永劫の探究
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ポータル 文学

永劫の探究
The Trail of Cthulhu
作者オーガスト・ダーレス
アメリカ合衆国
言語英語
ジャンルホラークトゥルフ神話
初出情報
初出『ウィアード・テイルズ』1944年3月号
刊本情報
出版元アーカムハウス
出版年月日1962年
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
テンプレートを表示

『永劫の探究』(えいごうのたんきゅう、原題:: The Trail of Cthulhu )は、アメリカ合衆国のホラー小説家オーガスト・ダーレスが発表した5連作の小説。クトゥルフ神話の一つ。

ダーレスが『ウィアード・テイルズ』(以下WT)誌上で1944年から1952年にかけて発表した5連作の小説シリーズであり、1962年にアーカムハウスから単行本が刊行された。下記5作で構成される。

第1部『アンドルー・フェランの手記』The Manuscript of Andrew Phelan:1944

第2部『エイベル・キーンの書置』The Deposition of Abel Keane:1945

第3部『クレイボーン・ボイドの遺書』The Testament of Claiborne Boyd:1949

第4部『ネイランド・コラムの記録』The Statement of Nayland Colum:1951

第5部『ホーヴァス・ブレインの物語』The Narrative of Horvath Blayne:1952

日本では、まず青心社のハードカバー『クトゥルー』全6巻の第2巻に収録され、続いて文庫版全13巻の第2巻(以下、クト2)に収録されている。クト2は実質的に本作のための巻である[注 1]

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(以下HPL)の影響を大きく受けている。
概要

順にWT1944年3月号、1945年7月号、1949年3月号、1951年5月号、1952年1月号に掲載された。

作中時は1938年から1947年まで。各編は、それぞれの語り手の手記であり、彼らの失踪後に公表されたものと位置づけられている。具体的な状況は5編それぞれ異なるが、概ねとしてはパターン化している。作中時では9年にわたる物語であるが、明らかとなっているのは手記に残されている部分のみ、つまり主人公が博士と関わってから身をくらますまでのごく短期であり、本格的に潜伏準備している間の出来事は描写されておらず、空白期間の割合が大きい。

人類がクトゥルフに抗戦するというオカルトアクションである。シュリュズベリイ博士のアクティブなヒーロー像は、後続作品群に大きな影響を与えた。文庫(クト2)カバーでは「クトゥルーと人類との凄惨な闘争を描いたクトゥルー神話の白眉」と紹介されている。既存作品の後日談であり、さらにHPLの存在が取り込まれており、虚実が入り混じる。

全5部作のうち、第2部のみ別の邦訳が存在し、単発で特定書籍に収録されている。
評価

ダーレス作品の傾向については、長所と短所の両方が指摘されており、本作品については長所を活かした作品であるという評価がなされている。ダーレスにはHPLのコズミックホラーは書けないが、パルプ・ホラーとしてのダーレス神話は新たな読者を魅せていく。ダーレスの手腕は、コズミック・ホラーを「クトゥルフ神話」へと変革させ、HPLが成し得なかった業績を為した。巨大な存在に翻弄される孤立した人間ではなく、アクティブに邪神との戦いに立ち向かうという新路線は、後続作家達にも影響を与えた。

東雅夫の『クトゥルー神話事典』における解説を、以下に引用する。

1:ダーレス神話の代表作というべき連作長編『永劫の探究』の第一部で、全編のイントロダクション的性格が濃い作品。バイアクヘーを駆ってクトゥルー退治に奔走するシュリュズベリイ博士は、神話大系の中でも、まったく新しい性格のキャラクターだった。[1]

2:「インスマスを覆う影」の後日譚となっており、シュリュズベリイ博士は登場しない。[2]

3:前半の展開は「クトゥルーの呼び声」を忠実に踏襲、後半の活劇調にダーレス色が感じられる。[3]

4:間奏曲的な性格の一編であるが、『ネクロノミコン』の著者本人を召喚するくだりは、ダーレスならでは。[4]

