この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
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日本の刑事手続
被疑者/被告人・弁護人
国選弁護制度・被害者
司法警察職員・検察官
裁判所/裁判官
刑事訴訟法・刑事訴訟規則
捜査
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公訴・公訴時効・訴因
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保釈・公判前整理手続
公判
罪状認否・黙秘権
証拠調べ・証拠
自白法則・伝聞法則
違法収集証拠排除法則・補強法則
論告/求刑
求刑(きゅうけい)とは、刑事裁判の手続のうち、検察官が事実や適用される法律についての意見を述べる論告に際し、検察官が相当と考える刑罰の適用を裁判所に求めること。 刑事訴訟法293条1項は、証拠調べが終わった後、検察官は「事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない」としており、この意見を論告という。 求刑は、検察官による法律の適用に関する意見の一部として行われるものと理解されているが、法律上必ず行われなければならないとまでは考えられていない。もっとも、実務上は検察官は必ず求刑を行う。ただし、公判中に被告人の無実が明らかになった場合や、心神耗弱・心神喪失の疑いが生じた場合、求刑を放棄して裁判所にしかるべく判断を求めることもある(「無罪」を求刑した例もある)。「論告」という言葉に求刑も含意している場合もあるが、「論告・求刑」と並べて呼ぶことも多い。 論告の最後に「以上諸般の事情を考慮し、相当法条適用の上、被告人を懲役X年に処するを相当と思料する。」などの形式で述べられることが多い。裁判員裁判が始まったこともあり、最近は「被告を懲役X年に処するのが相当であると考えます。」のように、平易な言葉遣いで述べられることもある。マスメディアはこの部分を取り上げて、「○○被告に懲役X年を求刑」などと報道している。 検察が起訴した公訴事実に対する法の適用は裁判所の専権であるため、裁判所は、あくまで検察官の意見に過ぎない検察官の求刑には、何ら拘束されない。したがって、実際に下された判決で検察官の求刑よりも重い刑が科されたとしても当然ながら違法ではない。判例でも「裁判所は検察官の求刑に拘束されない」とある。 ただし無期懲役以下の求刑に対して求刑超えの死刑判決は1957年を最後に出ていない。 量刑相場では実刑判決の場合は求刑の7掛け、8掛けが判決の目安とされている[1]が、執行猶予判決の場合は求刑をそのまま容れた上で執行猶予を付す場合が多い。 なお、論告で執行猶予が求められることは実務上ほとんどない。 検察も、求刑に際しては過去の裁判例などから相場を検証し、さらに判決に際しては前記した7掛け、8掛けが行われることを前提に求刑を定めている。そのため、実際に求刑を超える判決が出ることは僅かである。ただし、一般市民の参加する裁判員裁判では求刑を超える判決が比較的多いとされる[2]。 主刑について求刑の5割以下の判決のされた場合には検察庁における控訴審議の対象となることから、事実上、公訴事実のとおりの認定があった場合の量刑の最下限を画する効果がある。
概要
効果
求刑超え判決の例
1996年11月 - 交通死亡事故で京都地方裁判所の懲役3年実刑判決(求刑懲役2年6か月)
2001年2月27日 - 山陽道死亡事故で大阪地方裁判所の懲役1年10か月実刑(求刑禁固1年6か月)
2005年9月9日 - JR阪和線置石事件で大阪地裁の懲役3年実刑判決(求刑懲役2年)
2007年7月27日 - ペッパーランチ事件で大阪地裁の懲役12年判決(求刑懲役10年)
2007年10月2日 - 外山恒一道路交通法違反事件で鹿児島地方裁判所の罰金12万円判決(求刑罰金1万5000円)
2010年5月19日 - さいたま市強制わいせつ致傷事件でさいたま地方裁判所の懲役8年(求刑懲役7年)
2010年7月14日 - 暴力団員による殺人事件の共犯少年の裁判員裁判でさいたま地方裁判所の懲役10年の定期刑(求刑懲役5年以上10年以下の不定期刑)
2010年9月14日 - 秦野市模型店主殺害事件の裁判員裁判で横浜地方裁判所の懲役20年(求刑懲役18年)
2011年4月28日 - 大阪府警警部補脅迫事件
2012年1月27日 - 岩手県雫石町の立てこもり事件で盛岡地裁の懲役14年(求刑懲役13年)
2012年3月21日 - 寝屋川1歳女児虐待死事件
2012年7月30日 - 大阪市平野区で発達障害者(アスペルガー症候群)が姉を殺害した事件(平野区市営住宅殺人事件)で、大阪地裁の懲役20年(求刑懲役16年)。控訴審では懲役14年に減刑。最高裁で確定
2012年8月7日 - ストーカー男性による、元同僚女性宅への放火・殺人未遂事件の裁判員裁判で、大阪地裁の懲役19年(求刑懲役18年)
2012年11月8日 - 2011年11月に兵庫県伊丹市で発生した交通死傷事故の裁判で、神戸地裁の懲役16年(求刑懲役15年)
2013年7月19日 - タレント・江頭2:50の全裸事件(公然わいせつ罪)で、東京簡易裁判所の罰金20万円の略式命令(求刑罰金10万円)
2015年6月5日 - 4歳の娘を虐待し、傷害罪に問われた母親の裁判で、福岡地方裁判所小倉支部の懲役8月・保護観察付き執行猶予2年(求刑罰金20万円)。罰金刑の求刑に対し、懲役刑が言い渡されたケース。
2016年1月25日 - 青森県平内町で兄を殺害した男(事件当時66歳)に対する裁判員裁判で、青森地方裁判所の懲役12年判決(求刑懲役11年)。同年6月2日、控訴棄却。上告せず確定
2016年3月18日 - 静岡県湖西市で放火して母親を殺害した男に対する裁判員裁判で、静岡地方裁判所浜松支部の懲役10年判決(求刑懲役9年)。検察・弁護側双方が心神耗弱を争わなかったが、判決ではこれを退け、完全責任能力を認めた。同年10月18日、控訴棄却。2017年2月15日、上告棄却、確定
2018年12月25日 - 滋賀県近江八幡市で男性を監禁し、衰弱の上殺害した事件の被告人のうち1人の裁判員裁判で、大津地方裁判所は懲役20年判決(求刑懲役18年)。2019年8月23日、控訴棄却判決。2020年6月12日、上告棄却、確定
2019年6月12日 - 千葉県柏市で銀行員の男が妻を殺害した事件で、犯行を手助けしたとして殺人幇助の罪に問われた銀行員の母親の裁判員裁判で、千葉地方裁判所は懲役7年判決(求刑懲役6年)。同年12月10日、東京高裁で求刑どおり懲役6年に減軽判決
2021年5月28日 - 兵庫県姫路市の県営住宅で男が交際相手を殺害した事件で、殺人罪に問われた男の裁判員裁判で、神戸地方裁判所姫路支部は懲役22年判決(求刑20年)。
2021年7月29日 - 出会い系サイトで知り合った女性7名を脅して、福岡県福岡市の山中で手足を縛って性的暴行を加えるなどした事件で、強盗・強制性交等、強制わいせつ致傷などの罪に問われた男の裁判員裁判で、福岡地方裁判所は懲役16年と懲役25年を合わせた懲役41年判決(求刑40年)。
2021年8月5日 - 千葉県浦安市で軽乗用車を飲酒運転し、大学生の乗るバイクに衝突した後、大学生を約1.4キロ引きずり殺害した事件の加害者の男の裁判員裁判で、千葉地方裁判所は殺人罪の成立を認めた上で懲役16年判決(求刑15年)。
有期懲役の求刑に対する無期懲役判決の例