の反対運動が発生している[8]

東京では、屎尿処理の公営化の取り組みが他の都市と比べて遅れ、1921年(大正10年)に牛込区小石川区本郷区、翌1922年(大正11年)には下谷区、1923年(大正12年)には浅草区の範囲で拡大した[9]
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大便器

便器内の半分(半穴または丸穴)、もしくは全体に穴が開いてあり(全穴)、その穴を通って排泄物便槽に貯留される仕組み。汲み取り式に使われる便器は基本的に和式便器であるが、洋式便器障害者対応便所や老人が同居している住宅など、一部に見られる。また、和式便器に洋式便器を被せた「簡易洋式トイレ」というものもある。
小便器

江戸時代ごろまでは、壁式や木製ストール式が存在していた。現在は陶器製朝顔形が多いが、その他に陶器製またはプラスチック製のストール式小便器が存在し、一部の施設ではトラップの有無に関係なく水洗用のストール式小便器を汲み取り式に使用している例も見られる。
臭突

大抵、外気に臭いを排出する煙突式の臭突(しゅうとつ)がある。旧式の汲み取り式便所は水で洗浄しないことに衛生上に問題があったが、近年では簡易水洗式が増えたため、水洗便所と余り変わらない清潔さがある。簡易式水洗には臭気を外に出す臭突を必要としない場合もある。臭突にはかつて石綿管が使われていたが、後にほとんどが塩ビ管となっている。臭突の先端には雨水が便槽に入るのを防ぐための傘が付けられるが、風力式もしくは電動式のファンが多く付けられる。後述の無臭トイレにはヒーター式の脱臭装置がついている場合もあるが、後に電動ファンに交換される場合が少なくない。
スパッター

便器と直下管を接続するための短い継ぎ手管。穴を小さくするので、小児の転落防止に役立つ。
直下管

いわゆるスットン管(ボットン管)のこと。水洗便所排水管よりも太い。コンクリート陶器などさまざまな材質の物があるが、近年は塩ビなどプラスチック製のものが多く採用されている。U字型トラップを含む無臭トイレになくてはならない必須部材である。または汲み取り式便所を2階以上の高さに設置する場合に、1階下に埋まっている便槽まで直下管をつなげる役割も果たす。
便槽(し尿槽)

汚物を貯留しておく槽。
汲み取りの方法

また、便槽に貯留された汚物は、定期的に便槽から取り出す必要がある。


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