5:クトゥルーに核攻撃を仕掛けるという単純剛直な着想が、いかにもダーレスらしくて微笑ましい。ブロックの「尖塔の影」と読み較べるのも一興だろう。[5]

(独自の神性であるイタカを扱った作品群や)クトゥルー・ハンター物に先鞭をつけた本連作などのほうに見るべきものがある[6]

朱鷺田祐介は、長所と短所の両方に触れつつも、「ダーレス版クトゥルフ神話の頂点であり、現在、われわれが満喫しているクトゥルフ神話というジャンルのエキサイティングな部分はここで凝縮されているといってもよい」などと解説している。[7]

山本弘は本作に「同じパターンの話を五回続けて読むのは少しつらい・・・・・・」と微妙なコメントを出している[8]

平井呈一は高く評価しており、「英米恐怖小説ベスト・テン」で現代編の4位に挙げている[9]。平井は「オーガスト・ダーレット」「ズールーの足跡(The Trail of Cthulhu)」と訳した。
略説
主人公
ラバン・シュリュズベリイ博士
オカルティスト・
哲学教授・古代神話学術の権威で、かつてはミスカトニック大学の職員だった。住所はアーカムのカーウェン・ストリート。1915年に姿を消し、1935年に突如帰還する。黒眼鏡の下には両眼球が無い。全盲だが霊的な知覚により不便なく行動する。セラエノ大図書館の石板から知識を学び、クトゥルフに立ち向かう。
アンドルー・フェラン
1938年時点で28歳。ハーヴァード大学で言語学を修めた。文武に優れ、博士に秘書(通訳・護衛)として雇われる。2年間博士と行動した後の2部では、先輩としてエイベルを引っ張っていく。
エイベル・キーン
1940年時点で27歳。ニューハンプシャー出身、アーカム在住の神学生。特技はアマチュア催眠術。神学徒だからこそ邪悪について思うものがある。キリスト教の視点に立っており、旧神への旧支配者の謀反をへの悪魔の謀反に重ねて見ている。
クレイボーン・ボイド
クリオール文化の研究家。旧住所はミシシッピ州ナチェスであり、194X年時点ではルイジアナ州ニューオリンズ在住。死んだ大叔父アサフ・ギルマンの研究成果を引き継ぐ。夢に現れた博士に導かれ、南米ペルー奥地のクトゥルフ教団の指導者抹殺と拠点破壊を試みる。
ネイランド・コラム
怪奇作家。ロンドンソーホー在住。行動派の作家であり、探検旅行の経験もある。194X年に怪奇小説『異世界の監視者』を発表したことで、邪教団に目を付けられる。博士に同行してアラビア砂漠を訪れ、ルルイエの位置情報を得る。
ホーヴァス・ブレイン
最年少・1947年時点で20歳ほどの若き考古学者。ムー文明の実在を信じている。シンガポールで博士と4弟子に出会い、同行する。インスマスのウェイト家の末裔である。終章に至り、血が海底行きを誘うが、行けば「裏切者ホーヴァス・ウェイト」である自分に命はないことを悟る。クトゥルフに興味を持ったのも血筋のせいという、救いのないものであった。
時系列・地理

1915年:シュリュズベリイ博士が
アーカムから姿を消し、セラエノに行く。

1925年:『クトゥルフの呼び声』。ルルイエが一時的に浮上する。

1927-1928年:『インスマスを覆う影』。アメリカ軍が、インスマスの人外達を駆逐し、事実をもみ消す。

1935年:20年間消息を絶っていた博士が、突然帰還する。

1938年:第1部『アンドルー・フェランの手記』(1944年発表)。ペルーの地底湖とルルイエを爆破する。

1940年:第2部『エイベル・キーンの書置』(1945年発表)。インスマスの指導者を殺し、町を焼き払う。

194X年:第3部『クレイボーン・ボイドの遺書』(1949年発表)。ペルーの地底湖を再び破壊する。

194X年:第4部『ネイランド・コラムの記録』(1951年発表)。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:78 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef