池内恵
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池内敏」とは別人です。

池内 恵
Ikeuchi Satoshi人物情報
生誕 (1973-09-24) 1973年9月24日(50歳)
日本東京都
国籍 日本
出身校東京大学(学士、修士)
学問
研究分野イスラム政治思想
(Islamic Political Thought)
研究機関日本貿易振興機構アジア経済研究所
国際日本文化研究センター
東京大学先端科学技術研究センター (RCAST)
称号教授 (Professor)
主な受賞歴大佛次郎論壇賞
毎日書評賞
サントリー学芸賞
毎日出版文化賞
中曽根康弘賞
公式サイト
中東・イスラーム学の風姿花伝
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池内 恵(いけうち さとし、1973年9月24日 - )は、日本イスラム研究者東京大学先端科学技術研究センター教授。イスラム政治思想を専門とし、日本における中東政治、中東地域研究の代表的研究者の一人。父は独文学者池内紀、叔父は天文学者池内了
経歴

東京都出身。1992年3月、東京都立国立高等学校卒業。1996年3月、東京大学文学部思想文化学科イスラム学専修課程卒業。1998年3月、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程修了。2001年3月、同専攻博士課程単位取得退学。

2001年4月、日本貿易振興会アジア経済研究所研究員。2003年10月、日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター研究員。

2004年4月、国際日本文化研究センター助教授。2007年4月、同准教授。

2007年12月から2008年3月まで、アレクサンドリア大学客員教授。

2008年10月、東京大学先端科学技術研究センター(RCAST)准教授。

2009年10月から12月まで、ウィルソン・センター研究員(Japan Scholar)。

2010年4月、ケンブリッジ大学クレアホール客員フェロー、ケンブリッジ大学政治国際学部客員研究員。

2018年10月、東京大学RCAST教授。
主張
イスラム思想

ズィンミー制度をはじめ、イスラームの暴力的な側面に極めて批判的である。従来、親イスラーム的学者たちによって擁護・賞賛されることの多かった[1]ズィンミー制度の本質を「異教徒に対する苛烈な差別、蔑視」であるとし、現代においてその有効性はすでに失われていると主張している[2][3]。また、日本の研究者の多くは鈴木董のオスマン帝国におけるズィンミー制度の研究成果と見解を引用し、ズィンミー制度に高すぎる評価を下しているとしている[4]。イスラーム教徒の一部に今なお残存するズィンミー制度適用への願望と、その優越性を主張する論理に対しては、「前近代の極端に宗教的に不寛容な時代、その中でも中世キリスト教世界との比較を中心としてイスラーム的寛容の優越性を主張しており、近現代の政教分離思想との比較に関しては政教分離すなわち反宗教主義と決め付け、文化多元主義宗教間対話宗教多元主義などは考慮に入れていない」と批判している[5]

日本のイスラーム研究は「イスラーム思想やイスラーム世界を過度に理想化」しており、「イスラーム的共存や寛容の存在とその優越性は、具体的事例が示されないまま、ほとんど自明のものとされている」として批判を行っている[6]

ジハード、またイスラーム共同体による過去の征服の過程の殺戮を「正しい宗教の拡大のためにおこなった正しい行い」として全面的に正当化し、他の宗教・思想のそれは批判するという一部のムスリムの思想に対しても批判を加えている[7]
中東政治

サイクス=ピコ協定は、第一次世界大戦後の中東に秩序を与え、それをもとに政治が行われたり、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれたと主張し、サイクス=ピコ協定という外交文書やイギリス、フランスの帝国主義・植民地支配だけに、現在の中東諸問題の責任を帰する立場を批判している[8][9]
ISILによる日本人拘束事件に関して

2015年1月20日のISILのメンバーが日本人拘束者二名の殺害動画を公開した事件について。同日、池内はブログ記事において「単に首相が訪問して注目を集めたタイミングを狙って、従来から拘束されていた人質の殺害が予告されたという事実関係を、疎かにして議論してはならない。「イスラーム国」側の宣伝に無意識に乗り、「安倍政権批判」という政治目的のために、あたかも日本が政策変更を行っているかのように論じ、それが故にテロを誘発したと主張して、結果的にテロを正当化する議論が日本側に出てくるならば、少なくともそれがテロの暴力を政治目的に利用した議論だということは周知されなければならない」と述べた。2月3日のブログ記事では「イスラム国」は日本の支援が「非軍事的」であることを明確に認識していると述べ、3月12日には本件検証委員会へ外部有識者として参画し[10]、守秘義務のかかる非常勤の国家公務員としての辞令が菅官房長官より発令された[11]
シリアのアサド政権による化学兵器使用

2017年4月4日にシリア北西部イドリブ県内、反政府派支配地域ハンシャイフンへ化学兵器攻撃が行われた。これへの報復措置として、米軍はシリアのシャイラト空軍基地を標的に59発の巡航ミサイルを発射した。この事件を受け4月18日「米国のシリア攻撃展望は 米政策の不可測性に長短」と題する記事を日本経済新聞に寄稿した。同年10月26日、国連とOPCW(化学兵器禁止機関)の合同調査団が、サリンを使用したのはシリアのアサド政権であると結論づけた。
ダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件

2016年7月1日、バングラデシュの首都ダッカにあるレストランを、武装した7人が襲撃した。犯人たちは「アッラーフ・アクバル」と叫びながら襲撃を行なったと報じられ、犠牲者には、国際協力機構 (JICA) 関係者の日本人7人が含まれていた。2017年7月、国際開発ジャーナルの事件後1年特集号に「中東と動揺する世界」と題する記事を寄稿し、グローバル・ジハードの周辺への拡散とまだら状の秩序の出現による予測不可能性について述べている。
トランプ大統領のエルサレム認識について

2017年12月7日、トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めて大使館を移転すると発表した。これを受けて世界に与える印象と、アメリカがとる具体策とのギャップを指摘する一連の論考を新潮社の会員制情報サイトのフォーサイトに公開した[12]

エルサレムの地位に関する見解を「エルサレム「神殿の丘」の宗教と権力」『熱風』2015年3月号 スタジオジブリ出版部に寄稿[13]
西洋とイスラム

宇野重規との2016年9月の対談において、移民問題が焦点となったイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票を入り口に、SNS時代の直接民主制の機能と限界、西洋近代が培ってきた普遍があまりに強固である場合、起源も歴史的な発展経路も異なるイスラムが有する別種の「普遍」を認識し、適切に対応するのが遅れることを指摘しつつ、対西欧で独自発展した日本の言論界がこの構造を明確に自覚できていないが故に内包する危うさについて述べた[14]

国末憲人は、『ポピュリズムと欧州動乱 フランスはEU崩壊の引き金を引くのか』(2017年4月)において、ムスリム同胞団の創設者ハサン・バンナーの孫でイスラーム思想家・活動家のタリク・ラマダンとの議論を、池内との議論と合わせて深め、ムスリムの権利擁護を主張する議論が西欧の社会規範の前提となる自由を掘り崩すことになる危険性を問うた。


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