水酸化カルシウム
[Wikipedia|▼Menu]

水酸化カルシウム

IUPAC名

水酸化カルシウム
Calcium hydroxide
別称消石灰
識別情報
CAS登録番号1305-62-0
E番号E526 (pH調整剤、固化防止剤)
特性
化学式Ca(OH)2
モル質量74.0927 g mol−1
外観無色結晶または白色粉末
密度2.211 g cm−3, 固体
融点

580 °C, 853 K, 1076 °F (分解)
への溶解度0.17 g / 100cm3(25℃)
熱化学
標準生成熱 ΔfHo-986.09 kJ mol−1
標準モルエントロピー So83.39 J mol−1K−1
標準定圧モル比熱, Cpo87.49 J mol−1K−1
危険性
安全データシート(外部リンク)ICSC 0408
引火点不燃性
関連する物質
関連物質水酸化マグネシウム
水酸化ストロンチウム
水酸化バリウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

水酸化カルシウム(すいさんかカルシウム、: Calcium hydroxide)は、化学式 Ca(OH)2 で表されるカルシウム水酸化物。消石灰(しょうせっかい)とも呼ばれる。固体カルシウムイオン水酸化物イオンからなるイオン結晶である。水溶液は石灰水、懸濁液は石灰乳と呼ばれ、共に強いアルカリ性を示す。石灰水は二酸化炭素を簡易的に検出する試薬として多用されている。小・中学校の理科の授業でも使用されている。

天然には、ポートランダイト(英語版)(ポートランド石ともいうが、同名の岩石とは異なる)として産出する。
生産

酸化カルシウムに加水すると生成する。その水和熱は大きく、乾燥剤としてよく用いられる酸化カルシウム(生石灰)に水を加えることは危険である。 CaO   + H 2 O ⟶ Ca ( OH ) 2 {\displaystyle {\ce {CaO\ + H2O -> Ca(OH)2}}}

消石灰の2016年度日本国内生産量は 1,342,058 t、消費量は 517,767 t である[1]

ほたての貝殻を焼成・粉砕した焼成カルシウム、またはそれに加水したものを「ほたてカルシウム(貝殻焼成カルシウム)」の名称で販売している商品もある。
用途

水酸化カルシウムは、強塩基であるが劇物指定を受けていないため、酸性化した河川や土壌の中和剤、凝集剤として幅広く使われる。ほかに、試薬・農業・食品や化粧品のpH調整剤、カルシウム補充剤、化学合成原料、体質顔料殺菌剤、歯科治療における感染根管処置時の貼薬剤などとしても用いられる。コンニャクの凝固剤としても使用されている。また、火力発電所の排ガス中の硫黄酸化物の除去にも用いられる。漆喰は水酸化カルシウムを主成分とする建築材料である[2]

強塩基であることから、微生物の繁殖を抑制したり不活性化したりする性質がある[2]。中世ヨーロッパでは、ペストの流行時に消石灰を家に撒く対策が行われた[2]。現代でも、高病原性鳥インフルエンザ豚熱などの防疫のため、消石灰が利用されている[2]

小中学校などでは校庭に白線を引くラインパウダーとして用いられていた。他方、強塩基であるため、目に入ると失明する危険性があることから、2007年11月に文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課長名で通達[3]が出されたこともあり、白線用としては、より安全な炭酸カルシウムに変更されている[4]
反応
水溶液の性質

水酸化カルシウムは水に少量溶解して塩基性を示し、飽和溶液の電離度が0.8程度と高いために強塩基として分類されるが、溶解度はアルカリ金属などの水酸化物よりはるかに低く、塩基としての作用はこれらより弱い。その溶解度積は以下の通りで、飽和水溶液pH=12.4である。 Ca ( OH ) 2 ( s ) ↽ − − ⇀ Ca 2 + ( aq ) + 2 OH − ( aq ) {\displaystyle {\ce {Ca(OH)2(s) <=> Ca^{2+}(aq) + 2OH^{-}(aq)}}} , K sp = 5.5 × 10 − 6 {\displaystyle K_{\mbox{sp}}=5.5\times 10^{-6}}

また、水に対する溶解熱が発熱的であるため、溶解度は温度の上昇と伴に減少する。 Ca ( OH ) 2 ( s ) ↽ − − ⇀ Ca 2 + ( aq ) + 2 OH − ( aq ) {\displaystyle {\ce {Ca(OH)2(s) <=> Ca^{2+}(aq) + 2 OH^{-}(aq)}}} , Δ H ∘ = − 16.73 kJ mol − 1 {\displaystyle {\mathit {\Delta }}H^{\circ }=-16.73{\mbox{kJ mol}}^{-1}}

水酸化カルシウムを中和したものであるカルシウム塩水溶液はごくわずかに加水分解するが、ほとんど無視し得る。その酸解離定数は以下の通りである。 Ca 2 + ( aq ) + H 2 O ( l ) ↽ − − ⇀ H + ( aq ) + CaOH + ( aq ) {\displaystyle {\ce {Ca^{2+}(aq) + H2O(l) <=> H^+(aq) + CaOH^+(aq)}}} , p K a = 12.7 {\displaystyle {\mbox{p}}K_{a}=12.7\,}

したがって、水酸化カルシウムの第二段階塩基解離定数は以下のようになる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:37 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef